05-04.特別なヒロイン
「お義姉様♪ お義姉様♪」
はいはい。なんでっしゃろ。
「お義姉様♪ お義姉様♪」
可愛い妹に慕ってもらえるのは正直嬉しい。
ネルは美少女だ。紛うこと無き美少女だ。
なにせ真ヒロイン様だもの。
誰からもそれなりに好かれるメインヒロインちゃんことキリエとは、少々毛色が違うのだ。
なんというか、マニアックと言うか。それでいてツボを押さえているというか。押し込んでくるというか。
メインヒロインちゃんは入口だ。
パッケージのセンターを務めるだけあって、多くの人が好意を持ちやすい普遍的なキャラデザインだ。パッと見で好きになれる代わりに、少々心に残りづらいという欠点をも併せ持つ、ある種の不遇さをも兼ね備えている。
反して、真ヒロインちゃんは出口だ。
最後までプレイを続けた選ばれし一部の者たちが、『天啓のフォルトマグナ』というゲームに心を残すためのキャラデザインだ。そんなピンポイントな層に深く突き刺さるよう、最初から計算し尽くされたデザインなのだ。
後のグッズ販売等にも繋がるし、ある種、制作者の愛や癖や情熱までもが詰め込まれた特別な存在でもある。
続編構想まであったのなら尚の事だろう。
つまり何が言いたいかと言うとだ。
滅茶苦茶可愛い。それはもう可愛い。
私とて『天啓のフォルトマグナ』を愛する者の一人だ。
中でも最も印象深いヒロインといえば言わずもがなだ。
これは推しキャラとはまた別だ。断じて浮気じゃない。
「むっすぅ~!」
こらこら、メルメル。仮にも王家を守る騎士家の者でしょうが。お姫様に向かってなんて顔してるのよ。
安心なさい。私の推しは依然あなたよ。メルメルこそが『天啓のフォルトマグナ』において最高のキャラクターよ。この私にとってはね。
「~♪」
私の気持ちが伝わったのかメルメルが機嫌を直してくれたっぽい。
「お義姉様?」
あかん。ちょっと余所見しただけで義妹ちゃんが闇堕ちしかけてる。
「ネル。そろそろお風呂に行きましょう。背中を流させてはいただけないかしら?」
「は、はい♪」
ふ。ちょろい。所詮は小娘ね。
「!!!」
あ! ちょっとこら! メルメル!? どこ行く気!? まさかあんたまた風呂場凍らせる気じゃないでしょうね!?
「……」
「っ!?」
あ。ダーリャがメルメルを昏倒させて引きずっていった。
ありがとう、ダーリャ。危うく不敬を働くとこだったわ。
「お義姉様は余所見ばかりされるのですね」
あかん……。
「ネルにはこの家を好きになってもらいたいもの。どれだけ気を配っても足りないわ」
「まあ♪ お上手ですのね♪」
お気に召して頂けたのなら何よりです。
よしよし♪ 良い調子じゃない♪ なんとなくこの子との付き合い方がわかってきたわ♪ ゲーム知識だけでなく、こちらに転生してからの貴族生活も役立っているわね♪
きっとこの子はキーパーソンだ。今更だけどそう思う。FDでネルの存在があまり語られなかった(らしい)のは、おそらく意図的なものだろう。続く実質的な三作目において、何か重要な役割を担うのだろう。
というわけで♪
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「うわすご。なにこの肌」
ネルの背中を目の前に、未だかつて無い衝撃を受ける。
ぷるツル卵肌……ううん。なんかもっと別物よ。人間じゃないわ。女神や天使のような何かだ。この世に二つと無い唯一無二の感触だ。ふにふに。やわやわ。なんこれ。手も目も放せない。
「うふふ♪ くすぐったいですわ♪ お義姉様♪」
もうちょい。
「お義姉様のお身体も素敵ですわ。どれだけの鍛錬の果てにこの肉体を作り上げたのでしょう……」
後ろ手に私の手首を握り、自身の膝へと導くネル。
私の腕に寄り添うように頭を傾け、愛おしそうに指を這わせる始めた。
背筋にゾクゾクと何かが這い上がってくる。
やがてそのゾクゾクは全身に広がっていく。触れられているのは腕だけなのに、身体中を同時に撫で回されているかのような奇妙な感覚に包みこまれる。
「……お義姉様は知ってらしたのですか?」
……え? ……なに……を?
「魔王の復活を」
あ……やば……。
「これは一年やそこらで仕上がるものではありませんわ」
ネルの指が段々と上がってくる。
腕を這い、肩を撫で、首筋に添えられる。
いつの間にかネルはこちらを向いていた。全然気が付かなかった。身体を包む妙な感覚に気を取られていた。
「幼き頃より弛まぬ鍛錬を続けてきた者の証ですの」
……バレてる。
「話してくださいませ。お義姉様」
私の胸に寄りかかったネルが、首に口付けるようにして囁いた。それがまた全身のゾクゾクを加速させていく。
「わたくし知りたいんですの」
顎の骨を伝って、直接耳の中に言葉が響く。
「お義姉様の全てを」




