01-08.悪役令嬢の暗躍
「あはは♪ 君たち面白いね~♪」
お茶会の最中も、ダーリャの茶々入れは止まらなかった。
どうも王子殿下相手に嫉妬しているらしい。そんな私とダーリャの掛け合いをピース殿下は漫才でも観るかのように楽しんだ。
「はぁ~~~~♪ こんなに笑ったのは初めてだよ♪」
社交辞令よね? この殿下、年がら年中笑ってそうな感じだもの。
「ピース殿下にはいらっしゃられますか? 幼馴染のような側付きは」
「いないね~♪ うちはもっと年上ばかりなのさ♪ だから二人が羨ましいよ♪ 帰ったら僕も奏上してみようかな♪」
「良いことかと」
どうせなら可愛いメイドちゃんでも侍らせて、その子と結婚すれば良いと思うの。
婚約破棄イベントの相手がメイドっていうのは意外と新しいかもしれない。……単に説得力が無さすぎるだけね。男爵令嬢だって不自然なくらいなのに。
いえ。でも。メイドって意外と高位貴族の子がやったりもするものなのよね。行儀見習いとかで。王子の側付きなら、それこそ公爵家のご令嬢だってありえなくはないのかも。
ふふ♪ 良いわね♪ この作戦♪
やっぱり悪役令嬢らしく暗躍しないとね♪
「殿下。差し出がましいことと存じますが、従者の選定をわたくしめにお任せいただけませんか?」
「あはは♪ 早くも独占欲かい?」
この王子は少々素直過ぎるから、優秀な子についてもらいましょう。
「いいよ♪ もちろん♪ 君の選んだ者を側に置こう♪ そうでないと可愛い可愛い許嫁に嫉妬されてしまうからね♪」
今日のところはそういうことにしておいてあげましょう。
「感謝いたします。殿下」
しめしめ♪ 私の計画は完璧だぜ♪
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「てなわけなのよ。ダーリャ」
「なるほど!! 流石はベルベル様です! ダーリャは信じておりました!!」
嘘おっしゃい。さっきまで泣きながら縋り付いてきてたじゃない。まるで今すぐ私が嫁入りしてしまうかのように。あんたは父親か。
「ダーリャにこの大切な任務を委ねるわ。ピース殿下を口説き落とせそうな優秀な高位貴族の令嬢を探し出しなさい。殿下の従者にして将来の婚約破棄に繋げるわよ」
「らじゃ! 必ずやお役目を果たしてご覧に入れます!!」
「私も面会するわ。相手が決まったらお茶会の準備も進めて頂戴」
「委細承知! では行ってまいります!!」
ダーリャはすぐに飛び出して行った。
我ながらだいぶ無茶を言った気がする。一介の侯爵家メイドに何を頼んでいるのだろう。
何故かダーリャなら出来ると無条件で信じちゃうのよね。ダーリャもダーリャで、無理だとは一言も言わなかったし。
まあいいわ。ダーリャにどこまで出来るのか探る意味でも今回の企みは重要よ。あの子の正体を私は未だに知らないんだもの。実はどっかの貴族令嬢だって可能性もあるのだ。流石に公爵家や侯爵家ってことはないだろうけど。
だからってただの伯爵令嬢に今回の任務が務まるとも思えない。つまりその辺りのラインが探れる筈だ。
ダーリャが、このアルレティア侯爵家内でなら、それなりの権限を持っていることは確かだ。今回は更に踏み込んで、他家にはどの程度の影響力があるのか探ってみるとしよう。
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「ただいま戻りました♪」
随分早かったわね。一晩と経ってないわよ。
「成果は?」
「明日のお茶会をセッティングしてまいりました♪」
早すぎるでしょうが……。王子だって一週間空けてくれたのに……。
「候補は三名です♪ 特にお勧めなのが~……」
ペラペラと三人の詳細な情報を話し始めた。
……マジだ。……こいつマジでやりやがった。
「結構よ。なんなら三人とも囲えないかしら」
「先ずは一人ずつです。ベルベル様。徐々に増やしていくとしましょう♪」
そう。そういうものなのね。
いいわ。ダーリャに任せましょう。
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首尾よく王子の下へ美少女メイドを仕込むことに成功し、ホクホク顔のベルベティア。
しかしその行動は、ベルベティアの思惑とは全く異なる評判を広めることとなります。
王子と婚約するなり、自身の手の者を王子の周囲に配するベルベティアの手腕は、多くの貴族たちにとって感心に値するものでした。
何故ならそれは、意欲的な王妃としての常套手段であったからです。齢七つの少女が即座にそれを実行したという話は、あっという間に広まっていきました。
王子の身の回りを自身の息が掛かった者たちで固めるこの行為は、王子の周辺を掌握すると同時に、圧倒的な度量を示すものでもあったのです。
そこには幾つものメリットがあります。
王子の周りに敵派閥の者たちが近づく隙を無くす。
将来自身が王子の子を成せなかった際の保険。
側室の選定権を握るという意思表示。
王子の周辺における情報網の構築。
王子との縁を繋ぎ、令嬢を側室候補として迎えることで、他家に貸しを作る。
などなど。
ベルベティアはまだ知りません。婚約破棄が増々遠ざかったことを。逆に前向きであると示してしまったことを。王子がメイドと恋に落ちたとて、それは正妻のあてがった側室を受け入れたことにしかならないことを。
はてさて。
この愛らしき悪役令嬢の暗躍は上手くいくのでしょうか。
あやしき有能メイドの思惑と正体は。
地獄の修行を経て、聖女はどう変わってしまうのか。
まだまだ謎は深まるばかりです♪




