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Adonai's Failure  作者: 白河田沼
第三章 裏切りの魔女の代理

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第36話 計画通りの暴走

魔女文字が割れ、赤い霊子が空へと還っていく中で

白い光を放ち、

天使の輪のように白い塔に貫かれていたそれ

一つ一つに魔法が込められた「魔女文字」が空へと消えていく中で、

けれど「魔王」を僭称する魔女(ウィッチ)・・禍根鳥憂喜は見た。

半月のように白い瞳を細め血に満ちた結膜を持つ、白髪の少女

神聖、正しくその気を纏った存在を。



腰まである髪は絹のように白く、して滑らかであり。

瞳孔は蛇のように赤く縦に割れながらも瞳は白く。

そして結膜は朱く染まっていた。

服装は朱いラインの入った白色のセーラー服と、「黒き蛇の王」としての威厳を見せつけるものでありながらけれど楚々としていると感じる程、歪な禍々しさを孕んでいた。

朱く長い爪と赤のハーフカラーを見てけれど理解する禍根鳥である。




なり損ない(フェイラー)が暴走した姿とは思えないあまりにも神々しい白髪と服、そして雰囲気


新たに変わった三つに理解した、禍根鳥である。

目と爪、そして服の一部しか変わらなかった前の暴走とは違う。今回の暴走では髪色と服の全て、雰囲気すらガラリと変わっている。

だからこそ暴走する(ドミネイト)としての本来の力を見られるのだな・・と



なり損ない(フェイラー)の上位種族である彼ら、(ドミネイト)は白髪赤目という特徴的な容貌を持つ。

百年前のかつてはなり損ない(フェイラー)戦線や青水の大地(ゲヘナ)などに存在していた彼らは、魔女の代理と同等以上の強さを持つという彼らはしかし正しく「悪魔」そのものの存在だった。

だからこそと禍根鳥は考える。





()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



半月のように白い瞳を細め血に満ちた結膜を持つ、白髪の少女、

白いセーラー服の少女がけれど瞬間、脚に力を込めた。

瞬時、大地が蜘蛛の巣状に割れる。

少女の姿をした(ドミネイト)、その近くに在った瓦礫の山が粉微塵に砕け一瞬止まると同時に大地に降りそそぐ。

ハーフカラーの赤が翻りその姿を表せばしゅんという音と共に消えた。

そうして(ドミネイト)の姿が現れれば・・







「・・・・・・・・・」

血液が散った、血液が散った、血液が散った

禍根鳥憂喜・・いいや「魔王」を僭称する魔女(ウィッチ)は沈黙の中で理解する。

腕先、そしてその白い衣裳と外套(シュミレーター)ごと袈裟斬りに切られたのだ。

他ならない(ドミネイト)の持つ白を基調とした赤い波紋の剣「鉄の杖」によって

一瞬で距離を詰めた少女の一撃によって裏切りの魔女は深手を負った。





血が舞う中でけれど(ドミネイト)は笑った、()()()()()()()()()







