↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/64

30話 雷鳴と共に

〜〜ラルナside〜〜


「どう話せばいいかな」


そう言いながら、ヴィシュヌは近くの切り株へと腰を下ろした。


「僕は、ここの時代の人間じゃないんだ」


「?……どういうこと?」


「……簡単に言えば、僕は未来の人間なんだ」


未来の人間……


「そんなのでたらめね」


ここまで、ドラゴンや鳥の化け物……それに私の能力。

ありえないものはたくさん見てきたけど、未来から過去になんて……流石に簡単には信じられない。

そもそも証拠もないし……


「そう思うのも無理はないね。 でも、君だってそうだろう?」


「私が……?」


「君もなんらかのでたらめな力があるから、竜族にさらわれたんだろう?」


「……」


「僕もでたらめな力があったから、ガルダ族に力を貸してもらえてるんだ」


確かに……

じゃあ、ヴィシュヌは本当に未来から?

だとしたら、時間を操れるの?

いくらなんでもそんな事……


「一匹裏切っちゃったけどね……」


ヴィシュヌは、付け足すように呟いた。


もう少し、聞き出せるかもしれない……


私は、一度唾を飲み込み口を開いた。


「……じゃああんたは、何のために過去に来たの……」


「……小説でも、アニメでも……未来からきた人間が、過去に来る理由なんて言うのは、だいたい決まっているものさ」


「……」


「悲惨な未来を……変えるためだよ」


「悲惨な……未来……」


私は、”アニメ”という単語も気になったが、それ以上に”悲惨な未来”という言葉の方が気になった。


「僕達の世界……というより、君達の未来の世界って言ったほうが親近感が湧くかな?」


「そんなの、どっちでもいいわよ。 それで、その悲惨な未来っていったい……」


「竜族による、世界の支配……」


「ッ!!」


「無意味に人を殺し、国を滅ぼし……そして……僕の目の前で家族を奪った……。 未来では、君と一緒にいる竜族っていうのは、そんな残虐な一族として認知されている」


「嘘よッ! そんなの絶対! だって私は……!」


「君は見ていないからね。 なんとでも言える。 でもこれは事実だよ」


「そんなの……」


ヘイロンや……王竜のおじいさんが……


「もう僕がいた世界には、人の住める場所はなかった。 人も家も……大地すらも……見んな焼けてなくなった」


「そんなこと! 竜族はしない!」


「この時代の竜族はそうかもしれない。 でも、僕の時代の竜族は違う。 力をつけすぎた彼らは、他との共存ではなく、他との決別を選んだんだ。 支配する為にね」


「……」


「だから僕はやってきたんだ。 竜族が力をつける前のこの時代に……竜族を全滅させるために」


「……」


「これは、僕の未来のためだ。 君達からしたら悪でしかない。 でも僕は止まるつもりはない」


こんなこと……絶対に嘘だ……

絶対に……


「……ラジット」


「はい」


「嫌なものを思い出した……少し1人になりたい。 すまないが、彼女を見張っていてくれないか?」


「……わかりました」


「前も言ったけど、絶対に彼女を殺してはいけないよ?」


「わかってます」


「ラルナ……君には大人の判断をとってもらいたい……いっときの感情に身をまかせるんじゃなく、未来の為に今をどう生きるか……よく考えて欲しい」


そう言うと、ヴィシュヌそのままどこかに行ってしまった。


……とりあえず、ここから早く逃げよう。

そしてこの事をみんなに……!


…………


……伝えて良いのかな……こんな事……

本当かもわからないこんな事。


でももし……もし、本当だったら……私は……

いったいどうしたら……


「おいお前」


「……!」


不意に呼びかけられ、私は声を上げずに驚いた。


「な、なによ……」


「妙な真似はするなよ……少しでもおかしな行動があれば、四肢を裂いて動けなくする」


「しないわよ……そんなこと……」


パキッ……


「「……!」」


静かな森のなか、響いて来たのは小枝の折れた音だった。


「貴様、なにかたくらんでいるのか!」


そう言って、ラジットは足元に爪を立ててきた。


「今しないっていったでしょ! 私じゃないわよ!」


「そうだよ……ラルナじゃ……ないよ」


ッ!?


