18話 アノクダツとヘイロン
~~ラルナside~~
ヘイロンが自分の過去の事を話してくれてから、かなり時間が経った。
しかし、まだまだ目的地が見えてくる気配はない。
……ヘイロン…あんな事があったのに…虯の村に行って大丈夫なのかな…
私がそんな事を考えていると、ヘイロンが急に降下し始めた。
「どうしたの?」
「少し休憩だ。流石に疲れた」
ヘイロンはそう言ってさらに高度を下げていく。
やっぱ飛ぶのも疲れるんだ………
ドスン…
私はヘイロンが着地したのとほぼ同時くらいに地面に降りた。
流石に乗るのも降りるのも慣れてきた。
着地した周りには木や草が生えており、隣には川が流れている。
「ラルナ危ないよ…しっかり着地してから降りないと……」
「もう慣れたから大丈夫だよ」
私はそう言ってリュカの頭に手を置いた。
「お前ら見てると本当の兄弟みたいだな」
「兄弟か~……いいね!」
リュカがそう言った。
何が良いのか……でも確かに…私もそう思うときがある。弟ってこんな感じなのかなぁ?
私は笑顔ではしゃいでるリュカの顔を見た。
でも反抗期とかきたらどうしようか……人狼のリュカに噛まれでもしたら……想像もしたくない…
「腹減ってきたなぁ……」
「僕もぉ!」
「そういえば私もかな」
「俺がなんか狩ってくるから、お前らはそこらで木を集めてくれ」
ヘイロンは、そう言ってジャンプして空に飛んだ。
「ちょっとまって!あんまりでかいの持ってこないでよ!」
大きめな声で言ったけど聞こえただろうか……
まぁ、近くに海とかはないから大丈夫だろうと思いたい。
「ラルナ!木集めてきたよ!」
リュカはそう言って口に何本かの小枝をくわえて持ってきた。
仕事が早いなぁリュカ……
「ありがとうリュカ、後もう少し集めてくれる?」
「わかった!」
リュカはそう言って、また小枝を集めに行った。
なんかリュカばっかり働かせちゃってるなぁ……私も仕事しないと…
私はそう思い、周りに落ちている小枝や草をむしって集めた。
こうやって、一緒に行動してたのかな…
ヘイロンとクリシュナって子は…
……………
…人と人が殺しあうように、竜と竜も殺しあったりするんだね…
感情を持つ限り、そう言うのはなくならない…
私も、昔攫われた理由…わかってないけど、多分何か不満があったりしたからなんだろう…
……そりゃあるよね…私がその人の立場で私を見たらイラつくもん…
そんな事を考えながら作業をして一時間くらい経っただろうか?
もうそろそろ戻ってきても良いんじゃないかな?
私がそう思った頃にヘイロンが戻ってきた。
「喜べ!今回は牛だぜ!」
「やったー!」
ヘイロンは、地面に血だらけの牛を落とした。
「もう流石に慣れたかな…」
私はその牛を見てそう呟いた。
ヘイロンは牛を木や草の山の上に置いて、爪と爪を擦りあげ火を起こした。
皮とか剥いでないけど……まぁ良いか……
「ふぅ……後は待つだけだな」
ヘイロンはそう言ってすぐ近くの川の水を飲んだ。
「あ!僕も!」
それに続いてリュカも川の水を飲みに行った。
ささやかに流れる水の音が心地よく聞こえてくる。
こう言うのって…せせらぎ?って言うんだよね。
本やなんかで見たりするけど、実際に聞くとこんな感じなんだね。
……でて来られなかったら聞く事が出来なかった音…
なんだか…あそこに居るより落ち着く…
眠くなってきちゃったなぁ…
「どうしたよ?ぼーっとしちまってさ」
いつの間にか横にいたヘイロンが話しかけてきた。
「別に、少し眠くなっただけ」
「嘘つくなよ」
「なんで嘘ってわかるのよ?と言うか嘘じゃないし」
「そうかよ」
なによそれ…
「きつくなったらいえよ…」
ヘイロンは私に小声でそう言った。
「え?」
私が何か言い返そうとした時、ヘイロンは既にその場を離れていた。
別にきつくないんだけど……むしろ、今のこの生活は楽しいくらいだよ……
その後、私達は牛を食べ、また虯の村を目指して飛び立った。
あと、どれくらいで村に着くのだろうか。
途中休憩も入れたけど、もう大分飛んでる。
そろそろ地面に足をつけたい。
「後どのくらいでつくの?」
リュカが私の気持ちを代弁してくれた。
「後もう少しでつく」
後もう少しかー…ヘイロン……大丈夫かな…
進むに連れて皆の口数が減ってく……リュカもヘイロンもやっぱり緊張しているのだろう。
もちろん私も緊張している。
いつの間にか森や木が見えなくなり、鋭く尖った灰色岩山ばかりの風景になっていた。
「そろそろだ……」
そう呟くとヘイロンはだんだんと高度をさげていった。
「ん?あれは…竜?」
目の前には灰色の竜が二人たっていた。
ヘイロンは、その竜の少し前あたりで着地して私達をおろした。
「あれは門番だ」
「門番?でも門なんてないよ?」
リュカの言う通り、二人の竜の後ろには岩壁しかなく門なんて見当たらなかった。
「そのうちわかる……」
ヘイロンはそう言って二人の竜に近づいていった。
「守護竜ヘイロン。王竜の命により虯の村を守護しに参った」
ヘイロンはいつもとは違う喋り方でそう言った。
「虯王様には話を通したのか?」
「急ぎの命であるがため、話はまだ通していない」
「それでは通せぬ!」
正直、こんな感じになってしまうのではないかと思っていたけど……ヘイロン…どうするんだろう…?
