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Deviant ー妖魔転生ー  作者: 是色
第二章 萌芽
18/100

2-5


 おっふ。

 誘ってきただけあって、イルメラのベッドテクニックは中々のモノだった。


「ご満足いただけましたか?ニグレド様」


「ああ」


 前世で行った、そう言うお店のおねぇさん達より凄かったよ。


「今度は俺の番だな」


「おっ、長様にそんな事をして頂く訳にっ、はぁっ」


「なぁに、イルメラ殿は客人なのだから、客人らしく持て成しを受け入れてくれればいいんだ」


「そ、んなっあぁー!」


 愛撫しつつ、こっそりと、イルメラの体に薬を塗る。

 汗と体液に濡れた体だから気づかれずに済むだろう。これは以前、二号を捕食しようとした花から取れた媚薬に、色々と混ぜて作ったクスリ(カクテルドラッグ)だ。

 人体に使用したのは初めてなので効果のほどは分からないが、たぶん死にはしない。

 ……と思う。


「あ!」


 変化は劇的だった。


「なん、で?なひこへ?」


 イルメラの端正な顔が緩む。


 はっはっは。さすが複数の薬物(アッパーとダウナー)を混ぜると効きが違うなぁ。

 俺がやるのは御免だが、たっぷり楽しんでくれ。



 ・



 みぃあ~さ~、い~ちふ~か~、の~のじ、ののじ。

 は~ちのじ、よ~こはち、むげんだ~い~。


「ぁー……、あ゛……」


 んー、ナニをやっても殆んど反応しなくなってきたな。

 そろそろいいかな?

 ――『精神感染メンタルウィルス』発動!さぁて、色々吐いて貰おうか。


「あ……う……」


 混濁していたイルメラの顔から、ストンッと表情が消える。

 抵抗された感じはないけど、効いたかな?


「さぁて、イルメラ。頼みがあるんだが聞いてくれるか?」


「はい、なんでもおっしゃってください」


 おっ。効いてる、効いてる。


「んじゃ、まずはお前の事を教えてくれ」


「わたくしは、そーんつばいくのいるめらですわ」


 ソーンツバイクはダークエルフの国だったはずだ。

 正体と質問して“行商人のイルメラ”と答えなかったのは、この女が行商人ではないからなのか?


「お前は行商人ではないのか?」


「りえきをどがいしし、たいかいじょうのしょうひんをわたしているので、わたくしのことをそうよぶのは、ぎょうしょうにんにたいしてしつれいというものです」


 対価以上の商品ねぇ。


 森で手に入るものを渡して、森で手に入らないものを入手する。

 と言うだけならまともな商取引だが、商売相手が森に住む上位種族のダークエルフでは、成り立ちにくい取引ではあるわな。

 質の悪い武具とは言え、ゴブリン程度が手に入れられる素材と交換する意味がダークエルフに無いとしても、驚くほどの事では無い。


 問題は“なぜ、そんな事をするか”だ。


「ではなぜ、行商人の真似事なんて事をする?」


「ぎょうしょうをしているようにみせかけてごぶりんにぶきをわたし、もりにはいるにんげんをけんせいするためですわ」


 ……武器を渡して人間に牽制?

 冷戦時代に、中東から某赤い国を追い出すために某自由の国が某聖なる人達に武器を供与していたのと同じ理屈か?

 つまりこの女は、ダークエルフの国の工作員だと?


 うはっ……。予想外にきな臭くなったな。


「ストップ!もういい」


 嫌な予感がするので、それ以上の事は喋らないでくれ。

 工作員なんてやっている以上、どんな秘密を知っているか分かったもんじゃないし、もしかしたら秘密を喋ろうとしたら自殺するような暗示をかけられていてもおかしくはない。

 ダークエルフがゴブリン相手に行商人なんておかしいと思ってはいたが、想像以上の爆弾を抱え込んでいやがったな、この女。


 まずいな、藪をつついて蛇が出て来たなんてもんじゃない。何らかの組織とつながりがあるとは思っていたが、それが国だとまでは思わなかった。

 最悪、行方不明(・・・・)になってもらうつもりだったが、こうなると殺す事もできやしない。なにしろ、バックにいるのが国なら降霊術や過去視の様な固有魔法を持っているヤツが居てもおかしくは無いんだからな。

