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15話 竜を超える生き物

~~ラルナside~~



「これすっごい美味しい!」


「そうであろう? 遠慮せず沢山食べると良いぞ」


あれから私達は、少し早めの夕ご飯……ロンカの実と言うものを食べていた。


「まぁ、飯にしては少し肉が足りんがな……」


「しかたなかろう? ここは空じゃ。水はあっても魚も動物もおらんのだから……まぁたまに鳥が迷い込んでくるがの」


鳥……あッ!!


私は口の中に残っている実を急いで飲み込んだ。


「ん!……ゴホッ……ゴホッ!」


実が変な所に入り、私はむせてしまう。


「どうしたのじゃ急に」


「ちゃんと噛んで食えよきたねぇな」


「う、うるさいわね! 仕方ないでしょ!」


私はそう言って自分の胸をさすった。


忘れていた……もともと、この事を伝えにきていたんだった。


私はゆっくりと深呼吸をしてから口を開いた。


「実は、お爺さんとヘイロンに伝えなきゃいけない事があって……」


「ラジット達の事だろ?それなら俺が……」


「違うの……まぁそれに繋がる事なんだけど……」


「……?」


ヘイロンは疑問を顔に浮かべ、私の話に耳を傾ける。


「お爺さんは、ラジットとヴィシュヌの事は聞いたんでしょ?」


「うむ」


「そのヴィシュヌなんだけど……私、多分あった事あるかもしれないの」


「なに!!」


ヘイロンはそう言って、口に含んでいた実を唾とともに飛ばしてきた。


「ちょっと! あんたの方が汚いじゃないの!!」


「うわぁ! 僕にもかかってきたぁ!」


「ワハハハ!ラルナの事を言えんのうヘイロン」


「う、うるせぇ! しかたねぇだろ!」


さっき私に言ったくせに……まぁ、いいや。それよりヴィシュヌの事だ。


「この事は後でヘイロンに土下座して謝ってもらうとして……」


「絶手ェしねぇよ!」


私はヘイロンのその言葉を無視して話を続けた。


「私、あの浜辺に居た時、自分の事をヴィシュヌって言ってた人とあったんだ」


「ヴィシュヌって人だったんだ……あんな化け物が従うんだから、それ以上の化け物だと思ってたよ」


「俺もだ…」


「うん、だからもしかしたら別人かもと思ったけど……あのとき、私がヴィシュヌとあったとき、彼は一緒に白い鳥をつれてた……鳥の王……たしか、ガルトマーンって言ってた……」


「ガルトマーンじゃと!?」


王竜は目を見開き驚く。


そんなに驚くなんて思っていなかった私は、その声に驚き体を一瞬ビクッと震わせた。


「す、すまぬ、驚かせてしまったな……」


「ガルトマーンてのを知ってんのか? じじい」


「ああ……知っているとも。 ヘイロン、儂がまさかと思ったがと言ったのを覚えておるか?」


「……ああ」


「そのまさかと思っていた奴の事じゃ……奴は、竜ならざる竜……鳥の王とも言われている、最強の生物……!」


竜ならざる竜……最強の生物……本当にそうなのだろうか?

私はなんどかガルトマーンを目にしているけど、そんな風には見えなかった。 威厳や風格なんかで言ったらヘイロン達の方が全然上だ。

リュカといい勝負位ではないだろうか?


