05-07.初めての敗北
「てなわけで。ネルが仲間に加わりました。はい拍手」
「浮気ですか!!」
「ダメだよ、ダーちゃん。そんな大声で。誰かに聞かれたらどうするのさ」
そうよ、ダーリャ。ここはお屋敷の中よ。私の部屋よ。偶然誰かが廊下を通りがかることだって無いとは言い切れないじゃない。
「お姉様♪ 真実は正しく伝えねばなりません♪」
ナンノハナシダロウナァ~。
「『仲間』では足りませんわ♪ わたくしも♪ お姉様のハーレムに♪ 加えて頂きましたもの♪」
ソンナコトイッテナイケドナァ~。
「「「浮気だ!!」」」
結局フララとメルメルまで……。
「ネルルはお姫様なんだよね」
「そうよ、リリィ」
だから勝手にあだ名を増やすのはね。
「良いですわね♪ 良いですわね♪ どうせならネルネルとお呼び頂いても構いませんのよ♪」
もう一個のネはどっから生えてきたのさ。
コンコン。
「あら? 今日は一人多……えぇ!? ネーテルリア・ベルマギア・フォン・フォルトマグナ殿下ぁ~~!?!?」
あらサツキさん。来たのね。よくフルネーム言えたわね。
「ネルネルですわ♪」
押し通す気かしら。
「……ネは何処から?」
素で返さないであげてほしい。
「ネルルでも可ですわ♪」
妥協してくれた。
「サツキさん。ネルもハーレムに加わったから」
遅れてやってきたサツキさんに事情を説明する。
「なっ!?」
ショックを受けるダーリャ。
「まあ♪」
嬉しそうにニヤけるネル。
「あらま」
普通に驚くサツキさん。
「ベルベル様!! 浮気は許さぬと申し上げた筈です!!」
「お姉様♪ ようやく覚悟を決めてくださったのですね♪」
「いくらなんでも手が早すぎないかしら。昨日の今日よ?」
同時に喋んないでほしい。
「はい解散! 今日は疲れたからここまで! 詳しい話は明日にしましょう!」
「「「「「「「え~~~~~!!!」」」」」」」
「やかましい! わたしゃ昨晩血反吐と一緒にわんさか魔力吐き出したばっかなのよ! そのまま気絶して今朝起きてからもずっと泣いてるネルの相手してたのよ! いい加減休ませなさいよ! 解散ったら解散!! 解散よ!!!」
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全員を部屋から叩き出し、ぐーすかぴーすか眠って起きたら夜も更けていた。
「なんでネルが一緒に寝てんのよ……」
あんた城に帰らなかったの? 明日学院でしょ? まさかこのままこっち住むとか言わないでしょうね?
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そのまさかだった。
「本日よりこの教室で共に学ばせて頂きますわ♪」
しかも何故か一年生のネルが二年の教室にやってきた。
さすが王女様。何でも無理が通る。
「お姉様♪ 失礼いたしますわ♪」
うん?
