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24話 熊兎

森の奥深くにある、滝の下にて……

一人と一匹の会話。


「報告ありがとう。そうか……やっぱり、そっちの味方になるんだね」


「ガルトマーン……いや、ガルトのやつ……」


「仕方ないよ……僕は正義じゃない。反対されるのもわかる……」


「しかし……」


「……正直言うとね、君も僕の元を離れるんじゃないかなって思ってたんだ」


「俺は……いえ、私はヴィシュヌ様を信じています」


「別に喋り方まで変えなくても良いんだよ。ラジット」


「……」


「……また、脅威が増えたね……」


「…………私が、その脅威の芽を紡いできましょう」



ーーーーーー


〜〜ヘイロンside〜〜


パクシャとの戦いが終わってから、二週間以上が経過した。

相変わらず、痛々しい姿のままの村だが、皆は前に進もうと笑顔を取り戻し始めている。


「ラルナ、そろそろ行くぞ」


「わかってるよーちょっとまってー」


俺とリュカは、ラルナの身支度を待っていた。


あれから、俺達は王竜のじじいに使いを送り、戦の事、村の状況……そして、あの助けてくれた鳥の化け物についてを知らせた。


返事は二日後にやってきた。

襲撃は他の村も受けていた事……そして、俺達と同じく、あの鳥の化け物に救われた事を伝えられた。


ちなみに、そいつはあれ以来姿を見せていない。


色々話したい事もあると言われ、俺達は村の竜達を引き連れ王竜のじじいの巣に向かう事にした。


「おまたせ。二人共」


そして今日、俺達はこの村を出る。


「お前、支度って何してたんだ?」


「寝癖直してた」


「別に誰も気にしねぇだろ」


「それどーゆう意味ぃ!てか、私が気にするし」


「あそ、じゃ行くぞ」


「ちょ、ちょっと!」


俺はラルナを無視して、外にでた。


外では、村の竜が翼を動かしたりして準備運動をしている。


まぁ、飛ばねぇ奴は飛ばねぇからな……

結構な距離あるが……大丈夫か?


……いや、なんで俺、こいつらの心配なんかしてんだよ。


「……はぁ」


「どうかしたの? ヘイロン」


溜息をついた俺に、リュカはそう言った。


「いや、なんかもう疲れた」


「まだ少しも飛んでないじゃない」


「疲れたもんは疲れたんだよ」


「どんな理屈よ……」


「いいから乗れよ」


俺はそう言って、ラルナとリュカに背を向けた。


「もうすぐ出るの?」


「お前待ちだったんだよ、バカ」


「わ、悪かったわね!」


「ちょっと!押さないでよラルナ!」


「早く登りなさいよ!もう!」


二人が乗ったのを確認してから、俺は親父の元まで歩いて向かった。


「ヘイロン、支度はできたか」


「俺っつうか、こいつだけどな」


「殴るよ」


「うるせぇ落とすぞ」


「二人共会話が物騒だよ……」


「ま、まぁ……準備は出来たのだな。でわ、早速向かうとしよう」


親父は、村の竜達の方へ体を向け、表情を変えた。


「これから、王竜様の元へと向かう。途中休憩は何度か挟むが、それでもキツイものは私に言ってくれ」


そんなゆっくりしてらんないんだけどな……


敵は今だって動いてる。

そんな中俺達が動けば見つかる可能性は高くなる……その上、飛び慣れていない奴らが多いせいで時間もかかっちまう。


戦いになれば、それこそ庇いながらなんて戦えるわけがない。


見つかれば今度こそ……


目を閉じると、あの時の村の映像が流れてきた……


……何弱気な事言ってんだよ……俺は……


止めだ!止めだ!こんな事考えるのは止めだ!

敵が来たらぶっ潰す!

そんでもって守る!