私はヘイロンの方を見た。
「ナーガの一族を見つけた…それでもだめか?」
わ、私?あ…そっか、私を連れてくる事は皆知ってるのか………それならきっと…
「ならば、そのものだけを通す!貴様はだめだ!」
「え!ちょ、ちょっとなんでよ!別にヘイロンが入ったっていいじゃん!」
「ラルナ!」
ヘイロンが私の名前を呼んで制止させようとしてきた。
だけど、私は止まろうとは思はなかった。
「貴方がナーガの一族か?」
「そうよ!」
「一緒に来てもらいます」
「ヘイロンが一緒ならいく!あとリュカも!」
「それはなりませ…」
「いい。通せ」
一人の門番が喋っている途中、岩壁の後ろから声が聞こえてきた。
「虯王様!」
門番の二人が壁に向かって急に頭を下げた。
「よく来たな……ヘイロン……」
その声と共に、藍鼠色の鱗をした竜が後ろの岩壁から出てきた。
岩から出てきた!?もしかして……蜃気楼?
でも、虯は蜃気楼を出せないはず……
それにあの竜…ヘイロンに……もしかして…あれが?
色々な疑問が頭に浮かんでくるなかヘイロンが口を開いた。
「……親父」
「ヘイロンが話してた」
「ああ…そうだ」
リュカが全てを喋る前にヘイロンがそう言った。
この竜が…ヘイロンの父…アノクダツさん。
普通に直接会ってしまっているけど大丈夫なのだろうか……?
「……こっちだ」
そう言ってアノクダツさんはまた岩壁の中へと入って行った。
「…行くぞ」
「……うん」
そう言って私達はアノクダツさんに続いて岩壁の中に入った。
岩壁の中は短い洞窟になっており、少し向こうに出口が見える。
「…すごい」
リュカが隣でそう呟いた。
その声は洞窟の中で反響し、長く響く。
ヘイロンの父はどんどん進んで行く。
私達もそれに置いてかれないようについて行く。
短い洞窟が終わり、その先の光景を見て私は驚いた。
そこには、二十から三十ぐらいの竜達がおり、周りは岩山に囲まれていた。
その岩山の壁には、穴が幾つか空いている。
おそらく竜の家だろう。
洞窟からでて真っ直ぐの所には、他の穴より大きな穴が空いていた。
多分あれがアノクダツさんの家だろう。
「中央の一番でかい巣に来てくれ……そこで話を聞く」
そう言ってアノクダツさんは、大きな巣へと飛んで行った。
「俺達も行くぞ」
「うん」
「わかった」
私とリュカはヘイロンの頭に素早く乗った。
「行くぞ」
ヘイロンはそう言って飛んだ。
……ヘイロン……さっきから必要以上の事を喋ろうとしてない…
あんな事があったから仕方ないか…
ドスン…
ヘイロンの着地音と共に振動が伝わってくる。
私はその振動を耐えた後、ヘイロンの頭から降りた。
アノクダツさんの巣の中はビックリするほど何もなく、どことなく寂しさが感じられた。
「入って良いぞ…」
ヘイロンの父がそう言った。
私達はその言葉を聞いた後、ゆっくりと巣の中に入った。
「そこらに座ると良い…」
「あ、ありがとうございます…」
私はそう言ってその場に座った。
「…………」
しかし、ヘイロンはいつまでたっても座る気配がない……
やっぱり警戒してるのかな?
「…ラルナ…」
リュカが今にも消えてしまいそうな切ない声で、私の名を呼びながら顔を脇腹に擦り付けてきた。
「大丈夫だよ」
私はそう言ってリュカの頭を撫でた。
「まだ名乗っていなかったな…私の名はアノクダツだ。よろしく頼む」
「私はナーガ・ラルナ…この人狼はリュカ」
私は自分とリュカの紹介をした。
ヘイロンの紹介は……いらないよね。
「…要件を聞こう…」
「じじいにここの村の護衛を任された」
「そうか…敵はわかったのか」
「ああ…恐らくだが」
ヘイロンはアノクダツにラジットの事と、ガルトマーンの事…そして、王竜と話した今後の行動についてを話した。
「……わかった。よろしく頼む」
「…………」
誰も何も話さない……
普通の沈黙ならまだ耐えられるけど……今回のは格別に重い……
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
ここから離れたい……
けど、動きづらい…
ここで動いたら…なんか失礼な気がする…
「……外の空気を吸ってくる」
ヘイロンが沈黙を破り、外にでる。
これに乗じて…
私はヘイロンと共に外に出ようとした時。
「……ヘイロンからは…昔の事は聞いたか?」
アノクダツさんは私が動くのを止めるようにそう言った。
これ…私に言ってるんだよね…
「…うん」
私は動かそうとしていた足を止めて、そう答えた。
リュカは私の脇腹から離れて外にでて行ってしまった。
「…そうか…聞いたか」
アノクダツさんはそう言って少し俯いた。
気まずい…
これでまた抜けにくくなっちゃったよ…
「少し……話しをしても良いか?」
「え?…良いですけど……」
一体何を話すんだろう……
私は痺れかけていた足を組み直して、アノクダツさんを見た。
ご閲覧ありがとうございました。




