36話 互いの想い
ジャダイ。 宮殿の王室。
椅子に座って窓の外を眺めるヴィシュヌ。
その隣には、同じように外を眺める女性が一人。
「やっぱりなかったよ……」
「あれがないと困る事でもあるのかしら?」
「まぁ……少しね……」
ヴィシュヌはそう言って、窓からその女性へと視線を変えた。
「そろそろ、彼女が帰ってくるはずだよ。 準備は大丈夫?」
「……ええ」
「……チャンスは一回だよ」
「わかっているわ」
〜〜ヘイロンside〜〜
「それじゃあ、私達はそろそろ行くよ」
リュカを背負い、両肩にガルトの力で収縮した俺とシャカラを乗せた状態で、ラルナはそう言った。
「大丈夫か? ラルナ」
ラルナの姿を見て、王竜のじじいは心配を言葉にする。
「大丈夫だよ」
「リュカも収縮できれば良いのだが、体力の弱っている者に弱体の力を与えてしまっては体力を余計に消耗してしまう。 すまないが……今のその状態が限界なのだ」
ガルトは申し訳なさそうに語り、ラルナに謝る。
「謝んなくて良いよ。 後は、私が頑張れば良いんだから」
………
ここからジャダイまでは、あまり遠くはない……だがそれは、俺やリュカでの話だ……
人間の足……ラルナのスピードじゃ、半日以上はかかるだろう。 その上今は、リュカも抱えている。
…………
リュカの体力も心配だが、ラルナもそれを心配して無理をするかもしれない……
「ラルナ。 先に言っとくが、無理だけは絶対にするなよ」
「……わかってるよ」
ラルナは、俺を見ずにそう答えた。
……こんな事言ったって、こいつは無理をするんだろうな……
「……儂達はそろそろ戻る。 戻ったら、アオとアノクダツは他の竜族達を集め、その護衛を頼む。 ヘイロン、そしてシャカラ……ラルナの事を頼んだぞ」
「ああ」
「……わかりました」
「うむ」
じじいは一言そう言うと、空に向かって飛び去っていった。
青じい達も、じじいの後に続いて飛んで行く。
ラルナはそれを見送ってから、ジャダイへと向かうため、森の中へと入っていった。
〜〜王竜side〜〜
空を飛び、数分が経った頃。
後ろを向いても、もうラルナ達の姿は見えなくなっていた。
「王竜様」
「む?」
後ろからアノクダツの声が聞こえ、王竜は少しスピードを押さえてアノクダツと並列に並んだ。
「なんじゃ?」
「その……あんな別れかたで良かったのでしょうか……」
「ラルナの話か……」
「はい……」
「……どうじゃろうな……だが、今回ばかりはラルナの意思に任せるしかない。 これで、もし帰って来なければ、儂達の関係はそれでお終いじゃ……」
「ラルナは、帰ってくるでしょうか?」
「わからぬ。 ……だが、ラルナの事を本当に思っているのであれば……こちらには、戻してはいけないのであろうな……」
〜〜ヘイロンside〜〜
首を回しどこを見ても、枯れ木と枯れ葉が必ず目に入る。
あれからどれほど歩いただろうか……
この枯れきった景色の中を、冬場にも関わらずラルナは大量の汗をかき、体を熱くしていた。
その熱気が、肩に乗っている俺達にも伝わってくる。
「……ラルナ、そろそろ休憩を入れろ。 このままだと体がもたねぇぞ」
「わかってる……あと、もう少し進んだら、休憩する……」
「…………」
もう既に、この会話は3回ほど繰り返されていた。
俺が休憩をしろと言っても、ラルナはあともう少しと言い、進み続ける……
言う事を聞かないラルナに、俺は苛立ちが溜まり始めていた。
「焦るのはわかるが、お前が壊れてもそれでお終いなんだぞ?! わかってるんだろうな?!」
俺が声を少し荒げて言うと、ラルナは足を止めた。
「……リュカは、もっと辛かった筈だよ……」
「……」
「……リュカは、あんなに血だらけになるまで頑張って、私を助けてくれた……」
「……」
「それなのに、私がこんなとこで休んでたら……」
「お前とリュカは、種族が違うだろ……」
「そんなの関係ない!」
「あるからこんなに苦労してるんだろ!!」
俺はさっきよりも大きく声を荒げ、ラルナに言った。
……あ……
少し強く言い過ぎたと思いながら、俺は息を整えてもう一度口を開く。
「リュカを確実に助けたいんだったら休憩をとれ」
「……わかった……」
ラルナは小さな声で言うと、近くにあった木の根元にリュカと俺達を置く。
「ちょっと……頭冷やしてくる」
そう言って、ラルナは俺達から少し離れた場所にある木の根元に座った。
……やっぱ……少し強く言い過ぎたか……
遠くにいるラルナを見て、俺はそう思った。
「私は、お前達の事がわからない……」
俺とラルナを視界に入れて、シャカラはそう言った。
「なにがだよ……」
「……お前達は互いに互いを思い合い、心配をしているのだろう。 なぜ喧嘩になる」
「……」
「仲が悪いわけでもないだろう」
「……さぁな」
「……」
「でもまぁ……仲が良けりゃあ喧嘩くらいするもんなんじゃねぇのか。 わかんねぇけどよ」
俺は、ラルナを見ながらそう答える。
「……」
互いに互いを思い合うか……
だったら、しっかりあいつに言わねぇとな……
「俺も一つ聞いても良いか?」
そう言って、俺はシャカラの方へと向いた。
「なんだ」
「お前は、なんで”女”って言葉に以上な反応をするんだ?」
「……気づいていたのか……」
「そりゃまぁ……あんな反応をされたら誰だって気づくだろ」
俺は、シャカラに睨まれた時の事を思い返す。
「普通の反応じゃなかったろ」
「……」
「なんかあったのか? 昔」
「…………お前にそれを話す義理はない」
「……そうかい。 まぁ、話したくなったら話してくれよ。 俺もそうだったけどよ、以外に楽になるぜ」
「…………」
ご閲覧ありがとうございました!
この第五章は、めちゃくちゃ長くなる予感……