……それで良いんだ。


俺は、一人首を振って、そう心に決めた。


「では、出発だ」


親父のその声と共に、竜達はバラバラに空に飛び出した。


「一斉に飛ぶとなんか怖いね……」


「怖いつか、キモイな」


「あんたもその一族だからね」


「俺は美しいから」


「「は?」」


「い、いくぞ!」


俺は、二人の冷たい表情から逃げるように空に飛んだ。


ボケるんじゃなかった……

まさか、こんなに冷たい対応されるとは……


ヤバッ……少し泣ける……


ーーーーーー


一度目の休憩が終わり、二度目の休憩に入った頃。


村の竜達は、各々の形で休憩をとりはじめていた。


親父は、なにやらインヨのバァさんと話しているみたいだ。

俺はというと、リュカとラルナと適当な会話を交わしていた。


「ヘイロンの体、ゴツゴツしてて痛いんだよねぇ」


「それわかる!僕も思う!」


「でしょ!?」


「じゃあ走って追いかけてこいよ」


「無理に決まってるでしょうが!」


「僕はそれでもいいけどね」


「だいたい、お前達を俺は乗せてやってる側なんだ、礼の一つくらいよこせっての」


「……」


「……」


「それよりさ……」


「無視かよ!」


「あとどれくらいで着くのかな?結構来たよね?」


それも無視かよ……まぁいいや。


「もう直ぐだろう。まぁ、そこまで見つからないのを願うしかねぇな」


「今の僕達じゃ、勝てないからね……あ……」


「……」


「……ご、ごめん」


そのリュカの一言で、一気にその場が暗くなるのがわかった。

リュカとラルナの顔からは、不安の色が濃くでている……


…………


「……今なら勝てるさ」


俺は、なんの根拠も無しにそう言った。

いや、そう言わなきゃダメだと思った。


「なんで?」


「俺だから」


「理由になってないよ、それ」


リュカは少し笑いながらそう言った。


「とにかく大丈夫なんだよ」


「……そうだね!」


俺の言葉に、二人は笑顔を作って答えた。


お前達に不安な顔は似合わねぇし……させたくねぇ。

そうやって笑ってりゃいいんだよ……

バカみたいにな。


俺は二人の笑顔をみてから、フッと笑った。


「なんか喉乾いてきたなぁ私」


不意にラルナがそう言って、話題を変えてきた。


「そういや、村出てからなんも飲んでねぇからな……」


「僕はお腹も空いたかなぁ……」


「あんたは四六時中空きっぱなしでしょ」


「うん」


「否定しないのね……」


「まぁ、リュカの腹はともかくだ」


「え!?」


「俺も少し喉が乾いてたところだ……よしっ!近くに水場がないか探してみるか!」


「賛成!」


「……お腹」


俺は、ラルナとリュカを連れて親父に了解を貰ってから群れを離れた。


できれば早めに帰ってきてほしいと言われ、俺達は早速、水場を探しに出かけることにした……歩いて。


「なんでこうなるんだよ……」


「仕方ないでしょ。空を飛ぶとあいつらに見つかっちゃうかも知れないんだから」


「いや、そうじゃなくてだな……地面を歩くのは……まぁ、いい……歩くのはいいんだが……なんでお前らはあるかねぇ」


「だって僕達とヘイロンじゃ歩幅が違いすぎるから、普通に歩いてても置いてかれちゃうんだもん」


「じゃあ俺がゆっくり歩けばいいんだろ?」


「ううん」


「ダメ」


二人は、俺の上でそう言って、首を横に振った。


なにが、ううん、ダメ……だよ。

俺だって歩くのはそんなに好きじゃねぇんだぞこの野郎……


「つかお前ら。さっき俺の背中、ゴツゴツして痛いだとか言ってなかったか?」


「……」


「……」


「……あ、川だ」


ラルナはそう言って前を指差した。


「また無視かよ!?」


「やったぁー!川だー!」


「わーい!」


二人は、俺の体から飛び降りると、直ぐ川に駆けつけていった。


「お、おい!あぶねぇだろ!」


ラルナとリュカは、俺の言葉を聞かずに、はしゃぎながら川を目指して走っている。


たく……あいつらは……

……まぁ、なんだかんだで子供だしな。

仕方ねぇか。


俺は、仕方ないと、一つため息を出してからラルナ達を追いかけた。


その時。


「きゃああああ!」


突如として、ラルナの叫び声が辺りに広がった。


「どうしたッ!?」


俺は反射的に声を出し、ラルナ達の元へ全速力で向かった。


まさか、あいつらじゃねぇだろうな!?


「大丈夫か!ラルナ!リュカっ……て……ああ」


俺は、目の前のそれを見て、動揺していた心が一気に落ち着くのがわかった。


「な、なに!このデカイ兎!」


「熊兎な……」


「く、くまうさぎ?」


ラルナは、目の前にいる巨大な熊兎に腰を抜かしている。


「知らないの?ラルナ」


リュカは腰を抜かしたラルナの隣に座ってそう言った。


「し、知らないわよ!こんなの!」


「仕方ねぇな。俺が説明してやろう!」


俺はそう言ってから、目を瞑りわざと自慢気に見せた。


「熊兎。その名の通り熊と兎を足したような動物だ。よく、冬熊って言ってる奴もいるな。

兎とはついてるが結構凶暴で、この時期になると、冬眠に入った動物達を狙って動きが活発になるんだ。

あ、ちなみにこいつらの雄は、女だったらなんでもかんでもコレクションにする癖が……」


「ヘイロン」


「ん?」


「ラルナ、つれてかれちゃったよ?」


「キヤァア!だぁーずぅーげぇでええぇぇー……」


目を開けると、ラルナは熊兎にくわえられ連れてかれていた。


「あ……」


「ラルナ、モテモテだね!」


「言ってる場合か!追いかけるぞ!」

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