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Deviant ー妖魔転生ー  作者: 是色
第一章 産声
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 緑肌共なんざ生かしておく価値はねぇ!殺しちまおうぜ?

 なぁ、実験だったらゴブリンじゃなくたって人間でもできるじゃねえか?

 だからよぉ、全部纏めてっちまおうぜ?なぁ!

 殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せぇぇぇ!


 あぁぁぁ、うっとおしい!!!


 この集落のゴブリンは俺を疎んじたヤツラじゃあ無いんだ、力を得たからって誰彼構わず当り散らす様な見っとも無いマネはやらん!!!


 ……はぁ。


 ゴブリンの集落を襲ってから、どうにも本来の俺の意識が暴走しやがる。

 既に人間時代の俺とゴブリンの俺の境界線は無くなっているが、元々が別の存在である事には変わりないので、時たま人間時代の記憶が邪魔になったり、ゴブリンの俺の衝動がうっとおしくなる。

 そもそも、生きるだけなら人間の社会に行く必要は無いんだよな。

 現状でもゴブリンの長として、それなりに恵まれた一生を送る事はできるだろう。

 ゴブリンの俺が満足したいなら、この集落のゴブリンを使って生まれ故郷を探させて襲っても良い。

 だが、それだけでは前世の世界を(・・・・・・)知っている俺(・・・・・・)が我慢できない。

 折角魔法なんてものが存在する世界に生まれ変わったのに、こんな森の中で余生を送るなんてもったいなさ過ぎる。

 被差別種族に生まれ変わったのはマイナスだが、それも力さえあればどうにでもできるだろう。

 人間時代の窮屈な社会ではできなかったアレ、コレ、ソレ……。

 この世界がマルグリットの言っていた程度の社会構造なら、どれもこれもやり放題だ。

 なぁに、やばくなっても後始末の方法なんざいくらでもあるさ。


 だがそうなると、とっとと面倒事を片付けるのも手だな。

 裏目に出ると少しばかりまずいんだが、このままフラストレーションを貯め続けるのも後が怖い。

 どっちに転んでも負けの目があるのなら、ストレスの少ない方に賭けるとしよう。


 そうと決まればゴブリンに命じて……と、この実験は失敗か。

 いくら自我がなくなっていても生きた生物の合成は不可能っと。

 オオカミで実験した時は合成してもすぐに発狂して心臓が止まっちゃったからなぁ。

 自我が無ければ狂わないと思ったんだが……、これでもだめだったようだ。

 どうやら感情や自我よりももっと深い部分で拒絶反応が発生しているようだな。

 これが融合ならば生きたもの同士でも、ある程度は可能なんだがなー。

 ただし、指先程度なら兎も角、ある程度以上の面積を融合させるとこちらも発狂して死んでしまうが。

 しかし、生きているモノに死んだモノを融合する場合はその限りではないようで、生きているオオカミに殺してすぐのオオカミの肉体を融合した場合、一回り大きなオオカミとなる。

 これを続けていくと際限なく大きくなっていくのだが、ある程度以上の大きさになると肉体の強度が足りず身動きが取れなくなってしまった。

 つまり、融合では肉体組織の強化はできないのだろう。

 それでも二三体程度であれば筋肉量の増加に伴う身体能力の上昇が見込まれるので、短期的にな強化としては悪くは無さそうだ。

 問題は長期的にどういう障害が発生するかだが……、それには実験体の経過観察が必要だな。

 融合した組織の安定性、骨格や内臓の負担、など考え付くだけでも崩壊の危険性はいくつもある。


 う~ん。この集落を支配してから『自在工房ワークショップ』での生体実験を繰り返してきたが、『自在工房ワークショップ』による肉体改造はあまり実用的ではないのかもしれないなぁ。

 安全性を考えるなら、少なくとも自分の体に施のはやめておいた方が賢明だろう。どんな副作用があるか分からないし。

 しかし、見てくれの悪さは兎も角、体の小ささはどうにかしたいんだよなー。

 ゴブリンも魔獣のように魔力を増やす事で体が大きくならんものかな?薬師にでも今度聞いてみよう。


 ちなみに実験の結果だが……。

 肉体の形状を変化させる事は可能。しかし、やりすぎると組織崩壊を起こす。

 治療に関しては外科的なモノなら特に問題はないのだが、内科的な治療には知識が足らないから診察もままならない。

 ある程度近い生物なら融合で失った肉体の補完は可能だが、まったく関係のない部位を融合する事は無理だった。血管さえつないでおけば壊死は起こらなかったが、神経を繋いでも脳も骨格も筋肉も対応していないのでピクリとも動かせないようだ。

