第36話 四人目のマスターピース
「我が子達よ、あとは少女に任せなさい。」
赤子の笑い声、どろりとした気配に慈悲深くも野太い声、
そんなある種相反するような混沌とした状況で歯に浮くようなセリフを言葉にしたのは禍根鳥憂喜、「魔王」であると乃瑠夏は知っていた。
乃瑠夏は見ていた、目の前の「魔王」その姿を余すことなく全て
黒い衣裳を着込み黒い外套を羽織った、
白髪二つ結びの左右非対称な黒布の目隠しをした野太い声の少女、普段の彼女の姿を現すのであればそれが正しい、
処刑対象の元色欲の魔女の代理である彼女はいつもそんな姿をどろりとした気配をさせながらどこでも無遠慮に晒していた。
しかし今の彼女は違う。
そう判断出来る分かりやすい物がただ一つあった。
プネウマ・・ではない。
彼の不思議生物は既にどこか去っている。
何処に行ったかけれど嫉妬の魔女の代理である、井伊波乃瑠夏にも理解が及ばなかった。
判断出来る分かりやすい物、
その問いの答え、それは目隠し、黒布の目隠しである。
目を隠すように付けられていた左右非対称の黒布の目隠しは、今貌を覆ってはいなかった。
握られていたのだ
右手に、血印の輝きと共に。
右手にやんわりとした力で握られているその黒布の目隠しが腕に奔った赤い光に少しだけ包まれつつけれどあった。
腕を迸る赤い光が腕の先に吸い込まれるように止まり、
どろりとした気配が赤子の笑い声と共に止めばしかし目に映ったのは「魔王」の貌、顔であった。
その貌はいっとう美しく、けれどどこか恐ろし気なソレである。
して服は衣裳としてローブを着込みつつもロングコートを羽織りながらけれどどちらも白で統一された服装であった。
透き通るような白髪に澄み切った桃と赤の混じったきっかりとした瞳を持つ野太い声の少女、それが今の彼女であると乃瑠夏は定義した、そして同時にこうも定義する。
ついに「魔王」が本気に成ったのだと
「・・・・・・今更、本気に成ったのであれば殊更死ね、赤子殺し。開け、門よ。」
その振り下ろした手刀をけれど振り上げる。
手刀、力を込めたその手指にはある魔法が掛けられている。
常識知らずにもけれど冷たい口調でけれどそう言った間に掛けられた魔法は魔女がよく知る魔法であった。
空間転移魔法、『開け、門よ』という詠唱と共に空間を割り、目的の場所へとつなぐその魔法が先の一撃に使われていたのだ。
手指全てにその魔法を応用し放たれたその攻撃はたったの一撃だけで全てを断絶させる。
そして乃瑠夏は今、詠唱していた。
乃瑠夏は反語法を述べることなく魔法を発動させることが出来る。
だからこそ通常詠唱は破棄をした方がいい・・というのが一般的な考えだ。
詠唱を解さない分インタバールが減り技の速さも密度も上がるからだ。
先の「幹部」、四人の首を断ったのも詠唱破棄による一撃であった。
だからこそ敵を多く殺せる。
より早く、
より効率的に、
より圧倒的に敵を蹂躙できる。
当然だが「幹部」四人に対して用いた魔法は全てが詠唱破棄による魔法であった。
だがそれをしなかった・・速さよりを何かを選んだ、その理由は一つだけである。
詠唱する事による威力の増加である
通常、詠唱しないよりも詠唱する方が威力が上がるのは術者が詠唱するというデメリットを「契約」として課しているからである。
「死」を代償としたその魔法の発動方法はしかし圧倒的な利益と利潤、圧倒的な術者本人の強化となる。
何せ守らなければ死ぬのだ利益が無い訳がない
・・これこそが契約破棄以前に魔女が学ぶ基礎技術の一つ「詠唱契約」の全容である。
