47話 占いの言葉
〜〜ヘイロンside〜〜
タドはそう言うと、あっぱれだと言う顔になり、話を続けた。
「さっきも言ったけど、ヴィシュヌの情報で、王女が国に帰って来るのは国民全員が知ってる。 ただ、どこにいつどうやって来るのかは国民全員は知らないんだ。 ……まぁ、あたりまえのことだね。 そんな事を知らせれば、国は王女を求めて大パニックになる」
「じゃあ、あんたらはなんで知ってるんだ」
俺が聞くと、タドは前を向いたまま答える。
「王宮側に、私達のスパイがいる」
「スパイ?」
「ええ。 そのスパイから情報をもらったのよ。 聞き出すのにかなり苦労したらしいけどね」
「それで先回りできたのか」
「ええ」
「だが、それだけじゃわからねぇだろ。 俺達が来る事なんて」
「それは、ヴィシュヌの予言の内容でわかったのよ」
「予言の内容?」
予言の内容……いったい……
タドは、俺が聞こうとする前に自ら話し始めた。
「赤く染まる銀狼を背負い、彼女は南の森を迷う。 友を思い、友に思われ、彼女は一人刃をこぼしていく。 二匹の竜は、こぼれた刃を拾い進むだろう。 助かる道を行くのなら、刃を向ける相手を間違えてはいけない。 その刃は、彼女の物なのだから」
「……それが、予言の内容……」
「そう。 ヴィシュヌの口から出た言葉そのものの予言」
予言……いや、この言い方……予言とはまた違うような気がする……
……占い……か?
「なぁ……もしかしたらなんだが、ヴィシュヌは未来が見えるんじゃなくて、占いで言い当ててるんじゃないか?」
「いや、そうは言い切れないだろう」
俺の言葉に、シャカラが声を上げる。
「タドの言葉を聞くと占いのように感じるが、奴がスパイを警戒しているのであれば、言い方を変えて来る可能性も考えられる」
シャカラの言葉に、タドが続く。
「そうね。 そもそも予言だから占い見たいな物だけど、言い方を変えてる可能性はありえるわね」
「……」
……だとしてもおかしくねぇか……?
ヴィシュヌが作ったこの言葉。
助かる道を行くのなら、刃を向ける相手を間違えてはいけない。
この言葉……明らかに俺達に向けられている言葉だ。
それに、助かる道ってのはいったいなんなんだ?
ラルナの事か?
いや、何か違う気がする……
「この予言。 あたし達なり解釈して見たんだ」
タドは、再び口を開く。
「最初はそのままで良いだろう。
友を思い、友に思われ、一人刃をこぼしていく……これは恐らく二つの意味にわけられると思う。
一つは、感情的な問題……それはなんとなくわかるだろう?」
「……」
「……二つめは、その次の言葉……二匹の竜は、こぼれた刃を拾い進むだろう、から考えて、足跡のような物を意味するんだと思う」
「足跡……てことは、ラルナはもう王宮側に……」
「恐らくだけどね。 もしあたしがあんたらを見つけてなかったら、今頃つけていたんだろうね」
「……」
もし、そうなってたら。
俺は追っていたのか……
…………
「そして最後の言葉。 これが一番悩んだわ」
「……いったいなんなんだ?」
「 助かる道を行くのなら、刃を向ける相手を間違えてはいけない。 その刃は、彼女の物なのだから。 これには多分、意味はないんだと思う」
「つまり、ヴィシュヌの工作って事か」
「だと思うわ。 淡々と語られる未来から一変して、最後だけ語りかけて来るような言葉……そもそもここは、未来を語ってないのよ」
一理ある。
でも、本当にそれだけなのか?
それだけで片付けて良いのか?
最後の言葉。 確かに未来は語ってない。
だからこそ、何か秘密がある気がする。
…………
「言いたい事はなんとなくわかるわよ」
黙っていた俺達に、タドが言葉をかけて来る。
「あたし達も、それだけで片付けて良いとは思ってない。 でも、考えてる時間はもうないのよ」
「……ああ」
タドの言う通りだ。
今は頭の片隅に寄せておこう。
ヴィシュヌが何を考えていようが、絶対にラルナは守ってみせる。
絶対に失いたくねぇんだ……
もう二度と……
「……」
「……」
会話が一通り終わり、しばらくの沈黙が続く。
「……」
「……」
コツコツと言う足音は、暗く静かなこの空間全体に、満遍なく広がって行く。
たまに聞こえる水音は、壁に当たって跳ね返り、音源がどこなのかわからなくしていた。
「……」
そんな少ない音達に耳を傾けていると、遠くから他の雑音が聞こえてきた。
それとほぼ同時に、タドは足を止める。
気づくと、目の前には一つの扉があった。
「この扉の先が、あたし達の集会所」
「……いいのか?」
「……?」
「事の発端を起こしたのは俺だ。 そんな奴をここに入れてもいいのか?」
「……」
問いに、タドは静かに答える。
「……そう思うんだったら、あんたが責任を取りなさいよ」
「……」
「安心しな。 皆承知の上さ。 いきなり取って食われたりなんかしないよ」
「……そうか」
「でも一つ言っておく」
「……」
「少なからずあんた達を恨んでる人間はこの中にいる」
……当たり前だよな。
「ああ。 わかってる」
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