45話 誰を信じるか
〜〜ラルナside〜〜
結局ダイルさんは、渋々椅子を用意して、私の向かい側に座った。
私は、ダイルさんが座って少し経ってから、話しをかける。
「……さっき言ってた、覚悟ってどう言う事?」
私が言うと、ダイルさんは間を空けずに答える。
「すみません。 今はお話できません」
今は話せない?
いったい、どう言う事なの?
ダイルさんは、続けて口を開く。
「不安になるかもしれませんが……今は、ただ自分を信じてください」
「……」
……?
何だろう。
わからないけど……今の言葉、何かがひっかかる。
今は、ただ自分を信じてください……
ひっかかると言うより、言葉に違和感を感じる。
…………
他にも、少しだけ聞いてみよう。
「……じゃあ、私が生きてるってなんでわかったの? あんな誘拐のされ方をした上に、行方不明になってから大分時間も経ってた。 普通は死んでると思うはずよ」
私の質問にダイルさんは、また間を空けずに答える。
「結論から言いますと、ヴィシュヌと言う男から情報を貰いました」
やっぱりヴィシュヌが関わって……
「情報ってどんな?」
「信じられないかもしれませんが……昨日、ラルナ王女があの場所に訪れると言う、未来の情報です」
「未来の情報……」
「最初は嬢王陛下も信じていませんでしたが、ある事件をきっかけに、嬢王陛下は無視できないと判断したのかと……」
「ある事件?」
「ラルナ王女が戻られる少し前に、ジャダイは一度魔獣に襲撃されたのですが、ヴィシュヌはそれを以前から予知していたのです」
「魔獣……」
「恐らく、元々ジャダイの周りにいた害のない動物達です。 それがなぜか突然凶暴になり、姿形を変えて襲ってきたのです。 私達はそれを、魔獣と呼んでいます」
「……」
魔獣の事も気になるけど、それを予知してるヴィシュヌはやはり、未来が見えているのだろうか……
以前ヴィシュヌは、未来から来た人間だと自分で言ってた。
未来から過去へ来た人間が、ここ最近の未来の出来事を知ってる……
つまり、ヴィシュヌが来た未来って言うのは、そう遠くない未来なのかな……
…………
ううん。 それは違うと思う。
確かあの時ヴィシュヌは……
(僕は、ここの時代の人間じゃないんだ)
私は、捕らえられた時のヴィシュヌとの会話を思い出す。
ここの時代じゃない。 確かヴィシュヌはそう言ってた。
そうなると、その線はなくなる。
そもそも、時間を操れる力を持ってるなら、過去にきてから未来を覗く事だってできるんじゃないかな。
私が持ってる力じゃないから、分からないけど……
…………
「ら、ラルナ王女?」
しばらくの間何も話さなかったせいか、ダイルさんが私を見て口を開く。
「え? なに?」
ダイルさんに名前を呼ばれ、私は少し遅れて返事を返す。
「あ、いえ。 さっきからずっとお食事の手が進んでいないので……」
「あぁ、ごめん。ちょっと考え事をしてて……」
「考え事?」
「うん。 ヴィシュヌの事をね」
……あと、さっきの言葉の意味もだけど。
私の言葉を聞いて、ダイルさんは顔に疑問を浮かべる。
「ラルナ王女は彼とは初対面ではないのですか?」
そっか。 皆は、私とヴィシュヌの関係を知らないんだ。
「まぁ、一応知り合いだよ。 どう言う関係かは……」
ここで話すより、お母さんにも一緒に話した方が良いか……
「……食事の後、お母さんにも一緒に話す」
それを聞くと、ダイルさんの顔が急に引き締まった気がした。
「……と言うことは、覚悟ができたと言う事で良いですか?」
……この言葉の意味は分からなかったけど、話さなきゃなにも進まない。
「……うん」
お母さんから話しを聞こう。
ヴィシュヌが関係してる感じ、あまり良い話ではないと思うけど。
「……わかりました。 お食事が終わり次第、また私に声をおかけください。 嬢王陛下の王室までお伴しますので」
「わかった」
私の了解を聞くと、ダイルさんは椅子から立ち上がり……
「……それでは私はこれで」
と一礼をして、私の部屋から出ていった。
〜〜ヘイロンside〜〜
静まり返った部屋の中には、小さな呼吸音だけが響いている。
あの後。
俺達はタドに、協力するかしないかを決める為の時間を与えられていた。
「どうするのだ? ヘイロン。 奴に協力をするのか?」
シャカラは、壁にもたれかかり本を読んでいるタドを見ながらそう言う。
「……」
……あんな事を言って、俺はラルナを突き離した。
ただの言い訳だが、話しを聞く前までは、それがあいつにとって一番の安全だと思ってた。
俺は、顔を伏せながら口を開く。
「今更、どんな顔をしてあいつに会えば良いのかわからねぇ……」
「……」
「だけど俺は……」
「……」
「……」
だけど俺は……あいつを……
「私なら……」
俺が言葉に詰まると、急にシャカラが話し始めた。
「私なら、助けに来て欲しいと思うだろう……」
「……!」
俺はシャカラの言葉に驚き、顔をあげた。
シャカラは、俺の方を見ずに話しを続ける。
「私がもしラルナの立場であれば、危険でも良いから、お前と一緒に居たいと願っていただろう」
「……」
「私はラルナではないが、同じ女ではある。 感でしかないが、あいつはきっとそう思っていたはずだ……」
……ラルナ……
そうだ……今は顔を合わせられねぇなんて言ってる場合じゃねぇ。
あいつが殺されそうになってんだ。
だったらもう、決まってんだろ。
「タド……」
「どうやら決まったようだね」
俺が答えようとした瞬間に、タドは口を開いた。
俺はそれに、頷いて答える。
ご閲覧ありがとうございます!
恐らく、今日で最後の連投です。
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