予言の魔女は大原則として鏡の世界(クルシア)の裏切り者、魔女である。

隷属契約に違反する彼の存在はしかしその特性上決して死なない。

第四特性「不死」を潜在的に発動させているからだ。

彼女は生まれた時から死ぬ事は無い体となっている。

「死」の魔力が通じないのも道理なのだ。

魔女にして「魔女」成らざる存在。

なり損ない(フェイラー)の王、

その頂点に立つこの「蛇」という(ドミネイト)を宿す彼女はしかし「魔女」の敵対者、その使徒である。

全知全能の「魔女」の敵対者である(ドミネイト)の使徒たるこのなり損ない(フェイラー)はその性質上「魔女の器」としての資格を持つ。



圧倒的な権能と権限を持つ予言の魔女(フェイラー)は、その性質が故に第五特性「全知全能」を持つに値する存在なのだ。


シアが得た五つの特性も全ては彼女が「魔女の器」であるが故に「蛇」から与えられた物である。

「魔女」の敵対者が「魔女の器」を育てるというこの皮肉な構図はしかしこの(ドミネイト)すら理解していた物なのだ。

「蛇」この存在は元来「魔女」によって作られた造物の一つである。

敵対者として生み出されたこの存在は同時に「魔女」の権能を管理する管理者でもあったのだ。

敵対者が権能を管理する、

・・この皮肉な構図こそ「魔女」の思い描く「計画」その矛盾の正体である。



この矛盾こそが魔女教団が暴食の魔女の代理によって滅ぼされた遠因であった。


今や残党のみを残し歴史の表舞台に立つ事の無くなった。

1000年以上続くこの宗教はしかし齎したのだ、

予言の魔女という存在、その不確かさを

全知全能である「魔女」殿下が敵対者である「蛇」に権能も権限も何もかもを託す。

そんな不完全さはけれど滅ぼされる前の魔女教団は許容できなかったのだ。

その後援者であった元色欲の魔女の代理・・禍根鳥憂喜も同じである。





以上の解釈の不一致から魔女教団は賢人会、延いては鏡の世界(クルシア)への反逆を選び滅びた。

鏡の世界(クルシア)の人口半分以上を占める信者も今は殆どが10年前の「大粛清」に於いて暴食の魔女の代理の手によって処刑されてしまった程である。

教団の残党も今や「魔女」一派に組みする立派な裏切り者、魔女の一員である。

何らかの方法で「死」を超越し、

魔女と成った彼女ら魔女教団の残党とは自分は違うのだと考える禍根鳥である。

己には隷属契約を違えた結果である「死」の魔力を齎す力があるのだと理解していた禍根鳥なのだ。

裏切りの魔女以前に「魔王」を僭称する切っ掛けであるこの力はブロックノイズという七色の魔力の形をしていた。





血液が舞う中で禍根鳥を見てけれど(ドミネイト)は笑った、()()()()()()()()()