この「詠唱契約」と空間転移魔法が高位の魔法であるが故の圧倒的な暴力その合わせ技こそがこの魔法の真骨頂であった。
だからこそ、「魔王」は死ぬ・・・そう乃瑠夏は考えていた、
立ち上る煙、
匂う血の香り、
纏う死の気配、
これらの三つからも「魔王」は死んだと乃瑠夏は判断していた。
けれど同時に判断する・・それは早計であった・・・と
「・・・ふふふ成程、そういう仕組みか。」
「やはり、無傷か。どうやった赤子殺し、単純な空間転移魔法の応用による相殺ではないだろう。」
煙が晴れ、けれど視線を向ければツーっと頬から血を流しながらも「魔王」が立っていた。
手に持つ剣のような「死」の魔力がしゅーっと煙を上げピキっと罅割れる中でも、
それを気にしないように涼しい貌でけれど乃瑠夏にそう話しかけた。
慈悲深い微笑みと共に告げられた現実破りなその言葉に常識知らずにも冷静にけれど禍根鳥に対して言葉を返す乃瑠夏である。
乃瑠夏は理解していた、
目の前の「魔王」が必ず先の一撃を生き延びる事を、
目の前の魔女がシューっという音と煙と共に頬の傷を再生させる事を、
目の前の処刑対象の元色欲の魔女の代理が「死」の魔力を剣の形に変えてガードする事を、
だが同時に理解していた事もある乃瑠夏である。
このままでは「魔王」に勝てないと
「無論だ。分かっているじゃあないか。
けれど防げた理由を態々教える事もないだろう。
どうあっても貴様では出来ないだろうしな「嫉妬」よ。」
「そう冗長に喚くな、いきなり小物のように成られても困るだけだ。・・しかし次は無い、開け、門よ。」
瞬時、杖を顕現させ振り下ろせば空間が割れる。
大地が裂け、空気がひび割れてゆく。
手の平に込めた力が空間転移魔法その応用の力に依るものであるとしかしどこか小物のように饒舌に成った「魔王」を常識知らずにも煽りながらも乃瑠夏は知っていた。
空間転移魔法、その応用は難しい。
空間を割り、目的の場所へとつなぐこの魔法は使える物はごく限られる。
その理由の一つが巻きこまれた際のデメリットであった。
割れるのだ、
空間ごと体が粉々に、
そして粉々になった体は粉々のまま向こうに送り届けられるかあるいは別の場所へと流れつくことになるのだ。
まるであの時のクリミナのように
そしてその空間転移魔法を乗せた斬撃の最高速度はマッハ3を優に超えるという・・まるっきり人外の放つ魔法そのものであった。
しかし・・
「・・・・・・」
ただの一閃でそれは切り裂かれた、
そう他ならない禍根鳥憂喜という「魔王」の振り上げられた「死」の魔力の剣による一撃によって、
沈黙しながらけれど乃瑠夏は、はっきりと理解していた。
そうして「魔王」は乃瑠夏に言葉を掛ける。
「ははは、悪くない、
千年物の力だけの事はあるな「嫉妬」よ。
だが少女には届かん、そう示した筈だこの様にな。空間転移魔法の応用実に見事だったがな。」
慈悲深くも賞賛とも侮蔑ともとれるようなその声にしかし反応する者はこの場には居なかったと「魔王」は瞬時に理解した。
いいや悟ったと言った方が正しい。
なにせそこには居なかったのだ。
嫉妬の魔女の代理、井伊波乃瑠夏が、
瞬時に辺りを見回しけれどある魔力操作と情報解析の合わせ技による索敵を用いずとも・・把握する。
嫉妬の魔女の代理、彼が居るのは他ならない・・・・
「後ろだ。」
そう後ろなのだと「魔王」は認識した。
用いたのは所謂「小細工」認識阻害魔法だ。
認識を阻害するこの魔法はしかし「魔王」自身に用いられた。
「小細工」はある認識を阻害したのだ
「魔王」自身の五感の認識その限界を
その瞬間にある事が起きたのだと乃瑠夏は理解した。
視界が回る、
視界が回る、
視界が回る、