 そうなると殺すのは下策どころか愚策にしかならないだろう。

 待っているのは破滅だけだ。


 もしかするとこの会話だって聞かれているかもしれないのか?いや、それならイルメラを救出に来ないのはおかしい。

 いやまて、盗聴している奴が遠くはなれた場所にいれば、すぐには行動を起こせない可能性もある。

 だったらどうする?既に行動は起こしているから、放って置いても状況は悪化するだけだ。

 だとしても、下手に動けばどんなリアクションがあるか分かりゃしない。

 もしかしたら、何も対抗措置がとられていない可能性だってあるのに、俺が過剰反応した所為で状況が悪化する可能性だってある。

 しかし、希望的観測にすがって判断するのは間抜けすぎるんだよなぁ。


 だったら?だとしたら?どうすれば良い!?

 ああクソ!考えれば考えるほどドツボにはまって行く気がする。

 ……はぁ。まぁいいや。

 今更どうしようもないからこのまま状況に任せよう。

 とりあえず、今すぐイルメラの仲間が突入してくる気配は無いし、ダークエルフの思惑が人間に対する牽制なら、その方向に行動している間は敵対していると見なされないだろう。たぶん。

 だめだったら全て捨てて人間の街に行ったっていいんだ。まだ準備の途中だが、背に腹は変えられないからな。


 そうと決まれば情報収集を再開しよう。

 ダークエルフの事はいいとして、他の事を色々と聞いて見るか。

 工作員なんてやっているのなら、他の種族の裏事情も少しは知っているだろ。


「ややこしい事態にしたくないので、ダークエルフに関する事はもう話さないでくれ。

 それ意外で、昼間に聞いた事の詳細を教えてほしい。まだ喋ってない事があるんだろう?」


「わかりました……」


 その後イルメラの口から語られた内容は、暴狼レイジウルフの素材を渡した時に聞いた話以上に詳しくゴブリンやオーガの内情が語られ、人間の国々の話も噂話として語られた話の真偽と詳細を聞けたが、薬草に関してはアレ以上は何も知らないと言う事だったので知っている全てを教えてくれたようだ。

 と言う事は、情報に関しては割と誠実に取引してくれたのかな?今回語られた話は一集落の長が知る必要のない話ばかりだし、色々と面白い薬効の薬草話も聞けたしなぁ。

 だとすると、クスリまで使った事はやり過ぎのような気もするが、やってしまった事は仕方がない。まぁソレ以外にも面白い話が聞けたしな。


 特に興味深かったのは、この蒼の森の一番奥にいる存在の話だ。

 この森の最深部には幻獣とやらが居るらしい。名を蒼箆鹿ペイルエルク。魔獣なんかとは比べ物にならないほどの力を持ち、遥か昔から何度も討伐記録があるのに未だに存在し、オーガに奉られている御伽噺のような存在だが、それ以上の事はさすがにイルメラも知らないと言う話だ。

 詳しい事は分からないが、不老不死の存在がこの世界に存在すると言うのなら、少し興味がある。退屈さえしなければ、永遠に生きられるってのは面白そうだ。

 まっ、恐狼ダイアウルフにすら勝てそうに無いのに、それ以上の力を持つって言う相手と戦う事なんて無いだろうけどな。


 んー、イルメラから聞いておきたい情報は大体聞き終えたかな?

 あ……、そう言えば強力な武器ってのは山脈の何処から見つかるんだ?


「北の山脈から強力な武器が見つかると言う話だったが、何処から見つかるんだ?」


 そんな物がほいほい埋まっている訳でも無かろうに。


「きたのさんみゃくにはかずおおくのどうくつがあり、そのうちのいくつかがいせきにつながっているというはなしです。きょうりょくなぶきはそのいせきからはっくつされるのですわ」


 洞窟に遺跡と来たか。

 面白い……、と思うが、そう言う場所には危険がつき物だよな。

 余裕があったら潜って見たいが、命あっての物種だ。潜る時にはできるだけの準備をするとしよう。


 後、個人的な事だが気になっていた事も、この際だから聞いておくかな。


「何でダークエルフのお前が、ゴブリンである俺なんかに媚を売ったんだ?」


 良い思いをさせてもらっておいて何だが、あまりにも胡散臭すぎる。

 数時間のやり取りでそこまでの好意を抱かれたと感じるほど、自惚れる気はないし、そんな筈も無いだろう。

 工作活動の一環としてなら考えられなくも無いが、集落の長一人一人を誘惑すると言うのも無理がある。

 では、なぜだ?


