教室移動
昭夫と瑠璃が教室に戻ると、女子生徒が学校から支給された寝袋を抱えて廊下に立っている。
三年四組の彼女たちは、昭夫と瑠璃の教室から男子が出ていくのを待っていた。
生徒たちは学校の異世界転移により寝食を共にしており、一年生は学年全員でまとまって、広い体育館を卓球台などで仕切って寝ており、二年生と三年生は一組・二組、三組・四組に別れて、奇数教室で女子、偶数教室で男子が寝ている。
つまり四組の女子は、三組の男子が教室を空けるのを廊下で待っていた。
「昭夫が寝袋を持ってきたら、食事に行きましょう」
「ああ、今日は久々に歩き回ったから腹が減ったぜ」
「私は廊下で待っているね」
瑠璃は昭夫が寝袋を教室に取りに行っている間、廊下で待っているバトミントン部の陽子と雑談していた。
バトミントン部の部長は三年四組で学級委員長、三組の学級委員長である瑠璃とは、級長会議などで顔見知りだった。
「瑠璃ちゃんにばかり危険な仕事させて、今日は本当にごめんなさい」
「気にしすぎだよ。調査団のメンバーで囮なんて役割は、手芸部員の私しかいなかったし。弓道部の静香さん、バトミントン部の陽子ちゃんが組めば、攻守が完璧だって昭夫も言ってたでしょう」
「でも実際、弓矢が飛んできたらラケットで叩き落とせるかしら……やったことないし、自信がないわ」
「大丈夫! 私だってモンスター相手に囮役なんて未経験だったし、男子もバットやキックで、モンスターと戦った経験はないよ。たぶん静香さんも弓で獲物を射抜いたことは――、なかったと思う」
「なんで一瞬、間が空いたの?」
「あの人なら、経験してそうかなって。腕に鷹とか乗せて、山で狩りとかしてそうじゃない?」
「あーっ、あるある。鷹狩りのイメージ!」
陽子と瑠璃が膝を叩いて爆笑していると、三年一組の春菜と静香が食事を終えて教室に戻るところだった。
「瑠璃と陽子は、まだ食事を済ませてないのか?」
「え、ええ……私は四組なので、三組の男子が教室を空けるまで廊下待機なんです」
静香に問いかけられた陽子は、バトミントンウエアの短いスカートの裾をモジモジしながら答える。
奥ゆかしい仕草だが、たくし上げられたスカートのせいで純白のパンツが丸見えだ。
「そうですか。一組は教室移動がありませんので、私と静香さんは、先に食堂で食事してから戻ったんですよ」
「私は、昭夫待ちです」
「瑠璃さんと昭夫さんは、仲がよろしいですね」
「昭夫とは、幼稚園からの腐れ縁なので」
「私と会長もそうですのよ。でも、お二人のような関係にはなれませんね。あの卓造は、いつもあんな調子ですから」
「会長は賢そうだけど、少しズレてますよね」
「あの卓造は私がサポートしないと、すぐに脱線してしまいます……はあ」
(副会長と会長も、かなり仲良く見えるけど?)
春菜は『では、ごきげんよう』と頭を下げると、静香と一緒に一組の教室に消えた。
すれ違いに三組の教室から出てきた昭夫は、廊下の傘立てに座っていた陽子の下半身に目を奪われる。
「おい、ミントン(注:陽子)」
「は、はい! ……なんでしょうか?」
「パンツ丸見えだぞ」
「あ、ああ、これは見て良いパンツなんです」
陽子は見たければどうぞと言わんばかりの態度で、傘立てに片足を乗せた。
「パンツに見て良い悪いはねえだろう! パンツはパンツ、見てるこっちが照れくせーって言ってんだよ」
「あーっ、そ、そうですよね。パンツ見て良いなんて、わ、私の都合ですものね。昭夫くんが、見たいかどうかは関係ありませんでした」
「見たくねえとは言ってねえだろう。ミントンのパンツを見たいか見たくないかって聞かれたら、そりゃ8:2で、8みてーよ」
「あ、じゃあどうぞ」
「だからッ、どうぞじゃねえだろう! そういうことじゃねえんだよ! 隠せよ! 恥じらえよ! そういうもんだろうが……おい、瑠璃」
「なに?」
「メシ行くぞ」
髪をかき上げた昭夫は『そうじゃねえんだよな』と、捨て台詞と陽子を廊下に残して瑠璃と食堂に向かった。
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