24. イベント
――――――――――自分が連続傷害犯であることを、三条和希は白状した。
牧ノ瀬覇華をにらみつけながら、どこかゆらゆらと不安そうに揺れる光も感じるその切れ長な目。
「……それでいいですか?」
これ以上は言いたくないと言わんばかりに、和希は覇華を見る。
「うーん……わかった、それで」
「覇華さんがなぜ今日のことを知ったのか、教えてください」
「そっちが、何がなんでも聞きたいのね。
わかった……」
なにか諦めたような口調になると、覇華は、自分の斜めがけカバンを手元に引き寄せた。
その中から、ごく小型のノートPCを取り出す。携帯電話でデザリングを設定する。
「最近、関西一円の色んな武道の道場でさ。女子の部員をしつこく勧誘してくる、AV?か何かの会社がいるっていう話があって。その会社のこと、調べたのね」
「AV業界に、女子格闘家、っていうジャンルはあるみたいですね……」
「あ、知ってた?
そしたら、裏サイトが出てきたみたいで……ええっと、カズくん。見て大丈夫?」
「……見ます」
和希の言葉に覇華はうなずき、目指すサイトを開いた。
……すぐに、目を背ける。
「無理しなくても」
「……見ます」
慶史も、そっと横から覗き込んだ。
(うっ……)
エロサイト、というか……違法感がぷんぷんするサイトだった。
凌辱系専門を謳っている。
本物と銘打たれた、荒いレイプシーンの写真がまき散らされている。
画質が綺麗なので、作られたものかもしれない、けど……
綺麗な女性2人と並んでそのサイトを見ることへの気恥ずかしさもあって、慶史は少し、画面から、距離を置いてしまった。
「えと、で、ここんとこに、企画が立ち上がってたのね」
覇華は、画面のソコ以外の部分を手で蔽い隠すようにしながら、目指す箇所を、あごで示して見せた。
文字はさすがに近づかないとわからない。慶史は画面に寄る。
『美人格闘家リアル凌辱企画第1弾!
京都に暗躍する「レイプ魔狩り」を逆に狩れ!
テコンドー界最強の女を、男のチカラで屈服させられるのか!?
撮影動画は5月配信予定!!』
見事なまでに罪悪感を払拭するノリのあおり文句。
そしてそのイベントの日付は、今日のものだった。
「やっぱりこういうことか……」和希は、息をつく。
「あの……どういうことです?」慶史は、頭がくらくらする思いで、覇華に尋ねた。
「この企画主は、少なくとも、連続傷害事件の犯人がカズくんであることを知っていた。
知って――――イベントと銘打って、カズくんを」
「三条さんを襲って、撮影しようとしたってことですか?
だって犯罪ですし、普通AVとか、どんな名目だって、契約した女優さんを撮るものなんじゃ……」
そう言いながら、慶史の脳裏に以前ニュースになっていた、AVへの出演強要問題を思い出した。
女性をだまして強要するというケース。
AVというものが、あくまでもアンダーグラウンドに押し込められているがゆえに、悪い人間が暗躍するのなら……
女性を襲う<イベント>、そんなものさえ、成り立ってしまうのか……?
「ここで、当日の参加者募集ってあるでしょ?
たぶんあの人たちは、このサイトを見て応募したんじゃない」
「全裸で縛って、橋の上から吊るしてさらしものって<企画>だったみたいですね」
自分のことなのに、しごくさらっと三条和希がいうのが、妙に慶史には恐ろしかった。
◇◇◇




