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41話 王女のいない国

〜〜ラルナside〜〜


だから……


「やっぱり、あなたは間違ってる」


「……そうかな?」


「そうよ」


私は信じる……

たとえこれが、ただの自分の願望だとしても。


「……」


「……」


しばらく睨み合った後、ヴィシュヌが言葉を漏らす。


「……君もなかなか揺れてくれないね……」


「……」


「で、どうするんだい? 間違ってたとしても、君はもう竜族の元には帰れないんだろう?」


その言葉に、私は視線を少し下げる。


……そう……私はもう、竜族の元には帰れない。 ……帰ってはいけない。


「……国に、帰るわ」


少し間を開けて、視線を下げたまま、私はそう答える。


「僕に協力するのかい?」


協力……さっきも気になったけれど、なぜ国に帰ることとヴィシュヌに協力する事をこんなにも絡めてくるのだろう……


「……その言い方。 私が国に帰ることで、あなたに協力してしまうような言い方だけど」


私は視線を元に戻し、問う。


「さぁ? どうだろうね」


ヴィシュヌは私の質問に、表情を崩さずに答えた。


……どちらにしろ、帰らなきゃいけない。

何かを企んでいるのなら、国の為にも、竜族の為にも私が阻止する。

それがきっと、今私ができる事。


「当然だけど、協力をするつもりはないわ」


「国には帰るって事だね?」


「ええ」


ヴィシュヌは私に確認を取ると、国のある方角へ指をさした。


「このまま真っ直ぐ進んでごらん。 君の国の傭兵が迎えに来てる」


「迎え……?」


なんで迎えが……私がここに来る事がわかってたの?

……どうして……

いや、それ以前に……


「ヴィシュヌ……国に何かしたの……」


私は、ヴィシュヌを睨みながらまた問う。


「どうして?」


相変わらずヴィシュヌは、表情を崩さない。


「……国はきっと、私を死んだと思いこんでるはずよ」


そういいながら、私はヘイロンに攫われた時のことを思い出す。


「私はヘイロンに口に咥えられて攫われた。 あの時、攫われた私ですら死んだと思ったのよ。 あれから時間もたってる……それなのに国から迎え? 明らかにおかしいわ。 あんたが関わってるとしか思えない」


「……そうだね……」


そう言って、ヴィシュヌは微笑む。


「なら、自分で確かめて来るといいよ。 君の国が、今どうなっているか」


その言葉に、静かな怒りが込み上げてくるのがわかった。


「……あんたの好きには絶対にさせない」


そう言い残し、私はヴィシュヌの指さした方向へと向かい歩きだす。


「……」


いったい……国に何をしたの……



〜〜ヘイロンside〜〜



未来の人間……!


タドから聞いたその言葉に当てはまる男……俺には一人しか思いつかなかった。


「……ヴィシュヌ」


「やっぱり知ってるみたいだね」


「やっぱり?」


「まぁ、順を追って説明するよ」


タドはそう言うと、近くにあった椅子に腰をかけた。


「事の発端は、あんた達が王女を攫ったとこからよ」


「……」


「攫われた現場を目撃した人間の証言で、王女は生きている可能性があると予想が立てられたんだ。 国は、全勢力を掛けて王女の捜索に出ることになった。 とてつもなく頑丈だった王宮の警備すら薄くしてね」


そうだったのか……

あの時、浜辺で人に見つからなかったのは、結構運が良かったのかもしれねぇな……


「約一月の大捜索だったが、結局王女を見つける事は出来ずに捜索は終わった」


3日間程は浜辺にいたが、その後俺達は虬の村にいたはずだ。

見つからないのも当然だろう。


「それとほぼ同時ぐらいだね。 ヴィシュヌがやって来たのさ……王女の情報を持ってね」


「情報?」


「そう、未来の情報をね」


「……」


「疑ってるのかい?」


「いや……」


まだ確証はないが……あいつは、ガルトが言っていた通り未来の人間だろう。


ただ、何かが引っかかる……

いったいそれが、何なのかはわからねぇが……


「悪い、話を続けてくれ」


俺がそう言うと、タドは何も言わずに話を続けた。


「……私達も、最初は疑っていた。 だからあいつは信用させる為に、私達に未来を教えたんだ」


「……」


「……消えた獣は魔を宿し、3日後に帰ってくるだろう。 あいつはそう言った」


消えた獣……


「当時、国の周辺にいた獣達は確かに消えていた。 それも王女が攫われたのとほぼ同時期だったね」


そうだ……あの時俺達も、その異常を感じてそこから離れた。


あれは、俺達が離れた後も続いてたのか。


「3日後……獣達は帰って来た。 魔を、宿してね」


「……」


「獣達は明らかにおかしかった。 行動はもちろん、姿形すらもね。 人は襲われ、村や町は損害を受けはじめた。

……私達は、そんな獣達の事を魔獣と呼ぶことにした」


魔獣……


「そんな状況が続いた時、またヴィシュヌが出て来たんだ。 ……鳥の化け物達を連れてね」


「ガルダ族か……」


シャカラが呟くようにそう言った。


「そう。 ヴィシュヌは、そのガルダ族を従えて魔獣達を追い払ったんだ」


「追い払った? 殺したではなくか?」


「そうよ。 だからここで、二つの派閥が産まれたのよ」


ご閲覧ありがとうございます!



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