首都結界外郭外回り環状線五等車両3
電車は、アナウンスと共に減速しはじめた。
『次は巣鴨、巣鴨。お出口は右側です。都営地下鉄三田線はお乗り換えです』
巣鴨駅に到着し、妖怪達が乗り込んできた。
人妖密集地である東京にはくそったれな妖怪が山ほどいる。
そして、ババア曰く、俺は妖怪に絡まれやすい性質をしているそうだ。
今回も、くそ野郎が俺に声を掛けてきた。
「おいおい。わけえの。その年からそんな真っ赤に髪を染めてちゃあ、将来ハゲるぜ……この俺みたいにな!」
「あ?」
俺の前に立ちはだかったのは、バーコードハゲで上半身裸、だらしない腹をした中年親父だった。アイドルのように腕をXに組み、育毛剤のスプレー缶を両手に握りつつ、指を立てている。
五等車両に乗り込んできたのだからおそらく妖怪なんだろうが、たまにイカれた人間も乗り込んでくる。今回は気配からして多分妖怪の類だ。人間であって欲しくない。
「なんだてめえ」
「我が名は育毛仙人! 『頭皮D』、もとい、育毛剤を使用したが毛髪が生えなかった中年男の怨念と使い切られることなく途中で捨てられた育毛剤の付喪神であり、不毛に悩む全国中年男児の救世主である。若者よ! 将来お前ははげる! だが、安心しろまだ間に合う! 今からこの『頭皮D』を使用すれば髪の毛がふさふさに――」
「だったらてめえが生やしてからこい」
俺は手からスプレー缶をぶんどり、スプレーの先端をハゲ親父の右目に突っ込んで噴射した。
「うぎゃああああああ! 生える! 生えるぅぅぅぅ!!」
のたうち回る親父に、スプレー缶を捨てコルトを向けた。
ダンッ!!
霊弾により親父が駅のホームに吹き飛ばされたところで、電車のベルが鳴り、扉が閉まった。
その時、ハゲ親父の右目から、茹でたパスタをぶちまけた時みたいに、貞子ばりの黒髪があふれ出したが、動き出した電車がそれらをゆっくりと後方へ流し去ってくれた。
電車は駅のホームを出て、『桜花結界は売国奴天照によるテロ行為!! 上野千年桜断固反対!!』との旗が掲げられた左翼の家の前を加速しながら通り過ぎた。
『桜花結界』は天照大御神が創造に関与したことを発表し、『日本国の平和の為』であることを述べたことで、だいたいの国民はそれを受け入れている。
というか受け入れるしかなかった。
なぜなら幾度も破壊工作が行われたが、『桜花結界』の本体である上野千年桜は、強力な結界が存在するせいで、枝一つ折れなかったからだ。
大抵の人間は『桜花結界』など気にせず生きている。
だが、、平和が訪れた現在、『桜花結界』の存在を疑問視する者は少なからず存在する。
『かつて『桜花結界』は日本を救った。だが、これほど強大な結界だ。代償が必ずや存在する。本当は、天照大神が俺達の命を吸い上げているのだ』
そんな世迷言がこの日本のどこかで、盲信されている。




