37話 茶髪の女性
〜〜ラルナside〜〜
視界の端で、シャカラとヘイロンが何かを話してるのが見える。
私はそれを気にする事もなく、すぐ近くに落ちている枯れ葉を手に持った。
早く……早くリュカを連れて行かなきゃ行けないのに……
枯れ葉を持った手で、自分の膝を強く掴む。
「……はぁ」
寒さからか疲労からか……膝はガクガクと震えていた。
元々、竜族の力になりに来たのに……なんで私は足手まといになっているんだろう……
そもそも、リュカがこんな事になったのも私のせいだ……私が、もっとしっかりしていれば……
…………
そこまで考えて、私は目を強く閉じてから、ゆっくりと開いた。
そんな事を考えるのは全部終わった後にすればいい。
今は、リュカを連れて早く国に帰らないと。
私は、崩れてしまった枯れ葉を捨て、立ち上がる。
「……ぅッ!」
瞬間、膝に痛みが走り、私は呻き声をあげる。
その呻き声を聞いてか、ヘイロンが小さな翼で飛びながら、こちらにやってきた。
「まだ休んどけよ」
「うん……」
私はヘイロンを肩に乗せると、そのまま地面に座った。
「あんた、一応その姿でも飛べたんだ」
「あ、そういえば……飛べたな。 俺も今知った」
「今知ったって……自分の体の事でしょう?」
「し、仕方ねぇだろ! この姿に見合わない力を使うと、ガルトの能力が解けちまうんだからよ」
ああ……そういえばそんな事、お爺さん言ってたっけ。
…………
私はまた、地面に落ちている枯れ葉を拾い、手の上に乗せた。
「なぁ……実はよ……」
ヘイロンが何かを喋ろうとした時だった。
地面に落ちた枯れ葉を踏む音が、遠くから私達の耳に届いてきた。
人……? あ、ヘイロン……!
「な……! おまっ……!」
私は急いでヘイロンを掴むと、服の中に入れる。
そして、リュカの所に行き、シャカラも同じように、掴んで服の中に入れた。
急な事で、二人共服の中で暴れているのがわかる。
「ごめん二人共……! 少し我慢してて……!」
私は小声で服の中の二人にそう言って、リュカの側で足音に耳をすませた。
……近づいてきてる……
足音は左へ右へ、バラバラに動いているが、確実にこちらへ近づいてきていた。
私はその音を頼りに、足音の人物を探す。
多分……もう目に見える距離にはいるはず……
そう思い、目を細めて私は周りを見渡す。
……!
先に見つけたのは、私ではなく相手の方だった。
急に足音が早くなり、近づいてくるのがわかった。
そのおかげで、私もすぐに足音の人物を見つけることができた。
……女の人だ……
「どいてッ!」
「わッ……!」
その茶髪の女性は、私を押しのけリュカの目の前で止まった。
私は、押しのけられた勢いで尻餅をつく。
「酷い状態だわ……あんた! ちょっと手伝いなさい!」
女性はそう言ってリュカを持ち上げる。
「て、手伝うって……」
「見りゃわかるでしょ! 運ぶのよ! 近くに私の研究室があるから!」
「う、うん!」
私は女性の勢いに押され、言われたように動く。
……つい、勢いに押されちゃってるけど……
「……あなたは……」
「あたしはタド。 医者みたいなものよ」
私が誰なのか尋ねようとすると、それを先読みしたかのようにタドは名乗った。
しばらくすると、煉瓦造りの小さな家が見えてきた。
あれが……研究室……?
「急ぐわよ!」
「え? あ、うん!」
中に入ると、奇妙な液体や白い粉が入った小瓶、そして、分厚い本がそこら中に散乱していた。
「後はあたしに任せて、あんたはここでまってて!」
タドはそう言って私の返事を聞かず、部屋の右端にあった地下へと続く階段に降りていった。
私は突然の事過ぎて、あまり状況が理解できていなかった。
服の中で、シャカラとヘイロンが動き出す。
「あ……そういえば……」
「お前……! 普通こんなとこに隠すか……!?」
ヘイロンは小声でそういいながら、服の襟から顔を出してきた。
「……ふぅ」
それに続き、シャカラも出てくる。
「仕方ないでしょ……! 私も焦ってたんだから……!」
「だからって普通服の中入れねぇよ……! 俺は男だぞ……!」
「……ッ! へ、変に意識しないでよ……!」
「なッ……! してねぇよバカ……!!」
ヘイロンはそれだけ言うと、私から顔を背けた。
さっきは焦ってたけど、冷静になって考えてみると……
私は今になって恥ずかしくなり、顔を熱くする。
…………
……ま、まぁでも良かった。
まさか、こんな所で偶然医者に会えるなんて……
でも、なんでこんな所に医者がいるんだろう。
私は、改めて部屋の中を見渡す。
……こんな事思うのは失礼かもしれないけど、部屋凄く汚いなぁ。
本当に医者なの?
医者って、私にはもっと清潔なイメージがあったんだけど……
いっそ、お礼にこの部屋を掃除してあげようか……
そんな事を考えていると、机の上にある一冊の本が、私の目に止まった。
……この本の表紙。
私はその本を手に取り、題名を見た。
「竜鳥大戦……」
ご閲覧ありがとうございます!
現在、新たな短編小説を作成中……
お披露目出来るのがいつになるかはわかりませぬ……




