9話 不安と安堵
~~ヘイロンside~~
「……静かだな」
俺は、海を見ながら呟いた。
海の波音と共に、小さな寝息が聞こえてくる。
二人ともぐっすりと寝てるな……
全く、のんきな奴らだ……
しかし、本当に良かった。
俺は、目を瞑りさっきの出来事を思い返した。
まさか、この時期に熊が出るなんてな……
もし俺が、リュカの言ったことを守っていたら、間に合ってなかったかも知れねぇ……
そう考えたら、本当に冷や汗もんの事件だったなさっきのは……
これからは出来るだけ近くに居てやらねぇと……
……………
これから……本当どうなっちまうんだろうな……
急に竜の村が襲われて、俺はこいつをさらって……こいつはさらわれて……
リュカにあって……
なんか……俺達って巻き込んでばっかだな……
これがもし、簡単に解決したらいい迷惑だよな。
そっちの方が良いのかもしんねぇけど。
「ん……うーん……」
後ろで、声を出しながら伸びをするラルナの声が聞こえてきた。
「起きたか?」
「うん……だいぶ寝てた気がする」
「まぁ、もう暗くなるしな」
海と空は、太陽によって夕焼け色に染まっている。
あともう少しすれば星も見えてくるだろう。
「なんかごめん。 迷惑かけちゃって」
そう言いながら、ラルナが俺の隣までやってきた。
こいつもそんな事思ってたのか……
「……お互い様だ」
「お互い様?」
「ああ……俺達だって、お前を利用しようとしてるんだ……お互い様だろ?」
「……そっか……」
…………
利用……か。
嫌だな……この言葉。
本当はただ、頼ってるだけだってのに……
「私は別に、迷惑だって思ってないけどね」
「……そうか」
……強がってるんだろうな……
こんな生活をしてるよりも、家で普通に暮らしてた方がよっぽど良いだろう。
今日だって、あんな目にあったんだ。
「ヘイロン?」
「ん? なんだ」
「なんか……暗くない?」
「そうか?」
「うん……なんからしくない」
「らしくないもなにも、まだそんなに一緒にいないだろ」
「まぁ……そうだけど……」
「別に暗かねぇよ。ただ、少し考えごとしてただけだ」
「ふーん……」
暗いか……
確かに少し落ち込み気味かもな……
落ち込み……いや、自分の一族に不満があるって言った方が正しいかもな……
蛟の村の奴らの気持ちがわかった気がするぜ……
「あれ? 二人共起きてたの?」
後ろから、リュカの声が聞こえてきた。
「やっと起きたのかリュカ」
「うん……もうこんな暗くなっちゃってたんだね」
俺は、リュカのその言葉を聞いてから、周りが夕焼け色から夜色に変わっていることに気づいた。
こんな暗くなってたのか。
「今日はごめん……本当はもっと遊びたかったんだけど……」
リュカはそう言って、俺とラルナの間に入ってきた。
なんだかんだで、今日一緒に入れたのは午前中の少しと飯食った時ぐらいだしな……
「…………ねぇ」
「なんだ?」
「やっぱり僕も、ついてっちゃダメかな?」
リュカは少し間を空けてからそう言った。
なんとなく、そんな事言われるんじゃないかって思っていた。
ただ、良いのだろうか。
リュカを連れてけば、今は喜ぶかも知れない……
けど、それは今だけだ……
もし、本格てきな戦いが始まったら……俺は責任を取れない。
そもそも、リュカはまだ俺達の現状を知らないだろう。
…………こいつになら良いか……
「まだ、俺達二人の関係の事話してなかったな」
「二人の関係? 友達じゃないの?」
「まぁ、聞け」
「う、うん」
「俺達は後の戦のために二人でいるんだ。まだ起こるかはわからねぇがな」
「後の戦?」
「ああ。 俺達の一族の村が潰されてな……まだ、敵も何もかもわかっていないんだが、竜族に喧嘩売って来たんだ……相当な力があるんだろう」
「…………」
「そうなれば戦は必然的におこる」
「…………」
「死ぬかもしれないんだ」
俺は、自分でそう言っといて、今それに初めて気づいた。
死ぬかもしれない……
俺も。
……ラルナも……
頭の中に、ラルナをさらった時の光景が流れてくる……
「それでも良いのか」
「…………」
リュカは少しの間考えていたが、答えを出すのに、そう時間はかけなかった。
「ヘイロン達の迷惑にならないんだったら……僕も行きたい! 手伝いたい!」
「……命の保証はできないぞ?」
「それでも良いよ」
リュカは真っ直ぐ俺の目を見てそう言った。
本当は……ラルナにだってこういう風に説得してからじゃなきゃいけなかったんだよな……
そう思うと、俺は本当に無責任な事しちまったな……
「わかった。 一緒に行こう」
「ほ、本当に?」
「ああ……」
「一緒に、いれるの?」
「ああ、一緒だ」
俺がそう言うと、リュカは静かに顔を下げて、肩を震わせ出した。
「…………ぅ…ぅ」
「お、おい……どうしたリュカ」
「う……うぁああああぁ!!」
俺が心配して顔を覗こうとした時、リュカは急に大声をあげて泣き出した。
「おいおい……なんで泣いてんだよ」
「うわぁあああん!!!」
「ヘイロン……」
俺がリュカの涙に困惑していると、ラルナが俺に手招きをしてきた。
俺とラルナはその場から少し離れ、遠目からリュカを眺めた。
「リュカね……寂しかったんだって」
「…………」
「ずっと一人で、話し相手もいなくて……そんな中私達が来て、1日過ごして楽しかったって言ってた」
「…………」
「……ここに巣を作ったりしてたでしょ? だから多分、しばらくは一緒にいられると思ってたんだと思う。 でも直ぐに戻るっていったらさ……」
「……天国から地獄に叩き返そうとしてたって事か……俺達は」
「……そう言う事だと思う。リュカ……それを私に出会ったその日に話してくれてね。 離れてほしくないって事を伝えたかったんだと思うよ」
「……泣くほど不安で寂しかったんだな」
リュカの泣き声が、こちらにまで聞こえてくる……
「泣くほど安堵してるんだと思うよ……今はね……」
安堵か……こっちは守る命が一つ増えたんだ。 勘弁して欲しいぜ……
俺達は、リュカが泣き疲れて寝るのを見届けてから、眠りについた。
次の日、リュカはいつも通りの元気な姿を俺達に見せてくれた。