袈裟切りにされたその肉体が、

けれどしゅ~という音と白い煙と共に再生すればけれど今度は禍根鳥が笑った。

まるで慈悲深い「魔王」のような笑みを浮かべたのだ。

瞬時、七色の魔力のブロックノイズの剣を手元に浮かばせればけれどそれを握れば・・禍根鳥はこう言った。







「「加速せよ」」

と術式を強化する協調法を用いて再び身体強化魔術を発動させ自身を加速させたのだ。

半分に切断された旧研究塔に足を着け、

今度は対角線上の摩天楼に足を着け

そして最後は空の面を足場にして加速していく。

今回の加速において「魔王」を僭称する魔女(ウィッチ)はマッハ7という音速の七倍の速度に達していた。

そうして、ただ見上げる(ドミネイト)の真上、その空の面を蹴れば・・

瞬時、彼女の目の前に禍根鳥の左右非対称(アシンメトリー)の黒布の目隠しに覆われた貌が在った。







そうして大地を割らんとブロックノイズの剣を振るえば・・


衝撃波と共に土煙が旧研究塔群を満たした。

そんな土埃の中でけれどそれが晴れれば禍根鳥にとって信じられない現実が目の前にあった。

受け止めていた、受け止めていた、受け止めていた

七色の「死」の魔力を湛えたブロックノイズの剣、

それが白を基調とした色合いの「鉄の杖」すら持たない亀裂の入った片の手の平に受け止められていたのだ。

「鉄の杖」を握る手とは違い、

信じられない程に加えられた力に震える片腕を気にせずけれど(ドミネイト)は「女神」のように笑う。

それと同時に禍根鳥が蹴りを一度、二度、三度と見舞えば彼女の貌に土煙が舞う。









「・・やったか。」

そんな言葉が出ればけれど土煙が晴れる。

晴れた先に見えたのは顔の前に亀裂の入った手の平で白い「鉄の杖」を握って防御の形に構えた白髪の(ドミネイト)の姿と、

鉄面皮のような表情をした顔であった。

けれど瞬間、宙ぶらりんだった左の掌の亀裂を禍根鳥に向ければ、その中の瞳が開いた。

そこには蛇のように縦に割れた瞳孔を持ち、

黒い瞳孔を晒し、

赤い瞳を持ち、

黒に満ちた結膜を持つ目がそこには在った。

その蛇のような瞳孔が左の掌の中で細まればけれど(ドミネイト)が「女神」のように笑ったその時・・








握っていたブロックノイズの剣がその瞳に吸い込まれた。








予言の魔女には五つの特性だけでは無い。

固有の魔術がある。

預奪の魔術と呼ばれるその力はしかし、全ての力を奪い与える力である。

特性上第五特性「全知全能」を持たなければ真価を発揮出来ないこの力はしかし暴走さえすればいつでも使える力であった。



五度の暴走の折、予言の魔女は意図的に全力を出そうとしていなかった。


預奪の魔術に耐えられる器では無かった訳ではない。

単純に様子を見ていたのだ。

シアというなり損ない(フェイラー)が「魔女の器」として確実に五つの特性を全て得て完成へと近づく為に

「蛇」の思考が暴走状態に伴って表出している証である。







「・・・成程、そういう事か。」

握っていたブロックノイズの剣が瞳に吸い込まれると共にけれど理解した禍根鳥である。

「魔王」を僭称する魔女(ウィッチ)、彼女は裏切りの魔女である。

裏切りの代名詞とも呼ばれていた彼女の称号、

その由来は魔女歴2988年、「大粛清」での彼女自身の魔女教団に対する裏切りの折鏡の国(クルシア)の一般市民にも有名となった。



彼女は裏切ったのだ、魔女教団という鏡の世界(クルシア)最大の宗教組織を

莫大な富と色欲の魔女の代理という立場を賢人会から得るが為に。

鏡の世界(クルシア)において結果的に彼女が忌まれるのもこれが原因である。

彼女は信用されていないのだ、

単純に全ての魔女(ウィッチ)に心の底から








「奪ったという訳か、少女(わたしたち)の「死」の魔力で出来た剣を。

暴走したお前の思考は未だ読めないがしかし問題では無い。心理防壁か何かを貼っているのだろう。

問題は貴様が「死」の魔力すら吸収しても平然としている事だ。」

粉塵が晴れたその中でけれど禍根鳥は思考を整理する。

仮説としては三つ。

まずは一つ目、予言の魔女としての第四特性「不死」が潜在的に発動しているという事、

して二つ目、第四特性が単純に「死」の魔力を無効化させているという事、

そして三つ目はそもそもが予言の魔女が「死」の魔力すら効かない不死身の体を持つという事、

これら三つの仮説においてはけれど、どれもがあり得ると考えていた禍根鳥である。

だからこそ、(ドミネイト)に対して裏切りの魔女はこう言う。






「・・・・・・・」



「恐らくは貴様、生まれ持っての不死なのだろうな。

断定は出来ないが予言の魔女だ。

魔女の血を得ずとも「魔女の器」という存在にはそれだけの確証がある。

しかし分からない事もあるが今は考えている暇ではない・・かな。」

