第二章 黒陽の神 第三話 呪われた巫女
降り続く黒い雨。
その神社には、誰も近付かない。
鳥居は崩れ、御神木は黒く腐り果てていた。
「ここにいるのか……」
蒼真は、静かに境内へ足を踏み入れる。
すると――。
カラン。
鈴の音が響いた。
本殿の奥。
白い巫女服を纏った少女が立っていた。
長い黒髪。
赤い瞳。
そして、その首筋には、黒い呪印が浮かんでいる。
「貴方……見えるの?」
少女は静かに笑った。
だが、その背後には、“いた”。
巨大な黒い影。
無数の顔が蠢き、何本もの腕が、巫女の身体を抱き締めるように絡み付いている。
蒼真は息を呑んだ。
「まさか、お前……」
少女はゆっくりと口を開く。
「私は、“黒陽の神”の器よ」
瞬間。
境内の地面が割れた。
地下から無数の黒い腕が飛び出し、蒼真へ襲い掛かる――!!
黒い腕が、蒼真の足へ絡み付く。
逃げられない。ーー。
その時、蒼真の左胸が光り出した。
母の形見の呪符が、光り出した。
呪符を触り、母の言葉を思い出す。
この紙は呪符といって、悪い霊や化物から貴方を守ってくれるの。
だから、いつも、肌身離さずに持っていてね。
蒼真は、刀を持ち、後ろを振り向き、白い衣装を着た巫女に近づく。
そして、印を結びながら、早九字唱える
臨兵闘者皆陣烈在前!
そして、蒼真は、形見の護符を少女の額に貼り付け、光明真言を唱える。
おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まに はんどま じんばら はらはりたや うん!
巫女の口から人間とは思えない絶叫が響いた。
「アアアアアアアアアアアアアアアア!」
そして、蒼真は、白い巫女に説明する。
「もう、黒陽の太陽は消したよ。大丈夫、安心して。君は、もう、器じゃない。
少女は涙を浮かべながら微笑んだ。
「..........ありがとう」
次の瞬間。
その身体は、淡い光となって、夜空に消えていった。
そして、帰りの車で、九条レイカに、今日の出来事をゆっくり説明する。
第三話了