何故か私の膝に腰掛けるネル。
「ダメよ、ネル。授業は真面目に受けなさい」
「はい♪ お姉様♪」
……いや、降りろや。
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「約束です!!」
学院が終わって帰宅するなり、ダーリャがこれ以上は一秒たりとも待ちませんと迫ってきた。
「存分に語らいましょう♪ お姉様♪」
ネルも当然のように付いてきた。今も私の腕を抱いて隣に侍っている。
今日はリリィたちも教会に寄らず、まっすぐ家に帰ってきた。いつもは少しお祈りして女神様への接触を試みるのだけど、今日はその時間すら惜しいようだ。
いい加減神頼みも程々にすべきなのかもしれない。昨年の夏休み頃から始めて一年近くお祈りを続けてきたけど、女神様は一言だってくれたこともない。
……こんなことを考えてしまうのは、信仰心が足りない証拠なのだろう。私が足を引っ張っているのかもしれない。心を入れ替えて、私ももっと祈りを捧げるべきかしら。
「ベルベル様!」
ごめんて。別に現実逃避がしたいわけじゃなくてね。
「語らうって、これ以上何を話すのよ」
「なんですかその態度は!!」
「ダーリャ。私の一番は貴女よ。私が信じられないの?」
「それ愚妹にも言ってるじゃないですか!!」
「メルメルは最推しキャラだもの」
「何を開き直っているんですか!?」
もう。ならどうしてほしいのよ。
「なんだかんだとメルメルの存在は認めてるじゃない」
ベッドに潜り込んできても目くじら立てなくなったし。
「認識から外しているだけです! 認めたわけではありません!!」
「ひどい……お姉ちゃん……」
流石にどうかと思うわよ。
「落ち着いて、ダーリャ」
落ち着いて話をしましょう。冷静に。今後のことを話し合いましょう。
「ダーリャは私にどうしてほしいの? ネルを力尽くで追い返せば満足? それに意味があると本気で思っているの? 彼女は権力者よ。私より上位なの。腕っぷしならともかく、それ以外の全てにおいて負けているの。私ではネルの束縛は不可能よ。それこそ、力尽く以外ではね」
「だから認めるのですか!? 戦おうともせずに!?」
「ネルを敵に回してまで、ネルの気持ちを受け入れない合理的な理由を述べてみなさいな」
「恋人が嫌だと言ってるんです!!」
「ダーリャ。私は侯爵家の娘よ。本来なら私的な恋人を持てる立場ではないのよ。その点、ネルは受け入れてくれると言っているの。私たちにとっても好都合じゃない」
「だからって大手を振って歩けるとでも!? そんなわけがないでしょう! 王子殿下を裏切っておいて! 如何な権力者にも人の心は操れません!!」
「そうね。結局ダーリャたちとの関係はこの先も隠し通さねばならないでしょうね」
「だったら!」
「心配は要りませんわ♪ わたくしは学院を卒業次第領地を預かる予定ですの♪ 皆でそちらに移り住みましょう♪ 委細このネルめにお任せを♪ 悪いようにはいたしません♪」
「貴女は黙っていてください!!」
「ダーリャ。相手は姫殿下よ。弁えなさい」
「ベルベル様ぁ!!」
「どうしてもと言うなら私を攫いなさい。私にすら恨まれる覚悟で挑むというなら、私は愛を以って応えるわ」
「それは!」
「出来ないでしょうね。ダーリャはお父様にも大恩を抱いているもの。何より私の努力の成果を台無しにしたいとは思えないものね」
「っ!! ズルいです!! ベルベル様ぁ!!」
「いいのよ。ダーリャも狡くなれば。ネルを利用して望む未来を作り上げて頂戴。私のために。自分のために」
「あらあら♪ お姉様ったらなんて不敬者なのかしら♪」
「ネルだって。どうせ引く気もないんでしょ。私の愛するダーリャのこの姿を見たうえでも」
「もちろんですわ♪ 必ず受け入れさせますわ♪」
「わかっているでしょうけど」
「彼女を傷つけることはいたしません♪ 決して♪」
「よろしい。なら好きにやりなさい。お互い様ってことで」
「はい♪ お姉様♪」
「ダーリャもそれでいいわね?」
「……」
「ダーリャ」
「……ひっぐ」
あらま。
「うわぁぁぁぁぁああん!! あんまりですぅ~~!!!」
あらららら……。
「ダーちゃん、負けたことないから」
よしよしと撫でて抱きしめるフララ。
「皆。一度下がりなさい。ネルもよ。暫く私とダーリャとフララだけにして頂戴」
「えぇ!? 私もですか!?」
「メルメルもダメに決まってるでしょ。暫く出てなさい」
まったく。ヨダレなんて垂らしながら何言ってるんだか。
「ネル。聞こえたわね」
「む~……いたしかたありませんわね」
なんて言いつつも、率先して歩き出した。
呆気に取られていた他の皆も、ネルに続いて退室した。




