02-02.サバイバル生活:一日目
「どこ行ったのよーー!? ダぁーリャぁ~~~~~!?」
私は必死に走り続けた。
ここはどこかの森の中。側には誰も居ない。側付きとはなんだったのか。あいつら、やっぱり解雇してやろうかしら。
ダーリャがスパルタなのは今に始まったことじゃない。今だってどうせ何処かでは見ているのだろう。
だからって、いきなり森の中に落っことすことないじゃない。私は何の装備も道具も持っていない。庭で修行するくらいのつもりでいたから当然ながら軽装だ。
そもそも私には実戦経験すらないのだ。基礎的な体作りはしてきたし、一通りの魔術体術は叩き込まれているけれど、こんな魔物たち蔓延る森で生き延びられる力量なんてある筈もない。
しかもこの森、鬱蒼としすぎて昼間だというのに夜のように薄暗い。正直足元すらおぼつかない。こうして走れているだけでも誰かに褒めてもらいたいくらいだ。
「グォォォォォォオオオオオ!!!」
「ひぃっ!?」
なに今の!? どっから聞こえたの!?
あかん!! 方向すらわかんない!! たぶん結構近かったのに!
私はガムシャラに走り続けた。走って走って、当てもなく突き進み続けた。
そのうちに、前方から光が差し込んだ。私は迷わず走り続け、勢い良く飛び込んだ。
「へっ?」
あ、やば。
そう思った時には遅かった。身体は真っ逆さまに落ちていく。岩場がぐんぐん近づいていく。全てがスローモーションになったかのように見て取れる。
「ベティ様!!!」
横から風が吹き付けてきた。
勢い良く飛ばされた私は、そのままボチャンと海の中に沈んでいった。
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「へっくち!!」
「ベティ様!!」
ぐじゅっ……ずるずる。寒い……。
目覚めると、すっかり日も落ちていた。
夜の海岸に焚き火を起こし、私を膝に寝かせてくれていたのはフララだった。ダーリャの姿は見当たらない。
「……べ、弁明を聞きましょう」
震えて青ざめた唇で、どうにかこうにか言葉を紡ぎ出す。
「フララも落とされました」
「無罪放免」
「ダーちゃんは行方知れずです」
「ギルティ」
あんにゃろう……。
「大丈夫? まだ寒いよね」
フララはおもむろに服を脱ぎだした。
そのままフララは、既に乾いている私の服を慣れた手つきで脱がせ、自身の肌と焚き火の熱で私の両面を温め始めた。
「ありがとう。けれど普通に服を着たいわ」
「え? でもダーちゃんがこうするといいって」
「色々間違ってるわ」
「ダーちゃんいっぱい教えてくれたよ♪ さばいばる? 知識だって♪」
実際温まってはいるんだけれども。
「魔物に襲われたらどうするのよ」
「この島には誰もいないよ。少しくらい裸んぼでも恥ずかしくないよ」
そういう問題じゃないと思うの。
だいたいダーリャは見てるに決まってるし。観覧料取ろうかしら。
「きっと砂のせいよ。春先の海岸の砂浜に直接寝かせたら凍えもするわ。何か敷くものを探さないとね」
「そっかぁ~♪ ベティ様詳しいね~♪」
フララは少し天然気質よね。
ゲームのフローラってこんなんだったかしら?
「お腹が空いたわ」
「はいどうぞ♪」
今このビスケット、どっから出したのかしら。
「ありがとう……しょっぱ」
さてはフララ、私を助けるために服着たまま海に飛び込んだわね。
「ダーリャのサバイバル知識だと、次はどうしろって?」
火や水の確保は簡単だ。私たちは魔術が扱える。
だから寝床の確保と食料の確保。必要なのはこの二つだ。順当に考えれば。
「う~んとね~♪ 魔物を狩れって♪ それで全てが解決するって♪」
「まさか魔物の亡骸を布団にしろとでも?」
「うん♪ 替えの服にもなるんだって♪」
これが異世界サバイバル……いや、ダーリャがおかしいだけよね……絶対……。
「食って良し♪ 寝て良し♪ 纏って良し♪ 魔物は万能なんだよ♪ ベティ様♪」
衣食住を兼ね備えていると。なんて蛮族思考。
ナチュラル、オーガニック、サステナブル。あとなんだっけ。あかん。こんなくだらないこと考えてる場合じゃない。
「そもそも私の休暇は一日だけよ」
「たぶん心配要らないんじゃないかな~」
でしょうね。一週間くらいは救助も無いと見るべきね。それも相当少なく見積もってだ。下手をすれば一月以上。なんならもっと長いかも。
……流石にないか。王妃教育もあるし。
……ないと信じたい。
「フララも寝ておきなさい。私が見張るわ」
「は~い♪ あ。魔力修行どうしよう?」
「ダメに決まってるでしょ。ここには回復薬もないのよ。明日はフララにも戦ってもらわなきゃいけないんだから。魔力は極力温存しておきなさい。どんな化物と戦わされるかもわからないわよ」
「はい♪ ベティ様♪」
相変わらず指示されると尻尾振って喜ぶのよね。もちろん尻尾なんて生えてないけど。
「おやすみ。フララ」
「おやすみ♪ ベティ様♪」