ザンという音と共に、一撃によって乃瑠夏の視界が回ればけれど「魔王」は見た。
嫉妬の魔女の代理、井伊波乃瑠夏の首が飛んだ
という自身が引き起こしたその事実を、
「魔王」の笑みを浮かべながら、
桃と赤の混じった瞳で慈悲深くも思える眼差しで見た。
まるで母親のように
■
白い、白い空間の中私はぱちり目を覚ました。
目を数度瞬かせ、身を勢いよく起こし辺りを見回して拳をぐぱぐぱと握り開いて自身の調子を確認する。
私の名前は井伊波乃瑠夏、井伊波乃瑠夏である。
悪魔の名を継ぐ嫉妬の魔女の代理であるのが私である。
突然だがこの目覚めた場所にも見当がついている。
自我空間、
魔女の血を飲めば到達できる欲求と超自我の狭間と呼ばれる空間で目が覚めたのだ。
どうしてかそれは理解している。
私は殺されたのだ、
それもあの赤子殺し、「魔王」禍根鳥憂喜に。
人に殺されるのは全く初めてなのだがけれど死んでみた今思う事があった。
「大した事ないですね。
こんな白い空間に一人だと言うのに思い出す事も少ないですし、死というのは存外つまらない。
自我空間という魔女の血を飲めばいずれ到達できる場所にいるのに何の感慨も湧きません。」
思えば生前は色々な物に巻き込まれていたと冗長にも語りながらけれど私は考えた。
冷たい赤い瞳を持つ肩までの短い黒髪を持つ少年、
どうにも私を示す言葉はこれであるらしいと私は知っていた。
これはメタ的に捉えているように思えるかもしれないが友人から聞いた言葉である。
なんでもなり損ないがそう認識しているのだという。
見た目を記号化される事に不快感が無い訳ではないがけれどやるべき事が私にはあった。
昇り初めの下弦の月のような瞳をした「何か」。
そんな彼女をこの空間に来れば見つけ無ければいけないのだ。
ただこの世界から出る為に・・では無い。
ただ自分自身が蘇る為に
「何か」について分かる事は少ない。
肩までの短い髪だとか、
赤い瞳をした少女だとか何でも自分の分身か親類なのではないかと思う程自身に似ている特徴をけれど私は知っていた。
だからこそ私は辺りを見回しながら歩く。
見回しながら歩く。
見回しながら歩く。
見回しながら歩く。
自我空間という欲求と超自我の狭間、自身の中とも言えるそこでやる事はいつもそれだった。
突然だが、私は死んだ事がある。
人に殺されたのではない、自殺だ。
儀式において血を使ったり自身の身を捧げる事は強くなる事にとても大事だった。
私のような人間であれば尚の事である。
私の種族魔法使いは小憎らしくてずる賢い種族である。
故に自身の利益の為に自殺もすれば他者の利益の侵害の為に殺人をも犯す。
それら全てを”人類の平和の為に”と生きてきたのが「魔女の血」を受け継いだ魔法使いであった。
そんな中でも私はいっとう強かったのはけれど言うまでも無い、しかしその強さには理由があったのだ。
私はいつも探していた。
昇り初めの下弦の月のような瞳をした「何か」を死ぬ度に
初めは苦労もしたし苦心もした、
蘇る為とは言え仕方の無いことだと情けないながらも私はそう感じていた。
なにせその見た目はある者と同じなのだ。
そう他ならない私の█、█████と
だけれど私は見つける、
いつものように、どこにいても、何をしていようと
必ず見つけ出して殺すそう”人類の平和の為に”
そして”なり損ないを取り戻し「魔王」と「幹部」を皆殺しにする為に”
・・そんな事を考えていればしかし見つけた、意外とあっさりと。
昇り初めの下弦の月のような瞳をした「何か」、█████という私の█の姿をした化け物を、白い大地で。
「久しいな、██」
