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悪役令嬢に転生したので魔王を復活させるために暗躍します  作者: こみやし
05.悪役令嬢の魔王討伐

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50/60

05-03.計算違い


「そうか♪ ネルと挨拶を♪ 早速手配しよう♪」



 素直にピース殿下に相談してみることにした。


 王女様と接触するには色々と気を遣うものだ。基本的に王侯貴族の社会って、身分の高い者からしか声を掛けちゃいけない決まりだし。


 ネーテルリア殿下は、あくまでリリィに興味を示しているだけだ。現状兄の婚約者である私に興味は抱いていない。少なくとも目に見える形では。


 そもそもネーテルリア殿下は新入生だから、二年生に上がった私たちとは基本的に接点が無いのもある。


 それでもちょくちょくリリィの近くには現れるし、なんなら既に声も掛けているそうだ。あのお姫様、勿体ぶった登場の割には結構チョロいから、本当に危ないところだった。


 私の強制介入も致し方のないことだ。決してサツキさんに乗せられたから動くわけじゃない。わけじゃないったらわけじゃない。そういうことにしておきましょう。



 そんなわけで、近々侯爵邸でお茶会が開かれることになった。


 名目上の主催者はピース殿下だ。諸々の差配や実務は私の役目だ。ピース殿下には、当日の司会進行や、ネーテルリア殿下のエスコート役も担ってもらうことになる。


 だから実際のところとしては、共同開催に近いのだろう。それもこれもピース殿下の気遣いだ。殿下にも色々手を回してもらって、初めて私は王女殿下と言葉を交わせるのだ。



 とはいえ、他にも方法が無かったわけじゃない。なにせここは元百合ゲー世界だ。私はネーテルリア殿下が干渉するイベントも幾つか覚えている。そのどこかに割り込めば、自然と会話が発生する可能性は高いだろう。


 私がフローラやリリィの代わりに完璧な受け答えをすれば、ネーテルリア殿下の好意が私に向く可能性だって十分にある。その可能性は否定しない。


 それでも選ばなかったのは、立場を敢えて明確にしておくためだ。私はピース殿下の婚約者だ。今はその立場を活用させてもらうとしよう。


 というのも、私が今の段階でネーテルリア殿下に惚れられるわけにはいかないからだ。


 サツキさんとも色々話し合ったことだけど、やはり全てを明かすのは危険過ぎる。だって私、ピース殿下の婚約者でありながら、ダーリャやフララと付き合っているんだもの。


 これは世間一般的に浮気と呼べるものだ。端っからピース殿下と結婚するつもりがないとはいえ、王家から実質強制的に押し付けられた婚約関係とはいえ、その立場を守る責務が私にはあるのだ。


 今の時点でネーテルリア殿下にそんな諸々の事情まで開けっぴろげにするわけにはいかない。段階を踏んで、信頼関係を作り上げる必要がある。


 当然、ネーテルリア殿下と内緒で付き合うなんて論外だ。それはネーテルリア殿下本人にも内緒にした上でしか成り立たない関係であるからだ。


 だから私は、ネーテルリア殿下を惚れさせつつも、その好意が一定ラインを超えないように制御する必要がある。


 正直無茶な話だと思う。ネーテルリア殿下は熱しやすく冷めにくい。一度ルートを始めたが最後、どんどんどんどん好意を募らせて、強制バッドエンドへと繋げてしまう。


 好意と嫉妬が比例しているのだ。主人公を手に入れるためなら、魔王すらも利用してしまうのだ。


 なんとしても、バッドエンドだけは回避しなければならない。だから恋人ではなく、義姉として接触するとしよう。


 ゲームのフローラがネーテルリア殿下を御しきれなかったのは、その関係性をハッキリとさせていなかったからだ。ネーテルリア殿下と秘密の恋仲になりつつも、他のヒロインたちとも友人以上の距離感で接し続けてしまったからだ。


 ゲーム中ではその立場もあって、ネーテルリア殿下とフローラの関係は公表されていなかった。ネーテルリア殿下にはそういう不確かな関係性に対する不安もあったのだろう。自分たちの関係を公表できない隙に、他のヒロインたちが潜り込んでくるのではないかと気が気ではなかったのだろう。



 だから私は敢えて公言しよう! そう決めたのだ!!




