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23話 天の川

〜〜ラルナside〜〜


「ヘイロン……まだ起きないね」


「うん……」


パクシャとの戦いから二日がたった。


あれからヘイロンとアノクダツさんは、寝たきり……

今は、インヨのおバァさんを中心に、残った村の竜達が看病をしてくれている。


あんなに嫌われていたヘイロンにも、村の竜達は心配し、自ら看病をしたいと言う竜もで始めた。


でも、おバァさんは……


「その気持ちは、ヘイロンが起きてから伝えるんだよ。今は任せておきなさい」


そう言って、追い払っていた。


「私達も行こう。ここに居ると邪魔になっちゃう」


「わかった……」


私は、リュカを連れてその場を離れた。


あの白銀の鳥の化け物も、あれから姿を見せてない。


あの石に書かれてた文字……


争いは、止めてみす。


多分だけど、あの鳥の化け物は……

ガルトマーン。


ヴィシュヌは、鳥の王っていってた。

王竜のおじいさんも、竜ならざる竜って……昔襲われたとも……


そんな奴がなんで私達を……


「ねぇ、ラルナ」


いつもの元気をなくしたリュカが、私に声をかけてきた。


「なに?」


「あの鳥さん……どこ行っちゃったんだろうね……」


リュカも気にしてたんだ……


「わからない……」


「僕達の……味方なのかな……」


「それもわからないけど、そうであって欲しいよね……」


「うん……そうだよね……」


真っ赤な夕日は、私達に残酷な現実を見せつけるように、崩れた村を照らしている。


私達……何か出来たのかな……

確かにパクシャは倒せたかもしれない……

でも……


守れたのかな……私達、ううん……私は……


「ん……雨の匂い」


リュカがそう言った数秒後、雨は降り出してきた。


「晴れてるのに……雨、降ってきたね」


「こういうのは、にわか雨って言うんだよ。リュカ」


「にわか雨?」


「急に降ってきて、急に止む雨の事だよ」


「へぇ……不思議な雨だね!」


リュカはそう言うと、私に笑顔を見せてきた。


その笑顔は、どこか不自然で、無理矢理作っているように見えた。


もしかして、リュカ……私に気を使ってるの?

……リュカだって、辛いはずなのに……


「ありがとう。リュカ」


私も笑顔を作ってリュカに返した。


「……うん!」


一瞬リュカは戸惑いを見せたけど、すぐに笑顔を作り直してそう言った。


いつまでも暗いままじゃダメだよね……

みんな辛いけど、何かしようと頑張ってるんだ……私だって……頑張らなきゃ…!


頑張って……力を使えるようにしなきゃ…!


にわか雨は降り続け、やがて地面に水溜りを作る……

そして雨は止み、水溜りは美しい夕空を映し出す……


いつまでも、下を見続けていられない。

上を見て、しっかりと前に進むんだ。

友のためにも。



〜〜ヘイロンside〜〜


ハッキリとしない意識の中、誰かの声が聞こえてきた。


「アノクダツよ……そなたはまだ休んでおれ……その傷は浅くはない」


バァさんの声……無事だったのか……

親父も……


「私の体などどうでもいい……」


「何を言うか、そなたが死んだらヘイロンが悲しむであろう」


「いいや……そんな事はない……私はわかっている。あいつがどれほど私を恨んでいるかを……」


…………


「あいつには、生きていれば誰でも手に入れられた物をあげられなかった……妻を……いや、母を失ったのはあいつも同じだった……それなのに私はヘイロンにあたり、罪を全てなすりつけ、村から追い出した……」


「確かに、そなたが悪い部分もある……だが、もう悔いておるのだろう?」


「いくら悔いていても、ヘイロンの心の傷は無くならない……」


……


「……いっその事……死んでしまった方が良かったのかも知れん……」


「それは違うぞ。アノクダツよ」


「……!」


「本当に悔いているのなら、長く生き、ヘイロンに償うのだ」


「長く生き……」


……


「そうじゃ。わかったらそなたは休んでおれ」


「フッ……私がこの程度の傷で死ぬものか。ロンカの実を取ってこよう。薬として必要だろう」


その声の後、親父が巣の外へと歩いていくのが、音でわかった。


「……落ち着いていられない所はそっくりじゃの……なぁ……ヘイロン」


急に名前を言われ、俺は少し跳ねた。


……気づいてんのか?


