外伝(???) 竹林の七賢
~~~某所 竹林~~~
「さあ、お待ちどう様でした。大喜利のコーナーです。七賢司会の阮籍です。
世間は曹氏が衰えて司馬氏の世の中になりましたが、
いつも変わらず飲んだくれてる、皆さん方のご挨拶からどうぞ」
「梅雨の季節です。傘で顔を隠して、スリがしやすい季節でもあります。
もっともアタシは男前なんで顔は隠しません。向秀でございます」
「世間じゃ司馬師が司馬昭がと騒いでますが、
シバイはお話の中だけにしてもらいたいものですね。嵆康です」
「花冷えの季節です。ラーメンの美味しい季節になりました。
劉伶ラーメンを食べて元気になりましょう。劉伶です!」
「6月といえば結婚式の多いシーズンです。
僕もどさくさに紛れて結婚できないかなあ。あ、相手がいないんだった。
それじゃ駄目じゃん。阮咸です!」
「嫌な世の中になったもんでして、
曹氏の一員の夏侯覇まで蜀に亡命したそうです。
誰とは申しませんが、私の隣の白やオレンジも
亡命してくれないかなと思っております。
山濤です」
「酒を飲むなら竹に囲まれて飲むのが一番です。
こんなに良い竹林は見たことがありません。
竹林大好き王戎です!」
「さあ、続いてはですね。
自宅の井戸が枯れ果てたので、地面に寝そべって口を開け、
雨水を飲んで糊口をしのいでいる呂安君のご挨拶からどうぞ」
「♪雨雨降れ降れ母さんが~。
蛇の目でお迎えより仕送りが欲しいです。座布団と幸せを運ぶ呂安です」
「座布団を十枚貯めますと、それはそれは素晴らしい賞品がもらえます。
みなさんそれを目指してがんばってください。まずは一問目。
まず皆さんはお酒を飲んで喜んでください。
アタシがご機嫌だねえと言いますから、何か返してください。
はい、向秀さん早かった」
「ああ、酒が美味い!」
「ご機嫌だねえ!」
「さっき窃盗の罪が時効を迎えたんだよ」
「あんたなら他にも色々やってるだろ。
一個時効を迎えたってしょうがないじゃないか。
じゃあ山濤さん」
「ぷはあ~。酒が美味いなあ」
「おや、ご機嫌だねえ!」
「お前も一杯やんなよ。今日は阮籍のジジイがくたばった祝いの席なんだ」
「何が悲しくて自分の葬式で酒盛りしなきゃいけないんだ。
山濤さんの座布団一枚持ってっちゃいなさい。
はい、次は劉伶さん」
「酒が美味い!」
「ご機嫌だねえ!」
「ええと、その、あのねえ」
「劉ちゃん頼むから答えが出来てから手を上げとくれよ。
次は座布団没収するよ。
はい、嵆康さん」
「酒が美味いねえ」
「ご機嫌だねえ!」
「司馬懿の通夜ぶるまいは本当に美味いや(ドヤァ」
「そりゃ二重の意味で美味いや。一枚やんなさい。
はい阮咸さん」
「酒が美味いなあ!」
「ご機嫌だねえ!」
「かわいい奥さんに注いでもらったらもっと美味いんだろうなあ!」
「なんだか悲しくなってきちゃったよ。
呂安君、一枚あげて」
「はい!」
「それじゃあ二問目。みなさんには童心に帰ってもらい、
メンバーの誰かに向かって家の自慢をしてもらいます。
そして自慢された方は、何か面白いことを返してください。
はい、王戎さん」
「おい阮咸!」
「なんだよ」
「僕のパパはな、涼州刺史なんだぞ。偉いんだぞ!」
「刺史がどうしたってんだ。僕の叔父さんなんて七賢の司会者なんだぞ」
「よく言った! 阮咸さんに座布団2枚やんなさい。
刺史は何人もいますが、七賢の司会はアタシ一人なんだ。
そりゃあ偉いに決まってます。
はい、じゃあ次は嵆康さん」
「おい劉伶」
「なんだ」
「俺は琴の名人なんだ。
俺にしか弾けない広陵散って名曲もあるんだぞ」
「それがどうしたんだ。俺なんてなあ、琴なんて、お断りなんだぞ」
「劉ちゃん、それ観客がいたら先に答え言われてるよ。
自慢でもなんでもないしねえ。一枚持ってっちゃえ。
阮咸さん」
「やいやい向秀!」
「いま留守だよ」
「嘘つけ、いるじゃないか。
僕は琵琶を改良したんだ。
その琵琶はあんまり出来が良いから僕の名前をとって阮咸って呼ばれてるんだぞ」
「それがどうしたってんだ。
俺なんてお札を作って捕まったことあるんだぞ」
「童心に帰ってって言っただろ。今の自分の自慢をしてどうするんだ。
でも面白いからいいや。一枚やりましょう。
次は山濤さん」
「おい阮籍! 阮籍のジジイ!」
「……なんだい」
「死体がしゃべった!」
「アンタなんて当てるんじゃなかったよ。
座布団1枚持ってきな!
気分が悪いや。次に行こう。
呂安君、皆さんに例の物を配って下さい」
「はい、かしこまりました!」
「皆さんにはこの白い頭巾を着けていただいて……
アタクシに手を合わせるのはやめなさい。
頭巾を着けて幽霊になってもらいます。
そしてアタクシがどうやって死んだの? と尋ねるので答えて下さい。
劉伶さん大丈夫? アンタが真っ先に手を上げると不安だよ」
「大丈夫です!」
「どうやって死んだの?」
「ラーメンの味見をしたら死にました」
「体に悪いって自覚はあるんだねえ。一枚やんな。
はい、嵆康さん。なんで死んだの?」
「皇帝陛下に挨拶する所を司馬師に見られたんです(ドヤァ」
「なるほど。陛下に挨拶も出来ないなんて世知辛い世の中だ。
次は王戎さん、アンタはなんで死んだんだい?」
「はい、私は継母が冬に魚を食べたいと言うので、
氷の張った湖に行って溺れ死にました」
「そりゃアンタじゃなくて王祥の話だろ。
王祥は魚を得られたけどアンタの場合は死ぬんだねえ。
はい、山濤さん。なんで死んだの?」
「私は父のように慕う阮籍様が亡くなったので、
後を追って死にました」
「呂安君、何をぼーっとしてるんだい。
早く2枚あげるんだよ」
「でもさっき楽屋で、阮籍を殺したのは俺だって言ってましたよ」
「……そんなことだと思ってたよ。やっぱり2枚持ってっちゃえ。
ついでに阮咸さんのも1枚持って行って」
「なんで!?」
「告げ口するなんて人が悪いよ。
じゃあ次は向秀さん。どうして死んだの?」
「医者に聞いてみたんですが、
なんでもイケメン病ってやつらしいんですよ」
「アンタ医者にかかるより鏡を見たほうがいいよ。
――今週はこのへんでお別れしたいと思います。
どうもありがとうございました」