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転生幼女の国家級チート図書館~本を読むだけで技術が進化する世界で、私だけ未来知識持ちでした~  作者: はりねずみの肉球
第四章:強制召喚

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シーン1:鉄と夜の訪問者

毎日投稿チャレンジ挑戦中です。予約投稿も使えばいける、、、はず。

20時に投稿しますので、よろしくお願いします。

ヴァルグラム公の視察から十日が過ぎた。

その間、私たちは図書館の稼働ペースを半分に落とした。安全設計の再計算と、村人たちの過剰な熱狂を少しだけ冷ますための措置だった。

それでも、村の風景はすでに不可逆な変化を遂げていた。収穫された麦は村の備蓄蔵に入りきらないほどになり、水車は夜通し力強く回り続け、子供たちの咳は完全に消えた。


これ以上はない、完璧な成功。

——だからこそ、私は心のどこかで「その時」が来るのを待っていたのかもしれない。


その夜。

私は図書館のカウンターの奥で、毛布にくるまって羊皮紙に向かっていた。エルドはすでに帰宅し、館内は私と、足元で丸まるルビだけ。

壁の奥の魔導知識核は、夜になってもうっすらと青い光を放ち続けている。


カリ、カリ、と羽ペンの音だけが響く静寂。

それが破られたのは、深夜の零時を回った頃だった。


——ドォン!!


地響きのような音が、正面の樫の木の扉を叩き割らんばかりに響いた。


「……っ」


私は弾かれたように顔を上げる。

ルビが毛を逆立てて威嚇の声を上げた。


ノックではない。破城槌はじょうついか何かでぶち破ろうとするような、乱暴で敵意に満ちた衝撃。


(来た)


心臓が跳ね上がる。

私は毛布を蹴り飛ばし、カウンターから飛び降りた。五歳の短い足で駆け寄り、扉の隙間から外を覗き込む。


外は、松明の赤い光で真昼のように明るかった。

炎の照り返しの中に浮かび上がっているのは、黒い甲冑に身を包んだ騎士たちの群れだ。昼間にヴァルグラムが連れてきた儀礼用の騎士とは違う。実践用の、傷だらけの重装甲。その数、ざっと三十。

彼らは図書館を半円形に包囲し、退路を完全に塞いでいた。


「開けろ!! 王立特務騎士団である!!」


怒声とともに、再び扉が乱暴に蹴りつけられる。


「……リリア様!!」


図書館の裏手から、血相を変えたエルドが駆け込んできた。彼は着の身着のままで、手に一本のなたを握りしめている。

彼の後ろには、真っ青な顔をしたマリナの姿もあった。どうやら、異変に気づいてエルドの家に走ったらしい。


「エルド、武器をしまって」


私は低く、鋭く命じた。


「でも、あいつら——」


「いいから、しまって。相手は完全武装の特務部隊だよ。三十対一で勝てる理屈がない。それに、彼らの目的は武力制圧じゃない」


私は深呼吸をして、震えそうになる膝に力を込めた。

前世で経験したどんな修羅場よりも、今のこの状況は絶対的に不利だ。暴力という名の理不尽が、五歳の子供の首根っこを掴みに来ているのだから。


「私が開ける」


「リリア様!」


「マリナ、エルドの服を掴んでて。絶対に動いちゃダメだよ」


私は扉のかんぬきに手を伸ばし、重い鉄の棒を引き抜いた。

ギイィ、と音を立てて、樫の扉が内側へ開く。


松明の熱風と、鉄の匂いが一気に流れ込んできた。

先頭に立っていた大柄な騎士が、私を見下ろして鼻を鳴らす。


「貴様がリリア・アーカイブか」


「そうです」


私は見上げる。声は震えなかった。


「夜分遅くに騒々しいですね。ここは図書館です。静かに願えますか」


「減らず口を叩くガキだ。ヴァルグラム長官閣下の命令である」


騎士は懐から、赤い封蝋がされた羊皮紙を取り出し、私の目の前でこれ見よがしに広げた。


「アーベルシュタット辺境図書館の管理者、リリア・アーカイブを、王都・中央図書塔へ『特別研究員』として強制召喚する。同行を拒否する場合、国家反逆罪としてこの村の領民を連帯責任に問う」


エルドが息を呑む音が聞こえた。

私も、内心で舌打ちをした。


(……ヴァルグラム。やり方がえげつない)


私を犯罪者として捕縛するのではなく、「特別研究員」という名目で王都へ引き抜く。そして、断れば村を焼くと脅す。

法治国家としての体裁を保ちながら、私の退路を完全に断ち切る、冷酷なまでに完璧な一手だ。


「……私の荷物をまとめる時間は?」


「五分だけやろう。それ以上は待たん」


騎士は羊皮紙を巻き直し、顎で馬車の方をしゃくった。

黒塗りの、鉄格子がはまった馬車。あれは客車じゃない。護送車だ。


私は振り返り、エルドとマリナに向き直った。


「リリア先生……行かないで……!」


マリナが泣きそうな顔で、私にすがりつこうとする。私はその小さな両肩を、しっかりと掴んだ。


「マリナ。お母さんの病気は、もう大丈夫でしょ」


「う、うん……でも……」


「なら、泣かない。この図書館の本は逃げない。私が教えた理屈も逃げない。ちゃんと畑の土に、水車の羽に、井戸の水に根付いてる」


私は彼女の頭を優しく撫でてから、エルドを見上げた。

彼の目は、悔しさと無力感で真っ赤に充血していた。鉈を持つ手が、小刻みに震えている。


「エルド。……盾になってって言った約束、覚えてる?」


「……はい」


「あの約束、変更。今日からあなたは、この図書館の『管理人』だ。私がいない間、誰にもこの場所を明け渡さないで」


「そんなこと、できるわけが……! 王都の連中が、ここを封鎖しに来たら——」


「来るよ。絶対に」


私はエルドの耳元に顔を寄せ、囁いた。


「だから、時間を稼いで。私が王都の中枢で、この理不尽なルールそのものをひっくり返すまで。……理屈は、通してみせるから」


エルドは唇を噛み切りそうなほど強く引き結び、やがて、深く頷いた。


「時間は過ぎたぞ!」


背後から騎士の怒声が飛ぶ。


「今行きます」


私は振り返り、足元のルビを拾い上げて胸のポケットに押し込んだ。彼らは『私』を連行する命令しか受けていない。ペットの一匹くらいなら見逃すだろう。


夜の冷気が、私の頬を叩く。

松明の炎が揺れる中、私は鉄格子の馬車へと歩き出した。


王都へ行く。

知識を独占し、世界を停滞させている、あの巨大な塔の足元へ。


(待ってろ、ヴァルグラム。あなたの古い天秤、私がぶっ壊してやる)


私は馬車の硬い座席に腰を下ろし、背後の鉄扉が重い音を立てて閉まるのを聞いた。

車輪が軋み、馬車が動き出す。

窓の隙間から見えたアーベルシュタットの図書館は、夜の闇に沈みかけていた。けれど、その奥底では、魔導知識核の青い光が、まだ確かに瞬き続けていた。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!


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評価や感想を入れていただけると、とても励みになります。


あなたの応援が、この世界をもっと広げてくれます。


次回もぜひ、お会いしましょう。

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