「リュカ!」


「あの犬か……」


「ハァ……ハァ……」


リュカは荒い息遣いのまま、近くの木の後ろから出てきた。


「リュカッ……!」


私は、リュカの姿を見て息を飲んだ。


リュカの白銀だったはずの毛は、おびただしいほどの血に濡れていた。


「その血の量。 傷が開いたな」


「大丈夫……だよ……ラルナ……今、助ける……から」


リュカはそういいながら、痛みに震えた体を無理やり動かし歩く。


「なぜ、その傷で立ち上がり、ここまでやってきたのか……俺に勝てるとでも思ったのか?」


ラジットはゆっくりと、体の向きを私からリュカへと変えた。


「ちょっとまって! リュカには手を出さないでよ!!」


「あの犬もまた、貴様と同じ竜族の協力者なのだろう? 殺すなという命令もないのなら、殺すのが当然だ」


「まって!!」


「大丈夫……ラル…ナ」


「バカな犬め……追いかけて来なければ傷も開かなかった。今ここで死ぬこともなかった」


「ハァ……ハァ…」


「手を出さないと、教えてやったにもかかわらず……」


「ダメッ! リュカ逃げてッ!」


「ハァ……ハァ……」


しかし、リュカは動こうとはせずに、ラジットがあげた爪を睨み続けている。


「今楽にしてやる」


「リュカァッ!」


ラジットは、その鋭い爪をリュカに向けておろした。


「ダメだよ……ラジット。 ストップだ」


「……!」


振り下ろされた爪は、リュカに届く前に止まった。


「ヴィシュヌ!」


声のする方へと顔を向けると、ヴィシュヌが戻ってきていた。


「なんだか、騒がしいなと思ってね」


敵だけど……良いタイミングに来てくれた……

良かった……


「ラジット、その子も彼女と同じだよ。 まだやってもらわなきゃいけない事がある。 殺すのはそれからだ」


私と同じ……?

やってもらわなきゃいけない事……?


「わかりました」


「それから、彼女の紐を解いてあげるんだ」


「はい」


え、どうして……

……ううん、それよりいまは……


ラジットは、私の体を拘束している紐に爪をかけると、簡単に切り裂いた。


「リュカ!」


とりあえず、すぐにでも治療しなきゃリュカが!


私は急いでリュカに近づき、楽な体制を取らせた。


「リュカ! リュカ!」


「ラル…ナ……」


リュカの体に触れた瞬間、目に涙が浮かんできた。


「リュカ……なんで……なんで来ちゃったのよ……」


涙を隠すようにして、私はリュカに抱きついた。


「迷うのは……嫌だった……から……」


迷ったっていいよ……


私はそう言おうとしたが、次の言葉を聞いて言葉を飲み込んだ。


「前を見て進むって……きめた……から」


「!!」


そうだ……


「だから……ハァ……僕は……僕の出来る事を……やった……」


そうだ……私も……決めたじゃない……もう下を見ないって……前を見て進もうって……それを私は、もう忘れて……


「ごめんね……リュカ……」


「馬鹿な犬め……」


「いや、そうでもないよ。 ラジット」


ヴィシュヌは空を見上げてそう言った。


ごめんリュカ……もう、忘れない。

たとえ、信じられない事実を突きつけられようが……悲惨な未来を伝えられようが……

私は……

前に進む……!


立ち上がり、私は目に溜まった涙を袖で拭いた。


「ヴィシュヌ! 私は決めた!」


肩や髪に、冷たい雫がポツポツと落ちてくる。


「私はもう……未来の事は考えない」


「……」


雫は次第に強くなっていき、やがて雨となる……


「私は今を守る為にも貴方を……」


あたりが一瞬光る。


光に遅れ雷鳴が鳴ると同時に、大きな地鳴りが複数やってくる。


「「ぶっ倒す!」」


私は、雷鳴と共に降りてきたヘイロンと声を重ねて、叫んだ。


「……」


「良くやったリュカ! あとは、俺達に任せろ!」

ご閲覧ありがとうございました。


おそらく、もう少しでこの章も終わりになると思います。

終わったら、また別の連載の「異界人」をやるかもしれません。


まだ、わかんないですけど……


とりあえず、この章はちゃんと終わらせようと思っております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。