「もうわかっておる……起きてるのじゃろ?」


「やっぱ気づいてんのかよ……」


「途中で寝息が遅くなったからのう」


「なんだよその見極め方……」


俺は、体を一度起こしてから、もう一度その場に伏せた。


「……体の調子はどうじゃ?」


「バァさんのおかげで大分良くなったよ」


「それは良かった……まぁ、五日も寝れば元気にもなるか」


「い、五日!?」


「そうじゃ」


「そ、そうか……迷惑かけたな……」


五日も寝てたのかよ……俺……


トタトタと言う、小さな足音が聞こえてくる……


「ん。帰ってきたみたいじゃな」


バァさんがそう言った後すぐに、その足音の主は姿を見せた。


「おバァさんただいま」


「ただいま!」


「あ……」


な、なんか久しぶりに見る気がするな……

五日も寝てたからか?


「よ、よぉ!元気してた……」


「「ヘイロォン!!」」


二人はそう叫びながら、俺に抱きついてきた。


「かぁ!? ちょッ…! お前ら」


「ずっと心配してたんだよ!」


「アノクダツさんでさえ三日で目を覚ましたのに!ヘイロン五日も寝っぱなしだったんだよ!?」


「三日も五日もそんなかわらねぇじゃねぇかよ……」


「うるさい…!」


「……ぅ……」


「ずっと……心配してたんだよ……」


「わ、悪かったよ……心配かけちまって……」


「本当だよ……もぅ……」


んな心配しなくてもよぉ……

……ありがとな………………親父も……


しばらく二人は、俺にくっついたまま離れようとしなかった。


俺は、親父が帰ってくる前に、リュカとラルナを乗せ、外に出て空を飛んだ。


もう夜だったのかよ。


煌めく星々は、太陽に成り代わり夜を照らし、空に川を作っていた。


「落ち着いたか?二人とも」


「僕はもう全然!」


「お、おう……そうか」


それはそれでなんか……


「……」


んで、こいつはまだ怒ってんのか……


「悪い……そんな怒んなよ……ラルナ」


「え?あ、なに?」


「な、なんでもねぇよ!」


こいつ、聞いてなかっただけかよ!

俺、謝り損じゃねぇか!


「ねぇ、ヘイロン」


「あ?なんだよ」


「私、早く力を使えるようになりたい」


「……天候の力の事か」


「私、思ったんだ。こんなんじゃ足手まといになるだけだって。だから……」


足手まとい……


そういや俺、親父にそんな感じの事言ってたな……

実際、俺はなにもできてなかったのにな…


「お前は、今のままでも足手まといになんかならねぇよ。今回だって、お前のお陰で俺は助けられた」


「僕は?」


「もちろんリュカもだ」


「えへへ……」


「本当に強くなんねぇといけねぇのは、俺さ……」


俺は、自分の力をおごり、調子に乗った。

本当は、調子に乗れる程、強くなかった。

本当は、調子に乗れる程、戦い方を知っていなかった。


でも、落ち込んではいられねぇ……


だから、俺は強くならなきゃいけねぇ……


「私も、強くなりたい」


「……」


「守られてばっかりは嫌なのよ。元々私は、協力しに来た身なんだから」


協力……


「……そうだな」


天に煌めく星々の川は、どこまでも続いている。

それは、不安になる程遠く、遠く長い川……


下《あきらめ》るのは簡単かもしれない。

でも、俺達は必ず進む。

どんな絶望が前だって、進むべき道があるなら、俺達は上っていく。


竜のために……友のために……


ご閲覧ありがとうございました。

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