第24話 干渉
チーンという音と共にけれど副代理の居る階に着いたことをシアは察した。
理解したのだその雰囲気から、
彼らの容貌については詳しい、
新しい記憶達から思い出している知識があるのである。
傲慢の一族、
傲慢だが能力が高くリーダーシップを発揮する。人望あり、十字の瞳に金髪金眼が特徴
憤怒の一族、
常に色々な事に怒る一族、なんだかんだ一番常識的で倫理観がある、赤髪赤目が特徴
嫉妬の一族、
一番人間的な一族、一番感情豊か。直感が優れており共感能力が高い、紫髪紫目が特徴
暴食の一族、
一番人間に関心が無い種族、自分にも興味がないので何かと誰かに仕えがち、黒髪黒目が特徴
強欲の一族、
一番がめつい一族、金は優先するがそれ以上に金で買えない物、命や友情を優先、茶髪に琥珀の瞳が特徴
怠惰の一族、
基本的に怠惰であり、何を成すのにもめんどくさがっているが、人を助ける努力や怠惰に過ごす為の努力は怠らない種族、緑髪金眼が特徴
そして、色欲の一族、
最も倫理の欠如した一族であり、
禁呪を研究する一族。
誰にも嫌われるが誰にも好かれがちな矛盾した精神性と美貌で知られている種族、白髪に対照的な黒布の目隠しが特徴
・・・これらの見た目であろうとシアは考えていた。
そしてしっかりと理解する、
彼ら五人が居る場所に着いた事に
魔女の代理よりは弱いけれど確かな実力を持つ者達が居るフロアについた事に
「死は何も生まないぞ」という言葉についてシアは何も思わない。
どこか愛おしいようにすら思えるその言葉にしかし彼女は反応できないのだ。
つまらない、
つまらない、
つまらない、
この重なった言葉は本当につまらないのだ
鈴が与えてくれた言葉であるのも理解している。
この言葉が乃瑠夏の言葉を重ねた特別な物である事も理解出来る、
そしてシア自身が計画の為に利用した事も自覚はある。
けれど、尊重出来ないのだ。
この言葉という存在そのものが
「蛇」は少しだけ好きになった
三島や愛伽にも感謝している。
「幹部」については分からないし、鈴の事も嫌いでは無い。だけれどどうにも興味を抱かないのだ、この鈴の重なった言葉については
副代理には期待している
彼女達の強さに興味があるのだ。
国家を転覆させる事の出来る魔女の代理が率いる代行会という魔女の集団の中でも第二位の実力を持つと言われる彼らの実力が純粋にシアは楽しみなのである。
五人しか今はこの階に居ない物のけれどシアは彼女達を評価していた。
説諭書、死刑囚が知る最後の訓戒であるそれについてもシアは守るつもりでいる。
「契約」である以上守らなければ死ぬから・・だけでは無い。
シアにも思惑がある。
それとこの書物には彼女自身、違反する事が何も無いのだ。態々三島や愛伽と言った人間二人を殺す理由にもならない。
鈴によって与えられた「拘束」についても破るつもりは無い
解く事が出来るかは知らないが
解けば少なくとも「魔王」を敵に回さないといけなくなるからだ。
最悪、鏡の国を敵に回し代表会議の名の元に処刑される恐れすらある。
副代理とも敵対する畏れがあるのだ
面倒事は避けていきたい。
「幹部」については未知数だ、
サラが所属している事と入る条件が三つある事以外は殆ど分かっていない。
だからこそ、「魔王」を僭称する魔女である禍根鳥憂喜を探す為に見つける必要があろうと対処するのが難しい。
それを率いる「魔王」を僭称する魔女本人や七十二字騎士団であれば尚の事だ。
そう思えば鈴がエレベーターから降りながらけれど言葉を話す。
「サラの館にいる「SILENCE」の魔女、紫藤藤乃に俺から直接魔女の代理用の秘匿回線を用いて連絡した。
諜報部「SILENCE」は賢人会直属の諜報機関である。
故に存在が秘匿されているからこその処置だ。」
「・・・・色々と大変だね。本物の「魔王」様も、
胡散臭い連中と絡む必要があるなら私は魔女の代理なんかには成りたく無いかな。」