「にぐれどさまには、わたくしのちからがきかなかったので、からだをつかってろうらくをしようとおもいました」


 ちから?固有魔法の事か?


「オマエの力ってのはどんな物だ?」


「あいてのこころをよむまほうがつかえます」


 うげ。なんて工作員向きの固有魔法を持ってるんだか。


「俺の心はどうだった?」


「なにかにさえぎられてよめませんでした。ですから、なんらかのほうほうでわたくしのまほうにていこうしているとかんがえました」


 『精神感染メンタルウィルス』で張った防壁が役にたった……のか?

 秘密は守られたが、余計な興味を引かれていたんではあんまり意味がなかったかもしれないな。


 だが知らない内に情報を抜かれているよりかはましか?

 手札が丸見えでは、勝ち目も何もあったもんじゃないからなぁ。

 とは言え、予防策に効果がある事が証明されたのは朗報ではある。

 俺の『精神感染メンタルウィルス』は、他人に使う場合は相手が受け入れるか精神的に疲弊してなければ効果を表さないが、その代わり応用範囲はかなり広い。

 今回は予防策として自分に暗示をかけて、表層意識に別人格とも言える下位人格を作り出し、それを防壁として使用した。

 まさか相手が心を読んでくるとは思わなかったが、前の長の例もあるので、精神操作に警戒したのがこの結果をもたらしてくれたようだ。


「ゴブリンに過ぎない俺に、篭絡する価値なんてあるのか?」


「それなりのちせいとたかいちしきよく。そして、せいしんにぼうへきをはるのうりょくとしんちょうさ。どれもごぶりんとしてはきかくがいなことなので、てごまとしてかくほするにたるとはんだんいたしました」


 手駒か。体を張っても欲しいと思ってもらったのは光栄だけど、逆に言うと、それくらい人材不足だったりする可能性もありそうだな。

 ん~……。悪くないお誘いだが、まだ一つの組織に取り込まれるには力が足りないかな。

 現状では使い捨ての捨て駒にされてもおかしくはないし、せめて切り札の四五枚は確保してからでないと、裏社会には身を置きたくない。


「なら、俺の事は上手く篭絡できなかったとしておいてくれ。

 そして、俺の事は今後、できるだけ誰にも喋るな。喋る必要がある相手にはできるだけぼかして伝えろ。

 そうだな、人間の死体から剥ぎ取った魔法の道具を持っている事までなら伝えても良い」


「わかりました。にぐれどさまのことはきょくりょくしゃべりません。

 じょうしには、このしゅうらくのあたらしいおさは、うんよくみつけたにんげんのしたいからまほうのどうぐをてにいれて、それをつかい、おさのざをりゃくだつしたくろいはだのわかいごぶりんだとほうこくします」


 黒い肌か。特徴的過ぎて、伝えないのも不自然だな。できるだけ情報は広めたくないが、そこは我慢しよう。


「それで納得せずに追求を受けたら、骨抜きにしてやろうかと思ったら逆に手玉に取られたので思い出したくも無かった、とでも言っておけ」


「はい」


「よし。お前は『精神感染メンタルウィルス』が解けたら、『精神感染メンタルウィルス』がかかっている間の事は記憶から消える(・・・)。たとえいかなる固有魔法を使用しても、お前がよがり狂った以上の事を思い出す事はない(・・・・・・・・)。良いな?」


「はい。すべてのことをきおくからしょうきょし、けっしておもいだすことはありません」


 さて、こんな物かな?

 必要な情報は聞けたと思う。後になって聞いて置けばよかったと思う情報が出て来るかも知れないが、今は思いつかないので、そん時はそん時だ。


「聞きたい事は聞けたからご褒美を上げよう。ついでに俺も楽しませてくれ」


 マグロ相手じゃ面白くないから、『精神感染メンタルウィルス』解除っと。


「ヒィッ?……アァァ……」


 うんうん。話を聞いている間に少しは回復してくれたようだ。やはり、反応してくれないと面白くないよな!


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