左手の目をけれど気にする事なく(ドミネイト)はしかし攻撃を与える。

一撃、二撃、三撃と

右手の「鉄の杖」で攻撃を加えていけばしかし白髪の「魔女の器」は「女神」のように笑った。

勝利を確信したのだ、

先程奪ったのはブロックノイズの剣だけでは無い。

「魔王」を僭称する魔女(ウィッチ)から表出していた「死」の魔力を殆ど左腕の目で奪い尽くしたのだ。

今の裏切りの魔女には反撃する余力すらない筈だった。


して右の手の目には与える力がある。目の前の存在に弱体化を与える事など当然のように出来る能力であった。


勝ち筋しか見えないのだ、油断するのも無理は無い。

実際、並みの魔女の代理や「幹部」が相手であればこの時点で白髪の(ドミネイト)が勝っていただろう。

「死」の魔力を与えられたプネウマや首絞めの魔女、彼ら幹部にも限界はあるのだ。

けれどだからこそ、そうは成らなかったのだと理解した(ドミネイト)である。







「・・・・・・・・・」

土煙が晴れたその先、驚きに目を開く白髪の(ドミネイト)である。

そこには居たのだ、ただ頬にかすり傷を負った禍根鳥憂喜・・「魔王」を僭称する魔女(ウィッチ)のその姿が。

少しだけ衝撃に首を傾けた白髪二つ結びの左右非対称(アシンメトリー)な黒布の目隠しをした野太い声の少女、

裏切りの魔女である禍根鳥憂喜がしゅ〜という音と微かに頬から立ち上る白い煙によって頬の傷が再生され無傷でそこに居るだけであった。

ただ彼我の圧倒的な単純な力の差・・その壁がそこには在った。

してブロックノイズの剣が七色の「死」の魔力から生成されれば・・




赤が舞う、赤が舞う、赤が舞う

血液が空気に触れ次第に朱く染まって行く中でけれど白髪の(ドミネイト)は見た。

死神、七色の「死」の魔力の剣を持った野太い声の少女がそこに居た。

またしても咄嗟に「鉄の杖」でガードした為

致命傷はぎりぎり避けている物の自身の体が袈裟斬りに切られたのだと理解した白髪の(ドミナイト)である。

しゅ〜という音共に白い煙が上がり傷が再生されてなお白髪の(ドミネイト)は油断しなかった。

全ての力を振るっても勝ち得ない存在にけれどまるで「女神」のように(ドミネイト)は笑う。

瞬時、(ドミネイト)の姿が消えた。







「逃げたのか、いいや違う。上か」

慈悲深くも野太い声で禍根鳥がそう言えば、

瞬時、白い光が孔の空いた雲の中で空に流れ星のように落ちた。

けれどその時、ソニックブームと衝撃波と共に天高く土煙が上がった。

「旧研究塔群」その殆ど全てを土煙が満たせばけれどそれが晴れる。

土埃が晴れたその先にけれどそこには在った。

絶望的なその光景をけれど白髪の(ドミネイト)は見た。


流れ星のように落ちた「鉄の杖」による突きの一撃

・・それを片手の手の平で無傷で受け止めた「魔王」を僭称する魔女(ウィッチ)がそこに在った。


再び横たわる圧倒的な実力差にけれど白髪の(ドミネイト)はまるで「女神」のように笑う。

それを疑問に思えばけれど(ドミネイト)が拮抗する形で浮かび上がっていた体を少し捻る。

その隙間に瞬時、斬撃が飛んできた。

その圧倒的な速さと威力の一撃

それをブロックノイズの剣によって上方に弾き返せば、

体を捻り身を翻して空に浮かび体勢を直そうとしていた(ドミネイト)の頬が切れ、

半分になった白い摩天楼の残骸が更に逆袈裟斬りに真っ二つとなった。






・・後ろで土煙が上がり、摩天楼の残骸が崩れる。

先の飛ぶ斬撃、

それを土煙越しに放った者に対してけれど理解していた禍根鳥である。



白髪の(ドミネイト)が空に浮かびその場を離れ、

斬撃の主の隣に浮かぶ。

赤いハーフカラーの髪が風によって掻き上げられ自然と落ちる。

(ドミネイト)の頬がしゅ〜という音共に、

白い煙を上げて再生する事すら禍根鳥には気にならない。

ただ目線の先にいる斬撃の主を見て、

動かなくなった仔羊の面をした魔女教団の残党の首と、

十字の瞳をした七十二字騎士団の首を持つ鈴と葵の首をを見て、慈悲深い「魔王」のような笑みを浮かべて禍根鳥は言った。









「お帰り「暴食」、「傲慢」。」

それは圧倒的な実力を持つ慈悲深い「魔王」からのあり得ない筈の労いの言葉であった。





暴食の魔女の代理と傲慢の魔女の代理、彼らが戦ったのは首締めの魔女やプネウマだけては無かった。

魔女教団の残党も一緒である。

彼女らは影に潜む形で奇襲をしてきた。

おそらくは禍根鳥にも自身達が来る事を知らせていなかったのだろう。

熟練の魔女(ウィッチ)なども含めた代行会の魔女(ウィッチ)達には帰ってもらった。

事態の報告に行かせたのである。



今頃は遺灰城で賢人会や国際議連相手に報告と援軍の準備をしている筈である。

魔女の代理は大半が出払ってなり損ない(フェイラー)戦線の維持などをしているだろう事は同じ立場である二人には想像に容易かった。

