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アイコン三国志外伝  作者: 小金沢
魏の章
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12/16

掌編(程昱伝)      日を捧げる男

~~~兗州(えんしゅう) 東阿(とうあ)~~~



挿絵(By みてみん) 王度(おうど)

「ヒャッハー! この城は俺様の物だーーッ!」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「や、やめろ! いったいなんのつもりだ!」



挿絵(By みてみん) 王度(おうど)

「は? 見りゃわかるだろ。

黄巾の乱で国はガタガタだ。この城にもいつ黄巾賊が攻めてくるかわからねえ。

だったら俺はやりたいことをやらせてもらう。

野郎ども倉を開け! 略奪だ!!」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「くっ…………」



挿絵(By みてみん) 王度(おうど)

「おらおら、そんな所に突っ立ってたら邪魔だ。死にてえのか」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「お、俺も殺すつもりか」



挿絵(By みてみん) 王度(おうど)

「殺さねえよ。アンタはハッシュンとか言う名士なんだろ?

名士を殺したら俺様の名声が落ちちまうからな」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「官吏の身で略奪を働いておいて、今さら名声を語るのか」



挿絵(By みてみん) 王度(おうど)

「うるせえなあ。殺さなくても半殺しにしてやろうか!」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「ひいいっ!?」



~~~東阿 程立の屋敷~~~



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「で、言われっぱなしですごすご逃げてきたわけか」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「お、俺まで殺されては誰も事態を収拾できないからな」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「ほう。収拾できる目算があるのか。

ならばぜひその方法を教えてもらいたいな」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「それは、ええと、その……」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「フン。お前の腹づもりはわかっている。

ワシの知恵を拝借に来たのじゃろう?」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「あ、ああ。お前にとっても悪い話ではあるまい。

王度の反乱を鎮圧すれば、それこそお前の名声も上がるに違いない」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「州じゃ」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「は?」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「州にワシを推挙しろ。

できぬとは言わせぬぞ。腐っても八俊(はちしゅん)サマの一人。

いくらでもつてはあるじゃろう」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「……わかった、手を尽くそう」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「フン。口だけならいくらでも言える。

誓約書を用意しておいた。血判を捺してもらおう」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「よ、用意のいいことだな。……これでいいか?」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「よろしい。すでに間者を放ってある。

王度はせっかく奪った城に入らず、外に布陣しているそうじゃ」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「て、手回しもいいんだな」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「黙って聞け。

つまり王度に城を制圧し守れるだけの兵力はない。

ならば話は簡単だ。ワシらが城を奪い、立て籠もってしまえばいい」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「だがそれこそ我々には兵がいないぞ。

主だった者はみな近くの山へ避難してしまった」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「それも間者に聞いて知っておる。

かえって好都合ではないか」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「へ?」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「お前に一つやってもらいたいことがある。

なに、容易なことだ。舌さえあればすぐにできる」



~~~東阿 渠丘山(きょきゅうさん)~~~



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「ああっ! あれを見ろ!

山頂だ! 山頂に誰かがいるぞ!」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「おおっ。確かに誰かおるな。

あれは……兵士のようじゃ。旗を振っておるぞ」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「わ、わかったぞ! あれは王度に合図を送ってるんだ!

王度が攻めてくるぞ! ここは危険だ!」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「薛蘭殿、それならば城に逃げるといい。

ほれ、王度はこの山にばかり気を取られて城は空っぽじゃ」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「程立の言う通りだ!

皆の者! 城だ! 城に戻るぞ! 俺についてこい!」



~~~東阿城~~~



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「ほ、本当に上手く行ったな……」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「ご苦労。芝居は下手だが声は出ておったな」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「あの山頂で旗を振っていたのはお前の間者か?」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「さよう。3人もいれば十分じゃった」



挿絵(By みてみん) 王度(おうど)

「てめえら! よくも俺様の城を奪いやがったな!」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「お、王度がもう攻めてきたぞ!」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「フン。大事なものなら棚にでもしまっておくのじゃったな」



挿絵(By みてみん) 王度(おうど)

「許さねえ……。ハッシュンだかなんだか知らねえが全員皆殺しだ!」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「お、俺も狙われてるぞ! 大丈夫なんだろうな程立!?」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「負け犬の遠吠えなど恐るるに足らんよ。

ほれ、奴らの背後を見てみよ」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「王度の軍の背後で火の手が上がっている……?」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「ワシの間者がもう一仕事したところじゃ。

ほれ、敵は泡を食っておる。矢でも浴びせてやれ」



挿絵(By みてみん) 薛蘭(せつらん)

「わ、わかった。撃て! 撃てーーい!!」



挿絵(By みてみん) 王度(おうど)

「ば、馬鹿な……ぎゃああああああっ!!」



~~~数年後 兗州~~~



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「ふむ。面白い話だったよ。

それで八俊の彼は約束を守ってくれたのかい?」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「約束通り、州には推挙させた。

じゃがどいつもこいつも奸智に長けたワシを恐れてな、

重用はされんかった」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「君は毒にも薬にもなる男のようだが、

大抵の人は君を毒だと思うだろうね」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「……ならば貴殿はどちらかな」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「君が毒なら僕は器だ。器に容れれば、毒も安全に扱える」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「フン。ワシには貴殿もワシと同じ、猛毒に見えるのじゃがな」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「いいねえ。そんな言葉をこれから先、

僕のそばでずっと囁いて欲しいものだ」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「フン。まるで女に対する口説き文句じゃな。

しかし貴殿のそばにおれば、州よりももっと上が望めそうじゃ」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「そうそう、さっきの話も面白かったが、

その前の夢の話も興味深かったね」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「太陽を捧げ持つ夢の話か?

幼い頃から繰り返し見る、他愛もない夢じゃ」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「だが縁のようなものを感じるよ。

どうだい、夢を現実にして、本当に日を捧げてみては?」



挿絵(By みてみん) 程立(ていりつ)

「何を言っておる?」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「僕に仕えた記念に、名に日を上に加えて、

今後は程昱(ていいく)と名乗ったらどうだい」



挿絵(By みてみん) 程昱(ていいく)

「フン……面白い」



~~~~~~~~~



かくして奸智に長けた軍師・程昱は曹操に仕えた。

彼はその頭脳と悪意をもって、

魏を幾度となく勝利に導くこととなるのであった。

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