「・・・・お前が魔女の代理になる事は無いよ、向いているのを探すとすればお前は傲慢に成るだろう、口だけでは無くな」
しかし鈴は知っていた。
目の前の存在が副代理でも無く傲慢の一族でも「名家」の者でも無く、存在不詳の存在である事、
その出自ですら不確かである事、
だからこそ諜報部「SILENCE」が調べても彼女の生まれは何も分からなかった。
彼女の居た人間の世界、
現実世界、その諜報機関を遥かに超えるその諜報力を持ってきても何も成せなかったのである。
他ならない「SILENCE」に彼女が会ってすらいるのにだ。
彼らの情報は少ないが一つだけ知っている事があった。
彼らは決して出会った者の情報を一つたりとも取りこぼさないという事である。
賢人会の命令しか聞かない。
賢人会以外誰の言葉も聞こうとしない。
誰の役にも立とうとしない・・この三つを確信していた鈴からしてもそれは明らかであった。
してその「SILENCE」から知らされていた言葉が鈴には一つあったのだ。
「掟破り、お前は「予言」通りの存在であれば最大最強のマスターピースである可能性が高い。
それも「魔女の器」と呼ばれる全知全能である「魔女」の依代になる可能性があるのだ。口だけでは無くな」
「・・・・・成程、それで何か続きはあるんでしょう。」
「端的に言おう、お前が我々の知る通り予言の魔女であればお前はこの旅の最後死ぬ事になる。」
まるで五人しか居ない副代理の雰囲気を気にせずに
もう無くなった筈の何かの目を気にする事なく、
降りたエレベーターが閉まろうとする中で
自信の表情を氷のように凍てつかせてそう、鈴は言った。まるで今の鈴の心情を表すようにバンとエレベーターの扉が閉まった。
けれど私は《開く》ボタンを押した、さも当たり前のように、そしてこう言った。
「いいよ、私が死ぬ定めなら、生きる為に死んでやるさ。」
と毅然とした態度で言えば、けれど開いた扉の先にそこには副代理、彼ら五人の姿がそこに在った。
魔女文字を浮かび上がらせてけれど私は足を進めた。
◻︎
副代理、彼らは代行会のNO.2である。
折り紙付きの実力を持つ彼らはしかしここに二人以外勢ぞろいしていた。
憤怒の副代理、赤神泣
高く結った一つ結びに赤い髪に赤い瞳をした少女
嫉妬の副代理、井伊波海
肩までの揃った黒髪に赤目の少女
暴食の副代理、蝕指音
吸い込まれるような黒髪と黒い瞳を持つ楽器ケースを持つ少年
怠惰の副代理、怠編殖眠
粗雑さを感じさせるような短い緑髪に金瞳の少女
色欲の副代理、禍根鳥屍花
ホログラム越しに見える白髪に対照的な黒布目隠しの少女
・・とサラの館の玄関ホールのソファの前にホログラム越しに一人だけだが殆どが勢ぞろいしていたのだ。
あの時の私が「ナレーション風に言っちゃった!」と言うと同時に代行会や副代理について述べたように
私はこの情報を昨日、
第二特性である情報の「収集」と「集積」を起動し魔女文字を使った時から知っていた。
あるいは昨日、「色欲の街」に入って第二特性を用いた時から知っていたと言っていい。
それこそが新しい記憶達をも利用して情報を「取集」し「集積」しつつ得られた私が彼女達の容貌を殆どそっくりそのまま当てられた理由である。
鈴と乃瑠夏の一族は厳密には違う物のけれどそれは予想の範囲内であった。
それ程に目立っていたのだ、この街での彼女らは。
裏切りの魔女と呼ばれた禍根鳥憂喜には劣る物のけれどそれでも異質な力を感じた。
ある種の気配とも言うべきそれにけれど私は一つだけ疑問が頭を過ぎ去った、だからこそ、そのまま口にする私である。
「魔女狩りの夜で鏡の世界に来たであろう人達とその前かた居た大罪七家とで分かれているな、
七大貴族と言われた君達大罪七家ならともかく何かについてすら聞き及んでいない「名家」である赤神、お前は何をしに来たのですか・・って鈴が言いたそうにしてるよ。」
「無論だが、ここに来たのは君を殺す為・・では無い
だから君に答える事はありませんよ、
