02-01.成長期
十二歳になった!!
七歳のある日、フォルトマグナ王国の第一王子、ピース殿下の婚約者となった私は、以来勉強漬けの日々を送った。
なる気もない王妃のための教育だなんて、正直ウンザリしそうなものだけど、案外とこの生活も悪いことばかりではなかった。
この世界の知識は魔王復活のためにも役に立つ。貴族社会の知識だって欠かせない。書物や講師からしか得られない情報もあれば、逆にそれらでは得られない生の情報というものもあるからだ。
私は積極的に繋がりを持つことにした。中でも特に仲良くなった令嬢には、王子殿下の側付きを斡旋したりもした。
打算的であれ、それ以外であれ、私には多くの友人たちが出来た。きっとこの人脈は将来私を救ってくれるだろう。
「ダーリャ一人いれば十分です!」
「酷いよ、ダーちゃん……」
「あ! いや! ちがくて!?」
「そうよ。酷いわ、ダーリャ。フララを泣かすなんて許せないわ」
「言葉の綾ですぅ! そんなつもりは無かったんですぅ!」
「「ぷっ♪」」
「あっ!? 酷いです! 騙しましたね!?」
「騙しただなんて人聞きが悪いわ。ねえ、フララ」
「ねぇ~♪ ベティ様~♪」
「また二人で結託してぇ~! ズルいです! ダーリャも仲間に入れてください!!」
「「ど~しよっかな~♪」」
「はうぁっ!?」
唐突に胸を押さえて蹲るダーリャ。
「尊い……尊いです……ベルフラ……フラベル……なやましい……」
何かボソボソ呟いてる。
「そろそろ修行の時間でしょ、ダーリャ」
「はい♪ お任せください♪」
「ベティ様も?」
「ええ。参加するわ」
今日は珍しく予定が空いてるから。
最近は殆ど参加出来なかったから、今日はガッツリ修行を付けてもらいましょう。
「フララにもすっかり抜かされてしまったわね」
「えへへ~♪ 頑張ったよ~♪」
今のフララは、日中の魔術・体術修行に加え、毎晩魔力修行も行っている。既にその魔力量は私を遥かに越えている。
私の方が二年も先に修行を始めたのに。
王妃修行を始めてからは、週に一度しか許されなくなってしまったのだ。
回復薬を使って強引に体力を保つにも限界はある。翌日の勉学に影響が出るからと、制限されるのも致し方ない。
それに魔力修行をやりすぎると睡眠の質が低下する。毎晩気絶して眠りにつくのだから当然だ。
だからか、私の身長は十六歳のダーリャより少し低い程度だ。同い年のフララとは頭一つ分くらい違う。
ちっちゃくて可愛いフララも大好きだけど、とうぜん心配にもなる。
だからって辞めてどうなるというのか。それで魔王に殺されてしまえば意味がない。
もちろん身体の成長は大切だ。実際ダーリャは去年あたりから魔力修行の頻度を下げている。もう魔力は十分伸ばしきったし、今は体作りの方が大切だからと、健全な生活習慣を確保する方針に切り替えた。
それからダーリャの身長はぐんぐん伸びている。この調子なら、また私を突き放すのもすぐだろう。
「今日は思い切って外に出てみましょう♪」
外に? 庭で修行する程度なら珍しくもないじゃない?
「しっかり掴まっていてくださいね♪ 二人とも♪」
私とフララを抱きつかせ、腰に手を巻いたダーリャが勢い良く床を蹴った。
「わわ!? 飛んでる!?」
「飛行魔術ですって!? 大発明じゃない!!」
こんなの初耳よ!? この世界に飛行魔術なんて無かったのよ!? まさかダーリャが作ったの!?
「お静かに♪ 騒ぎになってしまいます♪」
そのまま窓から飛び立つ私たち。
今回ばかりは流石のダーリャも根回しが不十分なようだ。
いやアカンでしょ。
「待って待って! せめてメイド長に!」
「ダーリャが殺されてしまいますぅ!!」
ダーリャったら、何故かメイド長にだけは頭が上がらないのよね。お父様にだって平気で意見するくせに。
「大丈夫です♪ 旦那様からはご許可を頂いております♪」
「私の分も?」
「もちろんです♪ 今日の休暇はそのためのものですよ♪」
「ならなんでメイド長には黙ってるのよ」
「後で旦那様が一緒に叱られてくださるそうです♪」
お父様……やっぱりダーリャに甘すぎよね……私にもか。なんだかんだと、こういう機会も与えてくれるし。
ありがとう♪ お父様♪
「ダーリャって、もしかしてお父様の弱みでも握ってる?」
「そりゃぁ一つや二つや三つ……はっ!? 違いますよ! それで脅して言う事聞かせてるとかないですからね!?」
あるんかい。
「そろそろ話しなさいよ。ダーリャはいったい何者なのよ」
「ふふふ♪ 良い女とは謎が多いものです♪」
「あっそ。ならいいわ」
「えぇ!? もっと聞いてくださいよぉ~♪ 可愛くおねだりすれば口も軽くなるやもしれません♪」
「別に。そこまで興味ないもの」
「そんなぁ!?」
ふふ♪ このやり取りも何度目かしらね♪
「フララ。めいっぱい可愛くおねだりしてあげなさい♪」
「ダーちゃん……(ウルウル)」
「ぐはぁっ!?」
やばっ!?
「きゃあっ!?」
飛行魔術の制御が乱れ、急激に高度が低下する。
「ふんぬらば!!」
謎の掛け声と共に、グインと急加速が掛かって再び空へと舞い上がる。
「危ないじゃない!!」
「ダーちゃん!! 今のはビックリした!!」
「二人のせいです~!! も~! 飛行中は大人しくしててくださいよ~!!」
やっぱりまだ作ったばかりの新魔術なのかしら。私も後で教えてもらうとしましょう。
「まったく。ダーリャはドジなんだから本当に気をつけなさいよ」
「この前も壺割ってたもんね。ダーちゃん」
「またなの? これで何十個目よ?」
「ううん。ベティ様。もう三桁越えてるよ」
おいこら。
「最近では旦那様も割って良い壺を置いてくださるようになりました♪」
「甘すぎでしょ!? なんでクビにならないの!?」
やっぱ誰かに脅されてるんでしょ!?
「ふふ♪ 墜落したくなければその話は忘れましょう♪」
やっぱそうじゃん! 絶対脅してるじゃん!!
「ダーちゃん居なくなったら皆泣いちゃうよ……ぐす……」
あかん!? フララが勝手に泣き出した!?
「居なくなりません! ダーリャはベルベル様もフララも纏めて娶ると決めたのです!」
ちょっ!? 速い速い!! スピード上がってる!?
「ダーちゃん……」
「フララ♪」
「おいこら! 止まれ! 止まりなさい!! どこまで行く気よ!? 良い雰囲気作ってる場合じゃないわよ!?」
なんか下青いんですけど!? どう見ても海の上なんですけど!? すっごい速さで流れていくんですけど!?
ここどこよ~~~!?




