20話 味方でいて欲しかった
~~ヘイロンside~~
目が覚め外に出ると、雲のない青空が見えた。
朝靄は日の光に照らされ、この村の景色をいつもと少し違うものに変えていた。
「今日は晴れて暖かくなりそうだな」
俺は親父の巣のすぐ外でそう呟いた。
親父の巣は、他の巣より少し高い所に作られているため、村を一望する事が出来た。
「早いね」
「昨日寝付くの早かったしね」
後ろから、ラルナとリュカの掠れた声が聞こえてきた。
「まぁ、ずっと飛びっぱなしで疲れてたからな。すぐ寝れた」
気持ち良くは寝られなかったがな…
甲高い鳥の鳴き声が聞こえてくる。
「やっぱ綺麗だよね」
「何がだ?」
「この景色」
「僕もそう思う」
二人はそう言って、目の前の景色に目をやっている。
…………俺にはそう見えないんだがな…
「で、ヘイロンはなんで外に出てるの?」
リュカが景色から視線を外し、そう聞いてきた。
「ん?ああ、知り合いのバァさんがこの時間によくいるからよ。いたら挨拶しとこうと思っててな」
俺はそう言って、その知り合いの巣を見た。
「ねぇ、その知り合いのおバァさんって…」
ラルナがそう言いかけた時だった。
そのバァさんは巣から出てきた。
バァさんの緑の鱗は、灰色の岩山がバックになっているため、すぐに目に入った。
「多分、お前の想像してるのであってる。行くぞ」
俺はそう言って、二人を背に乗せて、バァさんの元に飛んだ。
飛んでいる途中、バァさんもこっちの存在に気付き、目を見開いていたのが見えた。
「よぉ!バァさん!」
俺は地面に降りるのと同時にそう言った。
「そなた…!もしやヘイロンか!?」
「あんまり会ってないんで忘れたか?バァさん」
「そんな訳なかろうて…匂いは変わらん」
「久しぶりだな」
「本当に大きくなったのう…」
バァさんはそう言って、目尻に涙を寄せた。
「おいおい、泣くなんて止めてくれよ」
「歳をとって涙腺がゆるくなってしまってのう…生きているのは聞いておったが、またそなたに会えるとは思ってなんだ」
そう言って、バァさんは目をつぶって目尻に溜めた涙をこぼした。
「ヘイロン…この竜が?」
「ああ、この村にいた時、俺の世話を見てくれたインヨのバァさんだ」
「うむ?お主達が例のナーガか?」
インヨのバァさんはそう言って、リュカとラルナを見た。
「ああ、この赤い髪の奴がナーガ・ラルナ。こっちの奴は、人狼のリュカ・オーンだ。訳あって今一緒に行動してる」
「よろしく!」
「よ、よろしく…です…」
リュカの挨拶の後に、ラルナが使い慣れていない敬語を使って挨拶をした。
「使い慣れてないんだったら使うなよ」
「うるさいわね!こっちは一生懸命なの!」
「ホホホ!そなたらは仲が良いのう」
「よ、良くねぇよ!」
俺はバァさんにそう叫んだ。
「ホホホ!ラルナちゃん。敬語は不要じゃよ。気軽に話しかけとくれ。もちろんリュカちゃんも」
「うん!」
「ありがとう!おバァさん!」
「うむ!」
インヨのバァさんはそう言って、笑顔を見せた。
久しぶりに見たけど、元気そうで良かったぜ。バァさん。
俺はインヨのバァさんの笑顔を見てそう思った。
「ねぇヘイロン!ちょっと遊んできてもいい?」
「遊んでくるって…遊ぶもんねぇぞ?ここには」
ここにあるのは竜の巣、水飲み場、後はロンカの木ぐらいしかないぞ…
……いったい何で遊ぶつもりなのか…
「あまり見かけるような場所じゃないからねぇ。竜の村なんて。リュカちゃんにとってみたら珍しいのかもねぇ」
「なるほどな」
「ねぇ!行っていい!?」
そう言って、リュカは目をうるうるさせて見てくる。
「まぁ、あんまり離れねぇんだったらいいぞ。俺の目の届く範囲な」
「はーい!行こ!ラルナ!」
「え!?私も!?ちょっとまっ」
ラルナはリュカを拒む前に、無理やり背中に乗せられ連れて行かれてしまった。
「元気だねぇ」
「ありすぎだな。あれは」
俺は走り去っていくリュカを見ながら、その場に伏せた。
腹に冷めた地面が当たってヒンヤリとする。
「……アノクダツとは話したのか?」
リュカとラルナを見ながらボーッとしていると、バァさんがそう問うてきた。
「ああ…少しな」
「まだ恨んでおるか?」
「…………」
「アノクダツは、後悔しておるようじゃぞ…」
「聞いてるよ。じじいからな」
「だからって許せってか……後悔してるなら一生後悔してろよ…それで許してやる」
俺は、冷たくそう言い捨てた。
「……そなたがそれで良いのなら何も言わん。ただ、そなたこそ、もうこれ以上後悔はするでないぞ」
「これ以上って……別に俺は後悔はしてねぇよ」
「…………」
「苦しい思いをさせられただけでな」
バァさんが悪い訳じゃない…むしろ守ってくれていた側だったが、俺は恨みの大きさが、どれだけの物なのかを知らせるように、バァさんにそう言った。
「……あくまで私の希望じゃが…アノクダツとは仲良くやってほしいと思っておる」
「…………」
「どうするかは、ヘイロン。そなたの自由じゃがな」
バァさんはそう言って、俺と同じように地面に伏せた。
正直、バァさんにこんな事言われるとは思っていなかった。
……バァさんなら、あんな奴許さなくて言い…と、言ってくれると思っていた。
ショックだな…ちょっと……
まぁ、選ぶのは俺の自由だ。
その後、俺達はインヨのバァさんに飯を食わせてもらってから、周りの見張りの為に一日中空を飛び続けた。
その日は何もなかったが、明日は何か来るかもしれない。
そんな不安を持ちながら俺は、眠りについた。
……そう言えば、今日は思っていた程には暖かくならなかったな…
ご閲覧ありがとうございました。
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