 今後の課題は成功した数例の経過観察だな。移植手術を例に挙げるのも何だが、時間を置いて拒否反応が出ないとも限らない。

 自分の体に使うのを諦めたとは言え、使い捨ての兵隊を短期間で強化するには悪くない方法だからな。


 と、まぁ、体の改造の方は今一だったんだが、魔力の方は中々興味深い結果になった。

 結論から言うと、他者への固有魔法の付与が可能になり、“擬似的な魔法の道具”が作れるようになった。

 実験を重ねて『自在工房ワークショップ』の解析の精度と認識力が上がり、新たに『精神感染メンタルウィルス』を身につけるため魔力の器にアクセスしたお陰で、固有魔法の術式、魔法式とでも言うようなものを理解……とは言えないまでも、ある程度認識できるようになった俺は、これを活用する為に更なる実験を行った。

 『自在工房ワークショップ』で生き物の魔力に手を加えるには本人の協力が必要不可欠ではあるものの、上手くすれば他の被験者の固有魔法や魔法の道具の力を複写する事に成功する。

 問題は一度覚えた固有魔法は消す事ができない事だ。何か方法が在るのかもしれないが現状、俺にはできない。

 一見するとそれほど問題には思えないんだが、固有魔法を使えるようになるとその分身体能力を強化する魔力が低下する事が分かったんだよなぁ。

 コイツは、固有魔法を新たに覚えさせたゴブリンの身体能力が、目に見えて低下した事で判明した。

 俺が魔法を覚えた時にも体にうまく力が入らなくなったんだが、固有魔法を覚えた事による疲労と、その後魔法の練習ばかりしていた所為で体が鈍っただけだと思ってたんだよなぁ。

 今思えば考えが甘かったとは思うが、どの道魔法は覚えたかったし、使えるようになった魔法にも満足しているので後悔はない。

 ただ、この事をマルグリットが知っていたかが気になる所だ。特に注意は受けなかったが……。

 分かっていて黙っていたのか、まだ人間たちにも認知されていないのか。

 もしかして、この症状は人間には現れないとか?……とりあえず、この判断は保留として、ゴブリンではその症例がある事だけは覚えておこう。


 魔法の道具の方は、コロンブスの卵と言うか気づいてみれば簡単な事だった。

 魔法式が分かるようになってから魔獣の死骸を解析したところ、群れ狼(ハードウルフ)叫兎スクリームラビットの頭蓋骨や火炎鹿バーニングディアーの角に残る魔力の残滓からも魔法式が読み取れた。

 もしかしたらと思いながら『万能マルチツール』で俺が魔力を供給すると、魔獣の固有魔法が発動する。

 と言っても、群れ狼(ハードウルフ)の固有魔法は発動した感触はあったもののどう言った能力があったのか分からず、火炎鹿バーニングディアーの角が炎に包まれた時には危うく火傷しそうになった。

 どうやら、発動はするものの制御するのは難しいようだ。

 辛うじて叫兎スクリームラビットの超音波は使えそうだったので、『自在工房ワークショップ』で加工して小手に仕込んだ。

 でもまぁこれで、魔法の道具と違って俺自身の魔力を使うが、魔獣の素材を使った擬似的な魔法の道具が使えるようになった訳だ。

 もっとも、この方法では好きな魔法の道具は作れないし、魔力を消費し続けるような常時発動型の魔法とも相性が悪い。

 やはり普通の魔法道具の作り方も知りたいところではある。


 さて、思いついた実験は一通りやってみたけれど、生体実験としてはあんまり意味がなかったかなぁ。

 やはり、何百と個体差の少ない被検体で試さないと施術の安全性は保障できない。

 それでもできる事とできない事の大体の目安はついたので、緊急時以外でも少しぐらいなら使っても良さそうだ。


 しかし、これで残る守り人は二人か。俺の『精神感染マインドウィルス』では精神の破壊はできないから、大事に使うとしよう。

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