そっけない言葉と共にただの手刀で首を跳ねた。
「███████████」そんな睦言とも怨嗟の言葉ともつかない言葉のあとに突っ立ちぼうっとこちらを見つめていた「何か」の首を跳ねた、ただ手刀でその柔らかな首を跳ねた。
そこに何のカタルシスも無ければ、怒りも悲しみもありはしない。
ただ”人類の平和の為に”
そして”なり損ないを取り戻し「魔王」と「幹部」を皆殺しにする為に”役立てるという達成感があっただけだった。
・・そうして█████の姿をした「何か」は死んだ
首を断たれて、
身体をビクンビクンと痙攣させ、
大量の血を吹き出して白い大地を真っ赤に塗り替えながら死んだ。
周りにある同じ「何か」の死体のように、死んだ。
白い光が「何か」の死体から発されれば・・
その時、私は目を覚ました
■
「死」の魔力とは魔術的な死を齎す魔力である。
契約の破棄の最終段階、契約破棄によって生まれるその魔力はしかし魔術的な「死」しか齎せない。
だがその魔術的な「死」が差すものは一つ、肉体の「死」そのものである。
つまりは「死」の魔力は肉体を殺すのだ、当たり前のどこにもあるような「死」のように
「だからこそ、「嫉妬」。
いいや嫉妬の魔女の代理、井伊波乃瑠夏は死ぬはずだった。
「死」の魔力はそこいらにあるような当たり前の「死」のように人を殺す。
触れれば引きずられる底なし沼のように、その者を「死」に誘い喰らい尽くすからだ。
だからこそ、お前は油断したんだ「嫉妬」の魔女の代理。」
風に揺れる白い髪の狭間、桃と赤の混じった瞳が映していたのは嫉妬の魔女の代理、井伊波乃瑠夏の死体である。
その死体には首が無い。
その死体には命が無い。
その死体には魂が無い。
三つの無いものずくめの中、けれど乃瑠夏は死んでいた、
それを見ながら慈悲深くも冗長に語るのは「魔王」である。
透き通るような白髪に澄み切った桃と赤の混じったきっかりとした瞳を持つ野太い声の少女、
処刑対象の元色欲の魔女の代理、
そして「魔王」を僭称するただ一人の魔女、禍根鳥憂喜である。
「魔王」は立っていた、髪を靡かせながら乃瑠夏の死体をその桃と赤の混じった瞳で見つめながら、
井伊波乃瑠夏の前で、
嫉妬の魔女の代理の前で、
悪魔の「名」を継ぐ魔法使いの前で、そうして井伊波乃瑠夏は死んだ
だからこそ「死」の魔力を手指のように動かし死体に触れさせる。
肉体を取り込む為に、死体を自身の「手駒」にする為に用いるそれはしかし覆っていた。
第13地区を、”蛇の小道”そのものをほぼ全て。
研究塔をも覆い呑み込むその力は「安楽死」の力を持つ安楽の地獄そのものであり、
尊厳の地獄を起こしていた時に用いていた「尊厳死」の力を持つ「死」の魔力そのものである。
尊厳の地獄には「尊厳死」の魔力が込められていた、
いわゆる触れた生物に自然な状態で死ぬ魔力である。
対してこの「安楽死」の魔力は触れた対象に苦痛を与えずに死を与える。
文字通りの安楽死を齎す魔力である。
そんな力が「死」の魔力として表出していた
”蛇の小道”を覆い尽くさんほどに
「煉獄」の跡地を呑み込まんばかりに
第13地区15区画17番地という冗長にも思える名を持つ区画を丸ごと噛み砕くように
躰を包みこむオーラのように「魔王」の躰から、どろりとした赤子の笑い声と共に
嫉妬の魔女の代理の死体を手に入れる為に
そうして井伊波乃瑠夏はその死体を「魔王」に永遠、利用され続ける事になる・・・
筈だった。
その時、死体がどくんと脈打てば、
その時、転がった生首の目がぎょろりと開けば、
その時、「安楽死」の魔力がサーっと波打つように乃瑠夏の周りから、瓦礫の山から、”蛇の小道”から消えれば、
