4-12
今話には、少々人を選ぶ描写が存在します。読まれてご不快な思いをされましたら、申し訳ございません。
キーワード・性的な人体改造
「マリー。オマエ、俺とフェリシアのどちらかを選ばなくちゃならなくなったら、どっちを選ぶ?」
ベットで一戦を終えて、気だるげに寝転んでいるマルグリットに、聞いてみた。
「い、いきなり何を?あ!もしかして、あの後シアに会えたんですか!?」
俺の言葉があまりにも予想外だったのか、マルグリットは甘い雰囲気をふっ飛ばして、素っ頓狂な声を上げる。
「とても重要な事だ。良く、考えてくれ」
混乱するマルグリットに取り合う事無く、言葉を続けた。ここで軽いノリになると、段取りが台無しになるからな。
「そんな……。どちらかなんて、選ぶ事はできません。シアは大切な友達ですし、レドは私の大切な人なんですから」
幸いな事に、俺の真剣な声にマルグリットも落ち着きを取り戻してくれた。
「だったら、俺とフェリシアの二人と一緒に居る為なら何でもやるか?」
「やります!私にできる事なら!」
「そうか。それを聞いて安心した。おい、フェリシア、入って来い」
「へ?キィ……、キャャァ!」
俺の言葉に答える様に部屋のドアが開き、驚いたマルグリットが悲鳴を上げながらシーツで体を隠す。
「は、裸!?なんで?どうしてシアが?」
現れたのは全裸のフェリシアだ。招き入れた覚えの無いフェリシアがこの家に居る事と、そのフェリシアが裸になっている事で、マルグリットは混乱の極みにあるようだ。
対してフェリシアは、顔を真っ赤に染めて俯いている。
胸は小ぶりだが手足はすらりと伸びていて、全体的にはしなやかな印象を感じさせる体だ。一点を除けば、引き締まった体が好きなヤツにはたまらないだろう。
「……あ、あれ!?シア、それ、どうしたの?」
混乱しているせいですぐに気がつかなかったのか、マルグリットがフェリシアの股間を指して、声を上げた。
ソコには、女にはついているはずの無い器官が存在している。
マルグリットの疑問にフェリシアは答えない。いつもなら軽やかに回る口も、いまは羞恥を噛み締めるかのように硬く閉ざされていた。
「俺が造ってやったんだよ。ココを大きくしてな」
と、マルグリットの股間にある、ソコに触れる。
「ヒィン!」
可愛い声を上げたマルグリットが、顔を紅くして俺を睨みつけた。
「ヒィ……ゥ……。どう、し、て、そん、な、事を?」
睨まれたお返しに弄り続けてやったが、マルグリットも負けじと聞いてくる。
……面白いけど、このまま弄ってると話が続かねぇな。
手を離すと、マルグリットがほんの少しだけ残念そうに身を寄せた。また後で可愛がってやるから、今は会話に集中してくれ。
「フェリシアが、オマエが俺を思うように、オマエの事を好きだったって気がついていたか?」
「え?え?え?そんな事……、だって、私たち女同士だし……」
俺の言葉を聞いたマルグリットは、まるで首振り機能が壊れた扇風機のように高速で、俺とフェリシアを交互に見る。
「世の中にゃ、男が嫌いで女が好きって女もいるんだよ」
「でも、だって……」
「マリー。さっき言ったよなぁ?俺とフェリシアの為なら、何でもするって」
混乱するマルグリットの肩を押さえ、真正面からその瞳を覗き込む。さぁ。これで逃げ場は無いぜ?
「選べ、マルグリット。フェリシアを拒絶して失うか。それとも、俺がオマエを受け入れたように、フェリシアを受け入れるか」
まぁ、答えは分かりきっているけどな。オマエの為にあんなモノまでつけたフェリシアを、拒絶できねぇよなぁ?
「わ、私は……」
・
「なぜ、あんな事をしたんです?」
三人で楽しんだ後、満足して失神したフェリシアに膝枕をしながら、マルグリットが俺に聞いてきた。いや、声には怒りが滲んでいるし、問い質すって言葉の方が合っているかもな。
「ん?ああ、オマエとフェリシアの仲を取り持つ為だ」
ここで気後れすれば答えが嘘っぽくなるので、当たり前の事のように答えた。
「でも、それなら、あんな事をしなくたって……」
「それなんだがなぁ。フェリシアは、本気でお前の事を愛しているみたいだぞ?」
元々、子供の頃に助けられた時に、マルグリットの事を好きになったらしい。
その後、年頃になって襲われかけた所為で男に嫌悪感をいだくようになり、男に襲われる恐怖心から無意識に女っぽい格好を避けるようになった自分と、格好は垢抜けないものの年々女らしくなっていくマルグリットとの差に、恋愛感情を錯覚したようだ。
フェリシアに話を持ちかけた後、愚痴混じりに聞かされた惚気をまとめると、こんな感じらしい。ちなみにまとめないと、いかにマルグリットが素晴らしいかを、延々と語る事になる。
男に襲われたショックで、自分が弱い女である事が耐えられなくなるってのは、ありえないって事でも無いだろう。だとするとフェリシアは、性同一性障害や真性の同性愛者では無いと思われる。
今のところはマルグリットとの絡みを見て楽しむ事しかできないが、そう言う事であればその内に、フェリシアで楽しむ事もできるかもしれないなぁ。
「この数日この家に寄り付かなかったのも、俺とイチャイチャするお前を見たくなかったからなんだろうなぁ。
あのままなら、確実にお前の前から姿を消したんじゃないか?」
「……そんな…………言ってくれれば……」
呆然とした表情で、マルグリットがブツブツと呟く。
「言ってくれれば、俺から離れてフェリシアと一生を添い遂げたか?」
「そ!そんな事は……」
「無理だよなぁ?だが、今の状態なら、三人で仲良くやっていく事もできる」
俺の提案に、マルグリットは言葉を失う。表情も消え、ただ虚空を見つめる瞳だけが、逡巡するように揺れていた。
さぁて、ここからが大詰めだ。
「不安なのは分かるが、それは今更だろう?