「実は、最初からこの事件の犯人はこいつではないかと思っておったが……本当にそうじゃったとわ……」


「ちょ、ちょっと待てよじじい。 ちゃんと説明してくれねぇとわかんねぇよ」


「儂が竜の王となる前の話じゃ……突然、螭と蟠、さらに虯の村のものが一夜にして大量に消えた事件があった」


「消えた? 死んだじゃなくてか?」


「うむ……最終的には皆、死んでいる事が分かったのじゃがな……」


そう言った王竜のお爺さんの顔は悲しげだった。


「最終的にはってどういう事だよ」


「……事件数日後。 蛟の村の近くの洞窟に、所々に肉がついた竜の白骨屍体が大量に積まれているのを発見した……食っておったんじゃよ、あやつは竜を」


「竜を……食う?」


竜を食う……同じ位の強さでただ殺しあうのならまだわからなくもない。

けど、竜を食うって……それ程に力の差があるというのだろうか……竜と、あの白い鳥は……


「あ! そうだ」


私はポケットから、さっき拾った平べったい石を取り出した。


「ん? なんだそれは」


「石」


「いやそりゃわかるけど」


「その……実は、さっき私が起きたとき隣に居たんだよね……ガルトマーンが……」


「な!!?」


場の空気が一瞬で凍りついた。


グルルゥゥ……グルルゥゥ……


リュカのいびきが聞こえる……

寝てたんだ……道理で静かだと……


「気のせいじゃねぇのか?」


「いや本当に見たんだって!」


「まぁ、これだけ時間が経った後じゃ……戻ってこないということは大丈夫であろう。 それよりさっきの石は?」


私は二人の声の調子から、多分信じてないなと思った。


まぁでも、危険な感じしなかったからいいか……


「……これなんだけど」


「どれどれ」


私は腕を伸ばして、王竜お爺さんにその石を向けて見せた。

王竜のお爺さんはそれだけでは見えないため、顔を石の前までかがめる。


「ふむ……これは、竜の文字じゃな」


「竜の文字? 竜も人間と同じ文字を使うんじゃないの?」


「いいや。 竜は人間と同じ言語は使うが、文字はつかわんぞ?」


そうなんだ……でも、なんで言語が同じなのに文字は違うんだろう……


「んで、なんて書いてあんだ?」


「ちょっとまて……」


お爺さんはそう言ってもう一度、まじまじと石を見た。


「うーむ……字が汚いのう……読みづらくてしょうがない」


「目が悪くなってるだけじゃねぇのか?」


「違うわい!」


「なら早く読めよ」


「わかっておる」


ヘイロンがちょっかい出すから読めないんじゃ……というか、腕が痛いから早くしてほしい。 もう耐えられなくてプルプル震えてるんですけど……


「……争い、止めてみす……か?」


「争いを止めてみせるってことだよな? 多分……どういうことだ?」


「うむ……もしガルトマーンが落とした物であるのなら、奴自身には争う気は無いということじゃろうな」


争う気はない……確かに、争う気があるのなら、さっき襲うはず……それか、ラジット達を連れて襲いに来るはず……ここの居場所を伝えているのなら、もうとっくに襲われているだろうし……


「わからんねぇな……」


「そもそも、儂はガルトマーンに一族があることすら知らんかった……」


ガルトマーンの一族……一匹でも村を3個破壊するような奴が一族単位でいるなんて……

でも、おかしくないだろうか?


「まぁでも、奴は止めてみせると言っているんだ……大丈夫だろ」


「……と言うか、おかしくない?」


「なにがじゃ?」


「だって、ガルトマーンが多分その一族の長でしょ?で、ガルトマーンは止めようとしてるんでしょ? だったらおかしいよ」


「……そういや、そうだな」


「うむ……ガルトマーンが長とは決まっておるわけではないが、あの強さじゃ……恐らく長と考えていいだろう。 そうなると……」


「反乱か?」


王竜のお爺さんが口を開く前にヘイロンが言った。


「反乱……それもあるかもしれんが……」


「一族の長が変わったの?」


「今度はお主か……儂に言わせてくれても良かろうに……」


王竜はそう言って少し残念そうにしていた。


「ご、ごめん」


「なに言ってんだじじい、子供じゃあるめぇし」


「たまにはカッコつけても良かろう?」


「じじいじゃ、カッコつけてもカッコつかねぇよ」


竜のカッコいいとかって何処が基準なんだろうか……


私はその会話を聞いてそう思った。


「ま、まぁそれはいいとして……竜の村を一匹で壊した奴より強い奴なんているの? いたとしたら……」


「マズイのう……」


「弱みを握られているとかは考えられないのか?」


「うむ……どうじゃろうかのう。 何れにせよ、ヴィシュヌと言う男が大きく関わっておるのじゃろう」


弱みを握られているのだとしたら、ここまで自由には動けないんじゃないだろうか?

だとしたら、考えられるのは長の交代、もしくは反乱……ヴィシュヌの話から、断定はできないけど長の交代が一番ありえそうだけど……


「そういやじじい。 さっき、昔ガルトマーンに襲われた話ししたよな?」


「うむ」


「その後ってどうしたんだ? 今生きてるって事は、殺してはいないんだろう?」


確かに……放っておけば竜族は今頃絶滅の危機だったろう。 でも、あれほどの者をどうにかできたのだろうか?


「うむ……殺しておらんし、追い払ってもいない」


「え? ならどうしたの?」


「三つの村の竜の死骸の山を見つけた後、警備を強化して各村に龍のレベル竜を一人ずつ配置したんじゃ」


「昔は龍がそんなにいたのか?!」


ヘイロンは驚いてそう言った。


「儂が幼い頃は龍の村もあった……今じゃ数が減り儂と後もう二人……いや、一人しか居ないがな」


龍の竜族ってそんなに少なかったんだ……


「……まぁ、それはいい。警備を強化したんじゃ、奴に備えてな。しかし、奴はそれきり来なくなったんじゃ……」


「龍に恐れてか?」


「わからん……じゃがそんな感じはしなかったな」


「…………」


……グルルゥゥ……グルルゥゥ


再び、リュカのイビキが聞こえてくる。


私は周りを見渡した。

辺りはすっかり夜に染まり、視界が悪くなっている。


話しに集中してたから気づかなかったけど、もうこんなに暗くなっていたんだ。


「大分暗くなってきたな」


「そうじゃな、今日は寝るとしよう」


「私も賛成……なんか疲れちゃった」


「じゃあ決まりじゃな」


王竜のお爺さんがそう言うと、ヘイロンとお爺さんはその場で丸くなり始めた。


うーん……このまま寝ると痛いからなぁ。またヘイロンの腕かしてもらおう。


私はヘイロンの腕に背を持たれた。


「ん? なんだお前か」


「ちょっとかしてもらうから」


「かまわねぇけど……踏み潰されてもしらねぇぞ?」


「ちょっと、怖い事言わないでよね。眠れなくなるじゃん……」


「フッ……冗談だよ」


それを最後にヘイロンは目を閉じた。


空にはまん丸の白い月が輝いている。

私はその月をしばらく眺めた後に、眠りについた。

ご閲覧ありがとうございました。

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