第24話 「死」の魔力と暴走
契約の破棄
その代償は「死」である。
それは鏡の世界誰もが知るものであり常識である。
魔術と魔法の世界において、魔女蔓延り魔法使い跋扈するこの世界においてこれらを交わすこと自体がある種の習慣であり慣習なのだ。
その段階は六種類に分けられる。
命令解消:魔素と魔力の生成と吸収量の増加
命令撤回:魔素と魔力の生成と吸収量の更なる増加と魔法の威力の倍加
命令破棄:魔素と魔力の生成と吸収量の飛躍的な増加と魔法の威力と精度の倍加
契約解消:上記の効果の増加と「死」の魔力の生成可能性の算出
契約撤回:更なる能力、魔力の向上と魔術と魔法の精度と威力の制限解除「死」の魔力の生成準備
契約破棄:能力の向上と更なる倍加と進化、そして「死」の魔力の生成、である
六つの段階から成るそれらにはある違いがあるのだ。
それは当然「契約」のメリットの増加とデメリットの減少である
それぞれ名目の違いはあるものの「契約」である。
これらの目的はただ一つ魔素や魔力の増大と倍加である。
契約破棄の代償は「死」である
このリスクこそが圧倒的な利益と利潤、圧倒的な術者本人の強化に繋がるのだ。
新しく思い出した記憶達もおそらくはこれなのかも知れない。
「あの時」に見たような物理的な断頭、死ではなく、精神的な死、記憶の非所有化である。
他人事のように思うことで確かにその時の、その時いた私自身は「死んだのだ」
自身の記憶を自身の記憶と思えないが故に
自身を失うが故に
故にこの現状は何かの「契約」の原因であると言えるのだ。
「死」からの復活だけでは記憶の非所有化にまでは至らないと考えての仮説であったのだが・・・
「・・・・・・」
赤子の鳴き声と共に目を開けばそこには七色の光を放つブラックノイズ、飴と見紛う程丸いそれがあった。そして少女は、禍根鳥は示した。
「死ね、「契約」と「死」を得るために、我々と世界の為に。」
「人類の平和の為に・・・・・
予言の魔女。」
そう当たり前のことを、「死」への誘惑と堕落への道筋を
■
予言の魔女という概念について、我々は思い知らされた。
我々があまりにそれに無知であることを
我々があまりにそれに白痴であることを
我々は思い知らされたのだ、
魔女が始めから失敗していたことを
■
「死ね、「契約」と「死」を得るために、我々と世界の為に、人類の平和の為に、予言の魔女。」
「・・・・・・・」
少女は見る
七色のブロックノイズを
飴と見紛うその魔力は「契約破棄」によって造り出された「死」の魔力である。
故に、これは「死」そのもの。
これを呑み込めば彼女は死ぬのだ。
ヒトとしてもニンゲンとしても他ならないなり損ないとしても、
・・・最も彼女はどの分野にも含まれていない、彼女は正真正銘の・・・
「人殺し、選べ、「許されざる生」か「許されし死」か。」
「・・・・・・・」
少女は見る
新たに用意された選択肢の元少女は見る、いや見た。
己の両の手を、手の平のしわを、しわの中の微生物を、見た。
しわの微生物が魔素に変われば、手の平に亀裂が奔る
光が手の平に落ちれば
瞳が赤く染まれば、光が視界を覆い尽くした
少女を朱が包み、大地と空を繋げた