5-10
………………太陽が黄色い。
昨日は、一日中ヤリっぱなしだったから当然か。
マルグリットが離してくれなかったからとは言え、さすがにヤリ過ぎた気がしないでも無い。
集落が一通り落ち着いたので、マルグリットの様子を見にトーラスの街に到着したのがおとついの夕方。一月ちょっとぶりのマルグリットとの再会は熱烈なモノだった。
戸口を開けた時には萎れた花みたいだったマルグリットが、俺の顔を見た途端に満開の笑顔になったくらいだからな。
前の再会の時のように泣き出しはしなかったものの、そのまま抱きついて離れなくなったマルグリットを抱き上げて家の中に入ると、中で夕食の準備をしていたフェリシアには呆れられてしまった。
その晩は、まぁ一月ぶりの逢瀬を楽しんだのだがそれでは治まらなかったのか、昨日もフェリシアを引っ張り込んで一日中楽しむ事になった。
おとついは気を利かせて別の部屋で寝たフェリシアが、朝になっても起きてこない俺達を見に部屋の中に入ったところをマルグリットが裸のまま抱きしめてベッドに引きずり込み、あれやこれやしてその気にさせた手管は中々のモノだった。
ただ、マルグリットとフェリシアの関係が少し歪になってきていたのが気にはなったかな。
もともとは現実を忘れるかの様にのめり込んでいたマルグリットだが、この一月ちょっとで楽しむ事を覚えのか、フェリシアを焦らしたり、して欲しい事を口に出させたりとサドっ気のある雰囲気でフェリシアを責めていた。
フェリシアの方も、マゾって程ではないがマルグリットの無理強いするかのような行為を受け入れる事に喜びを感じている節があり、需要と供給は今のところ吊り合っている。
俺が無理やりにくっつけたようなものなので歪な関係になるのも当然と言えば当然ではあるが、マルグリットが本格的に覚醒してもフェリシアにはそこまでの適正がないような気もするので、受け止めきれずに破綻しても困るなぁ。俺にも被虐趣味は無いし。
――――自己嫌悪からくる破滅願望が無いとは言わないけど、な。
だが、それは他人に罰して欲しいモノじゃあない。自分を含めた何もかもをぶち壊したくなる俺の業の深さが受け入れがたいだけだ。
まぁ嗜虐趣味なら持ち合わせているので、マルグリットにはソチラの楽しみ方も教えてやれば良いだろう。
周囲の人間に蔑視される苦しみから、フェリシアを貶める事で心の安定を取り戻そうとしているのが今のマルグリットだ。
なら、他人に受け入れてもらえない自分を再認識させる事で自分を受け入れ、更に自分を受け入れてくれない他人をも受け入れられるようにしてやれば、他人の規定する自分に苦しめられる事も無くなるはずだ。
ソレをやると俺に対する依存が悪化する気もするが、それも今更だしなぁ。
クール系美少女のマルグリットに好かれている事自体は俺としても悪い気はしていないので、できるだけ今の関係が壊れないように動くとしよう。
我ながら酷い話だが、最初にマルグリットを抱いた時に俺の都合を優先させると言ってあるんだ、俺から離れられ無いようになったとしても本望だろ。
マルグリットの事はそれで良いとして、今後の事だが……。
次の一区切りは、三ヵ月後の芋の収穫だろうなぁ。
汗水たらして世話した芋がたわわに実っているのを見れば、ゴブリン達も農業の意味を実感できるだろう。
勿論、それは芋の生育が上手く行った時の話だ。
収穫量が苦労に見合わないとゴブリン達が感じたら、農業に対する関心が消滅してもおかしくはない。
それでも一度や二度の失敗なら反乱が起こる事は無いと思うので、森の土壌にあった作物を模索しつつやるしかないのだが。
しかし、芋は森の外でも育てられているので気候的には問題が無い筈だし、元農家が管理指導しているんだから失敗する可能性は限りなく少ないと思う。
最悪、森の土壌では外の植物が育たないなんて事だったとしても、それなら森の薬草を育てて人間の街に売りに来れば良いだけだしな。
そして半年後には、『自在工房』で人工授精したゴブリンの赤ん坊が生まれる予定だ。
その赤ん坊が大人になるには約一年。
今から二年後から三年後には、集落もきちんとした形になるだろう。
マコラを通じて集落の様子を把握できるようになったし、他のゴブリンの集落を吸収して集落を急成長させなくても、俺が森の外で遊び歩ける程度には余裕ができた。
もっともあまり集落を空けると、イルメラがどう動くか分からないんだけどな。
それでも半月程度なら問題は無いと思う。
不思議な木の実を食ったお陰で『門』の移動距離も格段に長くなったので、半月もあれば大陸の端から端まで移動できるだろうが、ドコにナニが潜んでるかも分からないから出歩くのはとりあえず近場だけにしておこう。
適当に移動した結果、バケモノの縄張りに迷い込んで、死ぬよりも酷い状態にされても困るからなぁ。
うん、慢心するのはまだ早い。魔力は最高クラスに手がかかったのかもしれないが、技術的にはまだまだ前任者達の足元にも届いていないんだからよ。
そして、この世界には超越者とでも言うべきヤツラだってゴロゴロといる。
生命の頸木から逃れた“アンデット”、異世界からの来訪者“デーモン”、ほとんど伝説にしか出てこないような存在である“ドラゴン”。
勿論そんな大層なヤツラばかりだけではなく、人種族の中でも特化した技術を持つヤツに不利な状況下でなら負ける事もあるだろう。
まだまだまだまだ力が足りない。
何も全ての存在に勝つ必要は無いんだ。
ただ、負けず、見下されず、好きなように振る舞えるだけの力を、早く手に入れたいなぁ。




