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Deviant ー妖魔転生ー  作者: 是色
第四章 暗躍
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4-14


 買いたかった物は買えたし、やっておきたい事も一通り終わった。

 反省すべき点は多いし、いくつかの失敗には後悔もある。

 しかし、色々なモノが足りないながらも何とか乗り切れたので良しとしよう。

 後は森に帰って集落を再建できれば一段落が着く。


「それなら、私も集落に行きます!」


 そう思って森の集落に行く準備をしていると、マルグリットが付いて来ると言い出した。


「それは困る」


 マルグリットを森の集落に連れて行ってもあまり意味が無い。精々が暇な時にいちゃつけるくらいだろう。

 そんな事よりも問題は、人間に対して失望しかけているマルグリットを人間社会から遠ざけると、二度と人間社会に戻ろうとしなくなる可能性もあるって事だ。


 それは、マズイ。

 せっかくのトーラスの街での拠点が無くなってしまう。


「なぜです?もしかして、集落には女の人が!?」


「何でもかんでもそっちに持っていくなよ。

 ……新しい集落を建設中なんでな。そんな所で、オマエとイチャイチャもしとれんだろう?」


 まぁ、集落はトーラスの街に来る前に粗方完成させてきたがな。

 俺が集落を出てから一月近く時間がたったので、すでにゴブリン達の生活環境は整えられているだろう。

 ほとんど手がついていない俺と奴隷達の住居も、外側は作ってきたから寝るだけなら問題はない。

 しかしこう言っておけば、マルグリットも強くは出れない筈だ。基本的には、感情よりも理性の方が強いからなぁ、マルグリットは。

 だから、自分の欲望よりも俺の都合を優先してしまう。俺の仕事の邪魔をして困らせるよりは自分が我慢をする方が良いってな。


「それは……」


 ふむ?これだけじゃあ少し弱かったかな?なら、もう一押し。


「それになぁ。ゴブリン達は厳しく躾けてるんだが、オマエを連れて行って弱みを見せるのもまずいんだよ」


 実際、俺がマルグリットと仲良くやっているのを見て、集落のゴブリン達が人間相手に気を使っている俺を長失格だと判断する可能性は否定しきれない。

 それ以前に、ゴブリン達がマルグリットに対してどんな反応をするか分からないのも問題なんだよな。

 エサや、子を産ませる為のメスだと判断されると、ゴブリンとマルグリットの関係は二度と修復できないレベルで破綻するだろう。


「……レドにとって、私は足手まといですか?」


 そう、きたか。

 やはり、不安なんだろうなぁ。

 俺と再会した時には、大泣きしたくらいだ。フェリシアともああ言う(・・・・)関係にさせたから一人にされるって不安はないと思うが、それでも俺と離れるのは怖いようだ。

 しかし、森に連れて行く訳にも行かない。

 どうにか納得させねぇとなぁ。


 ここで、足手まといなんかじゃないと言うのは簡単だが、実際、今の段階で森に来られても足手まといでしかないんだ。

 マルグリットは頭の良い馬鹿だが、勘が鈍い訳じゃあ無い。

 一見、俺の行動や言動を信頼している様に見えても、本当の所は俺の言葉の裏に気がついている可能性もある。

 それでも俺の言葉を疑いきれないのは、マルグリットが善人だからだろう。それもあまり不信感を増大させれば、いつかは確信に変わるかもしれない。

 って事で、嘘をつかずにできるだけ俺の本心をマルグリットの都合の良い様に読み取らせる必要がある訳だ。


「んー……。そりゃまた難しい質問だな」


「そう、ですか?」


 そもそも、魔法使い自体が使える人材だからな。

 単一の事象に関しては固有魔法ほどには融通が利かないものの、呪文を唱えるだけで数多くの超常現象を引き起こせるので、状況への柔軟性はとても高い。何が起こるか分からないような未開の土地に連れて行っても、役に立つ場面は多いだろう。

