第二章 黒陽の神 第五話 墓参り
第五話 墓参り
美琴が亡くなって、もう、三年も経つのね。
九条レイカは、蒼真に聞こえるように言った。
ユズハは、一年だよ。
つい、最近のことのように感じる。
俺は、まだ、自分の無力さが許せない。
蒼真は、手に握り拳を作りながら答えた。
今日は、美琴の前で、蒼真に言いたいことがあって、蒼真と墓参りに来たの。
レイカは、花を整えながら墓に向かって言う。
蒼真、美琴は、ずっと、貴方の器について悩んでいたみたい。職場のロッカーから、器に関する資料が沢山出てきたわ。
俺は、何の器なの?
レイカは躊躇いながら言う。
堕天使。
蒼真は確認する。
堕天使?キリスト教の堕天使?
レイカは、補足する。
キリスト教では、神に反逆した存在として、ルシフェルやサターンと呼ばれるわ。
堕天使は、天界を追われ、地獄に堕ちた。
そして、悪魔達と天界に、戦いを挑んだ。
だから、この前、蒼真が言っていたでしょう?
「どうして魔物達が、自分に跪いたのか」って。
そして、蒼真は、今は、神の力で戦ってるけれど、悪魔の力を使って戦う事も出来るの。
でも、まだ、悪魔の力を使える陰陽師は、討魔庁では、誰一人いないの。
だから、悪魔の力が暴走した時は、誰も止めることが出来ないから、美琴は誰にも言わなかったの。
それに、これ以上、蒼真の身体に負担をかけたくないという理由もあったけどね。
今、使っているのは、神の力だけれど、悪魔の力ってどうやって使うの?
蒼真はレイカに尋ねる。
それは、私にも、分からないわ。
ロッカーの中にあった資料は、今日、段ボールにいれて持ってきたから、あとで、ゆっくり読んで。
頷く蒼真に、無理だけはしないでね。と注意する。
蒼真は、墓石に刻まれた「美琴」の文字を静かに見つめた。風が吹き、線香の煙が、ゆっくり空へ昇っていく。
第五話了