だからこそ、二人は魔女の代理が来る事には期待していなかった。



それでも尚、報告を優先させたのは他でも無い。


七十二字騎士団のなり損ない(フェイラー)魔女(ウィッチ)ごと葬ろうとする彼女らのやり方に少しだけ鈴は関心していたのである。

葵は気にする事なく「明星の杖」を取り出していた。

殲滅していたもののその古風ながら斬新な手法に興味を惹かれたのだ。

けれど魔女教団の残党、その仔羊の面に気付く。

彼女達が「魔女」一派に落ちてしまった事を




「成程、その仔羊の面。魔女教団の者か。

連絡も遣さず来ていたというのか、「幹部」でもある私が対処していると言うのに。

・・よほど予言の魔女(フェイラー)の存在が認められないと見える。」



「・・・これは驚いたな。奴らがここに来たのは、お前の指示では無いのか。

悪趣味な企みの一環かと思ったぞ、口だけでは無くな。

今から10年前、魔女暦2988年の「大粛清」を主導したのは当時八歳であり、「魔王」でもあった俺だったからな。」

鈴の軽い言葉にけれど葵は七十二字騎士団の首を捨てながらも白ずむ。

暴食の魔女の代理は最強の魔女(ウィッチ)として10年前の「大粛清」の際に

鏡の世界(クルシア)国民の半数以上、

訳50億人もの魔女(ウィッチ)を殺したのは彼女なのだ。

「魔王」という立場は賢人会の傀儡としての側面を持つ。






当時八歳の鈴が請け負うには余りに大きすぎる業を背負わされた事をしかし、葵は気の毒に思っていた。

当然だ、

命令とは言え国民の半数以上を手にかけたのだ。

当時八歳の幼い少女が何の影響も受けない筈がない。

記録上、躊躇いと油断から鈴はこの時点で五度も命を落としている。

魔女(ウィッチ)の基本能力、

輪廻転生による復活は記憶の実感の喪失という代償を必要とするもの、

彼女はこれまで十回以上命と等価値の物を魔女の血に捧げて他人事の人生とその記録を復活の回数だけ経験しているのだ。



それで精神を壊していない今が痛ましいと思うほど葵からすれば鈴は憐れだった。

復活の折、代償として失った物は余りにも多かったのだ。

けれどそんな最強の魔法使い(メイガス)の哀れみを気にせずに裏切りの魔女は言葉を紡ぐ。





「お前に罪はない。

あの時のお前は言葉通り幼く、

だからこそ、賢人会の傀儡そのものだった。

色欲の魔女の代理ですら無かった当時の私からでも分かりやすかったぞ。」




「その機会をくれた当時色欲の副代理でもあり、色欲の魔女の代理でもあったお前には感謝しなければな」




「皮肉はよせ、魔女教団は潰されるべき存在だった。

予言と「計画」に従わない以上、結局はこの一言に尽きる。」

慈悲深くも野太い口調で告げられた言葉に、

しかし白髪の(ドミネイト)は魔女教団の残党の首をその辺にぽいっと転がした鈴の隣に浮かび、

沈黙しながらも二つの事柄を理解する。

国民の半数以上にも及ぶ魔女教団という仔羊の仮面をした連中が10年前、賢人会との予言の解釈不一致によって論争に発展し、結局は暴食の魔女の代理である鈴の手によって粛清の憂き目にあった事を

鈴がそれを心の底では気にかけていながらも魔女教団の残党を手に掛けた事を

だからこそ、白髪の(ドミネイト)は静かに浮かぶ。

己には関係がないと判断したのだ。




「そこの(ドミネイト)は自身には関係が無いと判断したようだ。」



「そういう事もあるさ、口だけでは無くな。

しかし、そろそろこの冗長で退屈な話し合いも終わらせるか。「魔王」を僭称する魔女(ウィッチ)、禍根鳥憂喜よ。」

腐った指によって編まれたような装飾をした「蝕指の杖」、その月蝕を模した装飾を向けて鈴はそう言った。

その指した場所である影からある者達が浮かび上がった。

仔羊の面をし、

白い衣装を着込んで白い外套を羽織った魔女(ウィッチ)

首締めの魔女やプネウマ、

十字の瞳を持つ七十二字騎士団のなり損ない(フェイラー)魔女(ウィッチ)達が禍根鳥の後ろに姿を現せばけれど禍根鳥はこう言った。






「"人類の平和の為に"、お前達を殺し尽くそう。」

と慈悲深くも野太い声でけれど「魔王」のような笑みを浮かべてこう言った。

「黒き蛇の王が帰還せし時、諸王は蘇りその威光を己が力によって鏡の国に知らしめるだろう」という予言者ゼガリアの言葉の実現を目指しているように、

半月のように白い瞳を細め血に満ちた結膜を持つ、白髪の(ドミネイト)には思えて成らなかった。

そうして受けて立つと言わんばかりに(ドミナイト)は「女神」のように笑んだ。



それが「魔女」の「計画」通りとも知らずに

新たな暴走の姿を気にする必要は無い。

いずれ見慣れ、

いずれ忌む事と成るのたがら

〜人助けの魔女〜

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