 しかしその半面、マルグリットはまだ十台後半のガキだ。

 この国の成人は十五歳らしいが、だからと言ってマルグリットの事を大人と言うのは少し早い気がする。

 詳しい事は聞いてないが、両親は早くに亡くなって一人暮らしも長いって話なのに何でこんなにスレてないんだか。


「街中で暮らす分には、マリーに足りない物なんか無いんだ。魔法使いとしても、あの恐狼ダイアウルフに傷を負わせたくらいなんだからかなりのもんだろう。

 だがゴブリン達を纏め上げる長の女房としては、少しばかり迫力が足らなねぇなぁ」


 そう、諭すように言ってやる。

 力を認めた上で足りない物を教えてやるってのは、使える部下を育てるコツらしいからな。


「にょ、女房だなんて」


 さっきまで沈んだ顔をしていたのに、女房と言う言葉を聞いた途端にマルグリットが舞い上がった。

 薬が効きすぎたか?女房ってのは冗談のつもりだったんだが……。


「集落のゴブリンにしてみれば、長が女を囲っていれば女房にしか見えないだろう?」


 仕方が無いので、そのまま押し通そう。


「そんな、まだ心の準備が……」


「だから、マリーを迎え入れる準備が整うまで、シアと一緒に待っていて欲しい」


「は、はい」


 ちょろい。

 これでマルグリットは、しばらくは大人しくしてくれるだろう。 

 だが、こんなに簡単に言い包める事ができると、離れるのが心配になってくるなぁ。

 フェリシアには、マルグリットの事をよろしく頼むと言っておいたし、裏社会やスラムにコネを作っておいたので、いらんちょっかいをかけるバカも居ないと思う。

 それでも、予想外の事ってヤツは起きるからなぁ。

 しかし、こればかりは、考えたってどうしようもないか。

 未来は知りようが無いし、予測するにも情報が少なすぎる。

 何かが起こったら、そん時はそん時だ。アドリブは得意じゃないが、なんとかするさ。


 ちなみにフェリシアの返答だが、「そんな事、アンタに言われるまでも無いよ。それよりも、アンタが森に帰ってる間にマリーがアタシの物になってないかを心配する事だね!」と、憎まれ口を叩かれたので、「それならそれで構わない、マルグリットが幸せになれればそれでいい」と返してやったら、「……ずるい」と言われて蹴られた。

 予想外のところでフェリシアからの好感度を上昇させる事になったが、あの調子なら、二人で仲良く待っていてくれると思う。



 ・



 荷造りを終えて、夜を待ち、郊外の待ち合わせ場所に行くと、案内人と奴隷達が待っていた。

 案内人を返し、奴隷達に睡眠薬を飲ませ、意識が無くなったのを確認してから魔法の鞄に放り込む。

 魔法の鞄の中に生き物を長期間放り込んでおくと狂うってのは、おそらくだが、内部が音も光も無い世界だからだろう。

 なにかの本で読んだんだが、普通の人間がそう言う部屋で長時間過ごすと、感覚に異常をきたして発狂するという話があった。

 だが、睡眠状態であれば、逆にそう言う状況の方が良く眠れる。勿論、中で起きれば酷く混乱するだろうが、その前に鞄から出してやればいい。


 今回は、街道を使わずに草原を突っ切って蒼の森に向かう予定だ。平坦とはいえないし草も生えているので自転車で走るのにはあまり適さないが、俺の脚力なら夜明け前に森に着けるだろう。

 森に入った後は、昼間は休憩を多く入れつつ奴隷達と一緒に歩き、夜は眠らせた奴隷達を鞄に入れて俺が走れば、三日も経たずに集落に着けると思う。

 道についてはスラムでレナードと初めて会った後に、マコラを魔法のコンパスの基点を持たせて集落に帰らせてあるので問題は無い。インドラを使わせているので、何事もなければすでに集落に到着している筈だ。

 道中、俺が寝ている間の警戒はショウトラに任せる予定だ。

 奴隷達にも警戒はしてもらうが、所詮は村人として生きてきただけの連中なので当てにはならない。

 それでも適度に緊張してくれれば夜は良く眠れると思うので、実際はそっちの方が主目的と言っても良かった。眠ってくれないと魔法の鞄に放り込めないからな。


 集落では環境を整えながら、一月程度は様子を見るつもりだ。

 その間に、ある程度ゴブリンと奴隷達の間に信頼関係が築けるように調整できたらこの街に戻ってこよう。

 それぐらいの期間なら、マルグリットも我慢できるだろ。

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