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転生幼女の国家級チート図書館~本を読むだけで技術が進化する世界で、私だけ未来知識持ちでした~  作者: はりねずみの肉球
第四章:強制召喚

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シーン3:封じられた歴史と、奪われた余白

毎日投稿チャレンジ挑戦中です。予約投稿も使えばいける、、、はず。

20時に投稿しますので、よろしくお願いします。

扉の奥は、窓一つない石室だった。


机と椅子、簡素なベッド。そして部屋の三方を囲むように設置された、黒光りする鋼鉄の本棚。並んでいるのは、外の吹き抜けにあったような一般的な装丁の本ではない。鎖で縛られたもの、封蝋がされたもの、あるいは異常な魔力を放って自ら微かな光を帯びているもの。


「禁書庫の最深部、『特級危険指定』の書架だ」


ヴァルグラムは私の背後からそう言い、扉の鍵を閉める音を響かせた。


「ここにある知識は、あのグランベルクの惨劇を引き起こした直接の原因となった理論や、それに類する破壊的な設計図ばかりだ。君にはこれらの解析と、より安全な封印術式の構築を手伝ってもらう」


「……随分な厚遇だね」


私は部屋の中央へ歩き出し、一番近くにあった本棚を見上げる。

鎖でぐるぐる巻きにされた一冊の背表紙には、『空間歪曲による超重力圧の発生と制御』と書かれていた。なるほど、確かにこんなものを多人数で「理解」してしまえば、街一つがブラックホールに飲み込まれる。


「君のその『バランスを取る』という発想自体は、王国の管理システムにも応用できる。三十年前の封印は急ごしらえだった。より完璧な『蓋』を作るために、君の頭脳を使わせてもらう」


ヴァルグラムの言葉は、氷のように冷たかった。


「……私の村は」


「君がこの部屋で大人しく研究を続ける限り、手は出さない。だが、もし逃亡を企てたり、外部と情報をやり取りした形跡が見られれば、即座に特務騎士団を動かす。理解したか」


「理屈は通ってるよ。人質交渉の基本だ」


私は振り返らずに答えた。


ヴァルグラムはそれ以上何も言わず、靴音を響かせて部屋を去っていった。外側から重いかんぬきが下ろされる音がする。完全な軟禁だ。


静寂が降りてきた。

部屋の中は、魔石の冷たい光だけが満ちている。


私は胸のポケットからルビを取り出し、机の上にそっと置いた。ルビは初めての環境に怯えたように鼻をヒクヒクさせていたが、すぐに机の木目を嗅ぎ回り始めた。


「さて……」


私は深呼吸をして、部屋の空気を肺の底まで吸い込んだ。


(閉じ込められた。でも、ここは『知識の底』だ)


私は壁一面の鋼鉄の本棚を見渡す。

三十年前、この国の指導者たちが恐れ、隠し、社会から切り離した「未来」の残骸たち。彼らはこの知識を「爆弾」だと思っている。でも私から見れば、これはパズルのピースに過ぎない。


私は手当たり次第に、封印の緩そうな本を抜き出し、机の上に積み上げ始めた。

『気体圧縮と爆発的膨張の相互作用』

『生体魔力の強制抽出と結晶化』

『地殻変動の予測と人工的誘発』


どれもこれも、タイトルだけで物騒なものばかりだ。

私はそれらの本を開き、猛烈な速度でページをめくっていく。前世の研究者としての読解力と、五歳の脳の異常な記憶力が、文字の羅列を『構造』として脳内に組み上げていく。


一時間。

二時間。

三時間が経過した頃。


「……ん?」


私は、ある一冊の本——『錬金術的金属精製の極致』という本を読んでいて、違和感を覚えた。


(おかしい)


ページを戻る。理論の計算式を追う。

この本には、魔力炉の超高温に耐えうる「神鋼オリハルコン」の精製法が書かれているはずだった。グランベルクで魔力炉が暴走したのは、この金属の精製知識が普及していなかったからだと、歴史書にはあった。

でも、この本に書かれている数式は……「途切れて」いる。


「これ、破られてる……?」


私は本を顔の近くまで持ち上げ、製本の根本をよく観察した。

ビンゴだ。

第百二十四ページと、第百二十五ページの間。そこにあったはずの、一番重要な『温度制御の触媒』に関する数ページが、刃物のようなもので綺麗に切り取られている。


「……どういうこと?」


私は急いで別の本を開く。

『空間歪曲の制御』。これも、制御式の要になるページが抜け落ちている。

『気体圧縮の安全弁』。安全弁の設計図のページだけが、黒いインクでべったりと塗り潰されている。


ルビが不思議そうに首をかしげて私を見ている。


私は、背筋に冷たい汗が伝うのを感じた。


(これは……三十年前にヴァルグラムが本を接収した『後』にやられたものじゃない)


本の劣化具合、インクの染み込み方。切り取られた断面の変色。

これらは明らかに、数十年前——おそらくグランベルクの事変が起きる『前』からこの状態だったのだ。


「……意図的だ」


私は積み上げた本を両手でバンッと叩いた。


「誰かが、知識を『不完全な状態』で世の中に流通させていた。強力なエンジンを作る知識だけを与えて、ブレーキの作り方だけをわざと隠したんだ!」


グランベルクの惨劇は、大衆が愚かだったから起きたのではない。

知識の共有システムが暴走したからでもない。

誰かが、意図的に『暴走するように仕組んだ』のだ。安全設計の知識だけを世界から消し去り、技術のバランスを崩壊させることで、十万人の命を吹き飛ばした。


「誰が? なんのために?」


私は暗い石室の中で、目まぐるしく思考を回転させる。

ヴァルグラムではない。彼はこの惨劇を恐れて本を封印した側の人間だ。彼はこの「欠落」に気づいていないのか? それとも、欠落しているからこそ「この知識は危険だ」と思い込んでいるのか。


(……この世界には、まだ私が見えていない『プレイヤー』がいる)


知識による進化を恐れるヴァルグラム。

そして——知識による進化を『暴走させて破壊を望む』何者か。


その時、重い鉄の扉の向こうから、微かな足音が聞こえた。

見回りの騎士ではない。もっと軽い、布が擦れるような静かな足音。


足音は私の部屋の前で止まり。

扉の隙間——床とのほんのわずかな隙間から、一枚の薄い紙切れがすっと差し込まれた。


「!」


私が駆け寄ってその紙を拾い上げる前に、足音はすでに遠ざかっていた。


拾い上げた紙切れには、見知らぬ筆跡で、たった一言だけが書かれていた。


『真実は、地下にある』


私は紙切れを握りしめ、扉を睨みつけた。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!


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あなたの応援が、この世界をもっと広げてくれます。


次回もぜひ、お会いしましょう。

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