クレア・アルヴァ
黒炎竜ファフニールの一件から数日後、第五騎士団の日常は平穏を取り戻していた。
ファフニールの鱗は高価な素材として売却され、その利益は隊の装備更新に充てられる予定だ。部下たちは明らかに以前より忠誠心を見せてくれるようになった。
ある日の午後、執務室でくつろいでいたら、廊下から威勢のいい声が聞こえてきた。
「久しぶりだな、新入りの第五団長さんよ!」
扉がノックもなく勢いよく開かれ、一人の女性が入ってきた。
金髪ショートヘアに凛とした瞳、動きやすそうな軽装鎧。背中に担いだ大剣からは研ぎ澄まされた殺気が漏れている。
第三騎士団団長、クレア・アルヴァ。この国でも屈指の実力者であり、王都でもっとも恐れられている女傑だ。
「……クレアさんですか、来客ならまず挨拶ぐらいしてくださいよ」
「あん? 堅苦しいこと言いやがんな、シルヴィア殿よ」
彼女は豪快に笑いながらソファに腰掛けた。
「聞いたぜ? お前が一撃で黒炎竜を落としたって話。あたしゃ最初『ああ、また上の連中の盛った噂だな』と思ってたけど……本気で本当らしいな」
「まさか……私はただの一般ピープルですよ。そんなこと出来るわけないじゃないですか」
「そうかそうか。なかなかに面白い奴みだいだな」
「それはどうも。ところで今日は何が目的でここまで?」
「なに、噂の騎士団長様を見にきただけだ」
「そうですか」
「というわけで、遊びに行くか!」
「いえ、今日はそういう気分ではないので」
「そう固いこと言うなよ。騎士団同士で交流を深めるのも仕事のうちってもんだろ?」
「それもそうですね。しかし、今日は体調が悪くてですね」
「絶対嘘だろ。まあいい、乗り気じゃない奴を誘ってもしょうがない。新しく出来たメイド喫茶に1人で行くか」
「メイド喫茶! 私も行きます!」
「体調は?」
「ちょうどいま治りました! なので私も連れていってください!」
「現金な奴だな…まあいいか、じゃあ行くぞ」
「はい!」