「魔王」を僭称された魔女でもある蝕指鈴殿・・では無くなり損ない」
魔女文字を浮かばせながらも髪を片手で掻き上げつつ赤神の言葉を聞きけれど私は一つの事について振り返る。
鈴の振りをして話を振りながらもけれど振り返る話はただ一つ、サラについてだ。
一つ目、魔女としてまだ生きている事、
二つ目、禍根鳥によって首締めの魔女に変えられてしまった事、
三つ目、禍根鳥の手下、いわゆる「幹部」として彼女の元にいるであろう事。
どうして魔女と「契約」を交わし、心臓の譲渡とそれによる隷属を引き換えにしてまで魔女の血を得たのか私には思い当たる事が在った。
これら二つをサラが得ようとした可能性である
血印
魔女の血に込められた力と技術の結晶であり魔女の血そのもの、それら単体が魔女の血として機能を個別で持つ。民間伝承のようなものでごく一部の名家と大罪七家全体でしか用いられておらず、民間で正式に取り入れられたのもここ百年であった
故に民間に売り払えば億を超える値が付くらしい。
魔女刻印、
魔女の代理を受け継ぐ為の専用の血印である。
それらには絶大な力が込められており譲渡され代々受け継がれてきた価値を持つ鏡の国同様、千年以上の「神秘」、その結晶である。
・・・・これらの内どちらかをサラは得ようとしたのだ。
自身の欲望の為ではない、
当然のようにきっと”人類の平和の為に”
それこそが人々や嫉妬深い女神にすら知られていた聖書の中の存在の中の、サラだったからだ。
けれど屍花はホログラム越しにこう言う。
『サラの目的について今分かる事は一つ。
血印を得る事でしょう、魔女刻印を得るなどサラには重すぎるでしょうからね、第一、彼女にそこまでの力もあるか疑問な程です。』
『彼女の魔力を得る力は純粋に魔女の血の物、
だからこそそれを強化する何かが欲しいのでしょう。
それも少女達副代理程度の実力者の血印が
所で色欲の街の現状については知っているでしょう。
色欲の一族は今混乱の最中にあります、魔道具差し押さえや資産凍結もされているのです。
実質的に副代理である私や、あの方までもこの街を率いる事すら出来なくなってしまいました。』
『そして色欲の一族が魔女暦2998年8月13日、
なり損ないである君が第二特性でかる情報の「収集」と「集積」を使いこの街を飲みこむまで丁度三日目の朝7時半に全ての色欲の一族が処刑されるのです。
それが終われば一時的に賢人会が「色欲の街」を統治する事でしょう。』
「それが現状なんですね、驚きました屍花さん、
貴方がここに来ることをホログラムでとは言え選ぶだなんて、念話越しとは言え綺麗な声と顔をどうも。映像魔法を用いているのでしょう。」
『映像魔術ですよ、なり損ない。
そして私がここに来る事を許して下さっている「魔王」陛下に改めまして感謝を』
「気にする必要はない、
これは全て「計画」の通りなのだから、
そしてこれは「予言」を進める手段でもあるからな。
「色欲の街」の外れに来たのはこれが目的でもある、これから動くであろう賢人会の動向を注視しつつ秘密裏に動く為にこの状況が必要だったのだ、口だけでは無くな」
静かな鈴のそんな言葉を聞けばけれど私はこう言う。
「逃げて。」と・・ある気配が在ったのだ。
私を見ていた何かがここに来たという気配が、
魔女文字に引っかかりすらしないその気配が
じっと定められるような目をした、
けれど禍根鳥のどろりとした気配より尚上回る、迫りくる不気味な気配が在ったのだ
そう、何かの気配が
「 」
七つの目をこちらに向け、
けれど立ち上るように在る何かが白い仔羊の面をしてそこに居た。
そうして「こんにちは、皆さん、初めまして」と何かが私の前で頭に残るように言葉にすれば、
彼の存在を見上げていれば
けれど瞬時、魔女文字が消え白く長い手指が這い出て空間を割った
そして、私は一人目覚めた、教会の廃墟で
出会いとは唐突であり、
けれど誰にも予想出来ない
そしてそれを避ける事は出来ない。
〜人助けの魔女〜




