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43話 二つの派閥

〜〜ラルナside〜〜


「……ラルナ王女」


誰かが、私の名前を呼びながら肩を揺する。


はっきりとしない意識の中、私は身体を伸ばしながら声をあげる。


「う……ん」


ここは……


「無礼な行為をお許しください。 もうすぐ、王宮に到着致します」


ああ……そっか。

私、今馬車の中に居たんだ。


「ごめん。 ありがとう」


「いえ……」


空から降る淡い光が、枯れた木々達を照らしている。


その景色に私は、ピースの欠けたパズルのような、物足りなさを感じた。


…………


「……一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」


そんな景色を黙って眺めている私に、ダイルさんが話しかけてきた。


「なに?」


「ヘイロンとはいったい何なのでしょうか……?」


「ッ!」


今の一言で、眠っていた私の頭が一気に覚めた気がした。


なんでヘイロンを……私はまだ、なにも話してない。

ヴィシュヌから聞いた……?

いや、それだったら聞かなくたってわかってるはず……


「なんで、知ってるの」


「その……寝ている間、何度かヘイロンと呟いていたので」


「ぅ……」


そんな事言いながら寝てたんだ……私……


「私、他に何か言ってた……?」


「いえ、それ以外には何も」


……よかった。


「ただ。 少し苦しげな声を上げていたので……」


「……」


話そうか話さまいか、迷う前に私は口を開く。


「ヘイロンは、私の友達の名前だよ」


「友達?」


「そう。 外にいた間、ずっと私と一緒にいてくれた友達」


そう言えば、ヘイロン達は今どうしているんだろう……

まだ、タドの所にいるのかな……

リュカは……流石にまだ寝てるか……


「……あの日。 王女を攫った竜の事ですか……」


少し間を開けて、ダイルさんはそう言った。


やっぱり……そう考えるよね。


「……そうだよ。 でも、悪い竜じゃない」


「……」


「どんな竜かって言われたら、説明は出来ないけど……一緒にいた間は、すごく楽しかった」


「……」


……今考えれば……それは、私だけだったのかな……


「そうですか……」


そう言うと、ダイルさんは私から視線を外し、少し下を見た。


……?

急に俯いて、どうしたんだろう。


「……」


黙ったまま俯いているダイルさんを見ていると、馬車がゆっくりと止まり始めた。


……着いたんだ。


私は椅子から立ち上がり、扉を開けようとすると、一人の兵が外側から先に扉を開けてくれた。


「あ……申し訳ありません!」


「だ、大丈夫だよ。 ありがとう」


私は苦笑いを浮かべ、扉を開けた兵にそう言う。


長い間外にいたから忘れてた。

そう言えば、こんな感じだったっけ……


そんな事を思いながら、私は馬車から降りた。


目の前には、半円を上に少し伸ばしたような大きな門が、開いた状態で姿を見せている。


そしてその奥には、王宮と大勢の兵……そして、お母さんがたっていた。


……お母さん……


「ラルナ王女……」


その場で止まっていると、後から出てきたダイルさんが、私の名前を呼んだ。


名前しか言われなかったが、私はそれだけでどうすれば良いのか、なんとなく察した。


「……」


黙ったまま頷き、私は顔を隠すように俯いたまま門へと近づく。


いったい何を言われるのか……想像もつかない。

やっぱり、怒られるのかな……


そんな事を考えながら、一歩、また一歩と、門へと近づいていく。


…………


黙ったまま歩き続け、門の中へと足を踏み入れた瞬間、私は強く抱きつかれた。


「……!」


お母さん……!?


驚きのあまり、私は抱きつかれたまま氷のように固まる。


そんな状態でお母さんは、私にしか聞こえないような小さな声で言った。


「良かった……本当に……! 帰ってきてくれて……ありがとう……!」


「……」


涙を流し、震えを必死に抑え、喉から押し出されたお母さんの声は、氷のように固まった私の身体を溶かしてくれたような気がした。


…………


私は何も言えずに、お母さんの背中へと手を回し、ギュッと抱き返した。



〜〜ヘイロンside〜〜


タドの言葉に、俺は疑問を浮かべていた。


二つの派閥……? いったい、何と何に別れて……

一つはわかる。

恐らく、ヴィシュヌ側の人間だろう。

だが、もう一つはなんだ?

王国側の人間か? いや……それじゃあ、対立する理由がない。

だとしたら……


「思いつかないかい?」


考える俺を見て、タドがそう言う。


「一つは、ヴィシュヌを信じた人間達……もう一つは、いったいなんなんだ」


「……その、逆側の人間達さ」


「逆側? ヴィシュヌを信じない人間ってことか?」


「まぁ、疑われるのは当たり前だな」


そう言って、シャカラは続けて話しだす。


「いきなり現れた人間が、未来を予言できると言って、たった一回の予言を当てる。 それだけでは、全ての人間が信じきるのは難しいだろう」


そのシャカラの答えに、タドが頷きながら話す。


「その通り。 むしろ、疑いが産まれた。 ヴィシュヌはあらかじめ準備をして、行動に移したのではないか……とね」


「でも、それだけなら問題ないんじゃねぇか?」


派閥は別れても、結局それは信じるか信じないかの話しだ。

まぁ、ヴィシュヌが何かを企んでいるのは間違いないだろうが、国にはさして問題は……


「そうだね……それだけなら問題はなかったかもしれない。 ただ、国の女王はヴィシュヌを強く推し始めたのさ」


「……」


「……今王宮側の人間達は、ヴィシュヌの命令で、ガルダ族を使った傭兵部隊を作り始めている」


「……ッ!?」


「なにッ!?」


そんな事をしたら……!

ご閲覧ありがとうございます!

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