エピローグ2
次郎系はなぜ気持ち悪くなるほど食べてもまた食べたくなるのか。
「うげ、ゲプ……、もう食べたくない……」
立川駅までの道を歩きながら、学校指定のセーラー服姿のエメリアは口を抑えた。
「お前普通盛り頼むのやめろ」
「だって! もったいないじゃん! 麺少なくしても同じ値段じゃん!?」
「普通盛りが十分安いんだから我儘言うな。あと野菜と油も増やすな」
「タダなんだからもったいないじゃん! 暁だって大にして野菜と油増やすくせに!」
「俺は食べきるから良いんだよ。残してる奴が文句を言うな」
三週連続で行くのは狂人だと言って、この日雪子は次郎系についてこなかった。
「暁、カラオケ行こう」
「行かねえ。帰る」
「奢りでも?」
「ドリンクバー飲みてえだけだろ。今の時間カラオケは高いからな。ドラックストアで買った方が安い」
俺達は近くのドラックストアで飲み物だけを買って出てきた。
エメリアがトクホのコーラを開けて飲んだ。
「う゛あー生き返る」
俺は安いウーロン茶に口を付けた。
うまい。次郎系を食った後は、マジで茶がうまい。
エメリアはエルフ語だという歌を口ずさみながら歩いた。
詠唱を用いる魔術師の大半は歌が上手い。なぜなら喉が鍛えられているからだ。
エルフ語のせいで何を言っているのか分からないが、エメリアの声は美しく、耳を傾けるに値する歌声だった。
「ぷはぁ」
信号で立ち止まり、歌うのをやめコーラを煽ったエメリアが俺を振り返った。
「ねえ、暁」
「なんだよ」
「楽しいね」
「は?」
西日指す交差点で、黄金の髪を輝かせ、彼女は笑った。
「こうやって、馬鹿みたいに笑って、怒って、楽しくない?」
交差点の信号が変わって、人々が歩き出した。
俺も歩き出し、安いウーロン茶を煽った。
「まあまあだな」
駅前を歩く、学校帰りや仕事帰り、一日を終え疲れ果てた人妖共の輪郭が、普段より少し、くっきりと見えるような気がした。