大体、酔った勢いでゴブリンを押し倒すような女が、女の恋人ができたからっておたおたする必要も無いだろ?」
「それは!」
冗談めかして言ってやると、マルグリットが目を向いた。
酔っていたとは言え、一大決心でやった事をこんな風に軽く言われれば腹も立つわなぁ。
「オマエが、こんなにも俺を受け入れてくれるんで勘違いしちまったが、ゴブリンてのは一昔前なら、見つけ次第殺されるような生き物だったんだよな?」
しかし、声を落として真面目な顔で言葉を続ければ、マルグリットは飲まれたかの様に黙って、耳を傾けた。
本当に、マルグリットは素直で助かる。
「そんな相手に囲われてたオマエが、口さがない連中に受けた酷い扱いってのは、俺の想像以上だったんだろうなぁ。
……そんでも、俺を弁護してくれたんだろう?」
静かに、マルグリットの瞳から涙が落ちる。辛かった事を思い出したのか、それとも俺の理解が嬉しくって流れた嬉し涙か。
「たぶん、俺がこの国に来て、人間たちに話を聞いてもらえたのは、オマエがそうやって他の連中に話してくれたんだからだろうなぁ」
静かに涙を流すマルグリットを抱き寄せ、その耳元で、
「ありがとう」
と言って、唇を重ねる。
マルグリットは、泣きながら俺の口付けを受け入れた。
そのまま、優しく抱きしめながら、マルグリットが眠るまで添い寝をする。
…………さて、これで、上手くうやむやにできたかな?
マルグリットにした説明は、嘘ではないが全てでも無い。
実際、放って置けばフェリシアが俺たちの前から姿を消していた可能性もゼロではないが、たぶん、しばらくすればケロッとして、またこの家に顔を出していただろう。
なにも、フェリシアがマルグリットに告白して、振られた訳じゃあないんだ。フェリシアが心の整理さえできれば、前の状態には戻れるんだからな。
だがそれじゃあ、俺が困る。
マルグリットに手を出した以上、簡単には手放す気は無い。
しかし、何かの拍子に、マルグリットの気持ちが他に向かないとは言い切れないからなぁ。この状況からマルグリットが逃げ出せなくさせるのには、フェリシアの存在は最適だと言える。
今の状態が嫌になったとしても、自分一人の事なら、多少の傷を負っても逃げる事はできるだろう。しかし、親友だと思っていたフェリシアを巻き込んだ状態なら、マルグリットは動けない。
善良な人間ってヤツは、他人を巻き込んで底なし沼に嵌ると、中々一人だけでは逃げ出せなくなるからなぁ。
勿論比喩的な表現なので、実際に死に掛ければ他人を犠牲にして生き延びようとする事もあるだろう。しかし、それが借金程度なら見捨てられずに、揃って悲惨な事になるなんて話も前世では聞いた事がある。
――それに、マルグリットの精神状態も少し心配だった。夜の行為が気に入ってると思ってたんだが、もしかしたらアレは逃避行動の一種かもしれない。
そもそも、酔っ払ってゴブリンを押し倒すってのがなぁ。
ゴブリンが蛮人レベルなら、それだけの信頼を俺が勝ち取ったと考える事もできなくはなかったが、珍獣や害獣程度にしか認識されてないとなると、かなり異常な事になる。
マルグリットが経験した事を考えれば、そうなったとしてもおかしくは無い。
人間の精神ってやつはかなりタフだから、逃げ場さえあれば、かなり悲惨な状況でも自分を騙して生き延びようとするが、限界を超えればやはり破綻する。
俺も、追い詰めたり、思考誘導したりと、色々やったので、責任が無いとは言わない。
だからと言う訳でも無いが、フェリシアにはマルグリットの傍に居てもらう事にした。一人では耐えられない状況でも、他に人が居れば結構耐えられるらしいからな。