音が止む。
瓦礫の山が魔力に還っていく。
死体に魔素が取り込まれ魔力へと練り上げられていく
ふわりと断たれた首と胴が空に浮いていきそれの周りに繭のように魔力があつまる。
・・ドクンと脈打てばけれどその時、色が変わった。
色が変わる。
物が変わる。
世界が変わる。
割れるように・・では無い。
紫が透き通るように染まってゆく、
「・・・やはり、始まったか。
消失した筈の四人目のマスターピースは貴様だったようだな「嫉妬」。」
慈悲深い声でけれど淡々と事実を述べるようにただそう告げた、
息すら呑んでいたかも知れないけれどそんな「魔王」を誰が責められるだろう。
そこに在ったのはあらゆる事実の鍵、
次なる事象の種、
更なる世界の欠片の結晶。
十二ある世界の欠片その一人そのものなのだから、それその物が「復活」する光景なのだから。
「視せてみろ「嫉妬」よ、その四人目のマスターピースとしての力を、全て!」
そうしてけれど「魔王」は言った、
「死」の魔力で形作られた剣を処刑人のようにだらりとした手指で持ち、
けれどキっと剣身を乃瑠夏に映るように持ち変えながら、
慈悲深い「魔王」の笑みを浮かべながら母のような口調でけれど戦士のように力強くそう言った。
そうしてその瞬間、慈悲深い笑みと共に「魔王」は見た。
手指に冷たさが奔る。
掌に冷たさが奔る。
手腕に冷たさが奔る。
腕から血飛沫が吹き荒れる錯覚を覚えばしかし「魔王」は理解した。
自身の腕の先が無い事に
ブシャアと血飛沫が扇状に瓦礫を勢いよく赤く染める。
腕の先、正確には二の腕の先から冷たい痛みと途方もない喪失感を感じる。
瞳を見開き、腕の先を咄嗟に抑えた。
その時、「魔王」は理解した。
嫉妬の魔女の代理、井伊波乃瑠夏によって腕を切断された事に
けれどメリメリと肉が盛り上がるような音の後、
白い煙が腕の先から上がれば
魔素が骨を創り、肉を繋ぎ、皮で覆い尽くす。
肉体の再生、それを瞬時に成したのだと禍根鳥は自分自身ではっきり理解していた。
ぐぱぐぱと手指を開き
そして握ってもしかし何も問題はない、
そう判断できる程の再生能力が魔女である彼女にはあったのだ。
そうして目の上に居る繭を目に収める。
そうして目の上に居ない繭を目に治める。
そうして目の上に同時に居て居ない存在を目に修める。
桃と赤の混じった瞳に目に収めた、白と紫、あるいは紫と白の烈日のような繭を、
まるで未来を見る為のように・・その物を見た。
その「繭」が解ける瞬間をただ見た
「・・・・・・・・・」
神聖にも思える朝日のような瞳の形をした光輪を戴き、
肩までの短さの白髪に白と紫の烈日のような瞳を持つ少年を、
紫のラインの奔り朝日のような瞳があしらわれたボタンを付けた黒い衣裳を身に纏い、
同じく朝日のような瞳の形のボタンがあしらわれた紫のラインが奔る黒い外套を腰に巻き、
同様の太陽のような瞳の装飾と紫のラインが奔る黒いスラックスは履いて黒いブーツを履く少年を、
音の無い音の中、
色の無い色の中、
物の無い物の中、
世界の無い世界の中、ただ沈黙しつつ在る魔法使いを、
四人目のマスターピースである嫉妬の魔女の代理がそこにただふわりと空に浮かんでいた。
慈悲深い「魔王」のような笑みを浮かべ、
ローブを着込み、ロングコートを羽織った白ずくめの服で前に立ち、
どろりとした赤子の笑い声のする気配を漂わせ「死」の魔力をオーラのように真と居ながらながらただ「死」の魔力で形作った剣を握り、
そして嫉妬の魔女の代理を慈悲深い瞳で見つめる一人目のマスターピースである「魔王」のその前で。