----------------------




「わたくし♪ ずっと妹が欲しかったんですの♪」


 ネーテルリア殿下、ピース殿下とのお茶会が始まった。


 ピース殿下の紹介で、ネーテルリア殿下と初めての言葉を交わした。それからすぐに私たちは仲良くなった。暫く話を続け、今なら行けると、この言葉を口にした。



「お嬢様。不躾が過ぎるかと」


 真面目なお仕事モードのダーリャが、興奮した私の言葉を窘めた。もちろんこれは仕込みだ。最初から話す内容は打ち合わせ済みだもの。私たちは入念な準備の上でこの場に臨んでいるのだ。ふんす!



「嬉しいですわ♪ お義姉様♪」


「まあ♪ まあまあまあ♪ お聞きになられまして♪ ピース殿下♪ ネーテルリア殿下からお義姉様と♪ 嬉しいですわ♪ 嬉しいですわ♪ 可愛いらしい妹君ですわ♪」


「あはは~♪ 見たこと無いほど興奮してるね~♪」


 ピース殿下若干引いてる?


 そういえば私、ピース殿下とも数え切れない程お茶会してきたけど、ここまでハッチャケた姿を見せたことは未だかつて無かったわね。



「ごほん。大変失礼致しました。あまりの嬉しさについ抑えきれず……お恥ずかしいですわ」


「いやいや♪ 君の知らない一面が見れて嬉しいよ♪」


「まあ殿下ったら♪ ダメですわ♪ ネーテルリア殿下の前で♪」


「そうですわ。お兄様。今日の主役はわたくしだと聞いておりましたのに。お義姉様を独り占めしては嫌ですわ」


 ……あれ? なんか今マジトーンじゃなかった?



「お義姉様♪ わたくし、お義姉様のお話をもっと聞きたいですわ♪」


「ええ♪ もちろんですわ♪ ネーテルリア殿下♪」


「そのような呼び方はやめてくださいまし♪ お義姉様とわたくしの仲ではありませんの♪」


 ……うん? まだ出会って小一時間ですが?



「どうぞネルとお呼びくださいませ♪ お義姉様♪」


 おぉ……。ペースはやぁ~い……。



「嬉しいですわ♪ ネル様♪」


「違いますわ。お義姉様。ネルとお呼びくださいな」


 あれぇ~……? なんで目が笑ってないのぉ~?



「良いんじゃないか。君は僕の婚約者だ。公の場ではともかく、プライベートで呼び捨てるくらいは構うまい」


 あ、はい。



「えっと……それでは……ネル」


「はい♪ お義姉様♪」


 おぉ……満面の笑み……。


 めっちゃ可愛いのに、素直に喜べないのは何故なのか。



「ふふ♪ 気に入られたようだね♪ ベルベルなら心配も要らないだろう♪」


 心配? ピース殿下は何を仰られているのですか?


 まさか妹君の本性に気付いておられる……?



「さて。僕は先に席を外させてもらうよ」


 なんですと!?



「この後少し予定があってね。悪いね」


 それは予定に無いんですけど~!?



「そうだ♪ 明日は学院も休みだろう♪ いっそのこと泊まっていってはどうかな♪ 随分と気も合うようだし♪」


 ちょっ!? 何言い出すの!?



「是非そうしましょう! お義姉様!!」


 絶対マズい流れじゃん!!



「わたくし、聖女様ともお会いしてみたかったんですの♪」


 リリィと!? 敢えて同席させなかったのに!?



「夜には戻られるのですわよね♪ 今も教会でお祈りを捧げられているとか♪ 流石は聖女様ですわ♪ 熱心であらせられますわ♪」


 バッチリ調べがついてる!? 動向を探られてた!?



「けどそれまでは♪ お義姉様と二人きりですわ♪」


 ダーリャたちも居ますが!? 今も居ますが!?



「妹をよろしく頼むよ♪」


 待っ! ピース殿下ぁ!?

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