01-05.三人の関係
フローラが私の専属従者に加わった。
フローラは真面目で直向きな努力家さんだった。
そして何より彼女は働き者だった。
側付きにこそしたものの、本音を言えばメイドとして働くのではなく、修行に専念してほしい気持ちもないでもない。
ただ気になるところとしては、若干指示待ちの気があるところだ。いや……指示待ちという言葉も正しくはない。
指示受けジャンキーというか、命令大好きというか……何か……そう。コマンド入力待ちってやつかしら。
「次は何にいたしましょう! ベティ様!」
ゲームの主人公よろしく、主に次の選択を求めてくるのだ。
「楽になさい」
むしろ楽にさせて頂戴。こっちも色々考えたり、気を遣って言葉を選んだりするのは疲れるのよ。
ダーリャは頼まなくてもあれこれやってくれるから、私自身こういうタイプの子を相手するのも慣れてないし。
「はい! 楽にします!!」
本当にわかっているのかしら?
なんかこう、もう少しバランス良くいかないものかしら。
「そういえばダーリャは?」
「ちょっくら出てくると! 探して参りましょうか!?」
「い、いえ。結構よ」
ちょっくらって何よ……アイツ本当に私の側付きなの?
何故かお父様も何も言わないし。基本ダーリャに厳しいメイド長もなんだかんだと自由にさせてるし。
ダーリャが一番謎なのよね。今度尾行してみようかしら。私の見ていないところで何をしてるのか探ってみるべきかも。
「ここに座りなさい。フローラ」
「はい! ベティ様!」
ポンポンと隣を叩いてソファにフローラを招き寄せる。
真横にフローラを座らせてから、私は身体を倒して、フローラの膝に頭を乗せる。
「頭を撫でて。フローラ」
「はい! ベティ様!」
フローラは頼めばだいたい何でもやってくれる。私はそれにかこつけて、こうして積極的にスキンシップを重ねるようにしている。
いずれ主従ではなく、仲の良い幼馴染のような気安さで触れ合えると嬉しいのだけど。今はこれで良しとしておきましょう。フローラもなんだかんだと嬉しそうだし。
フローラは、撫でるのと逆の手で私の手を握りしめてくれた。
こういうところがあるから、単純な指示待ちとも言い切れないのよね。ザックリとした指示でも後は全部自分の判断でやってくれるし。やっぱり指示待ちとは違うわね、これ。
いったいどのような心境からくるものなのだろう。
孤児院出身の平民だから? 折角転がり込んできたチャンスを手放したくないから?
単純に今が楽しいから? だからいつもニコニコと指示を要求してくるの? 構ってほしいワンちゃん的な?
私最近、フローラのことばかり考えているのよね。これが恋なのかしら? ないか。流石に。
「フローラも何かしてほしいことはないかしら?」
「ベティ様のお言葉を頂きたく!!」
言葉?
「例えばどんな?」
「なんでも構いません♪」
なんでもが一番困るのよ。
それとやっぱり指示が欲しいのね。
「抱きしめて。フローラ」
「はい♪ ベティ様♪」
あ~……ぬくぬく……。
こっちに転生してからダーリャ以外に抱きしめてもらったのは初めてかもしれない。お父様は照れ屋さんなのか、あんまりそういうことはしてくれないし。愛されているのは感じるけども。
「……ママ」
「!!!」
あ、間違えた。
うん? フローラの抱きしめる力が強くなった?
そうよね……。フローラも孤児だったのよね……。思い出させてしまったわよね……。悪いことしちゃったわね……。
「ニヨニヨ♪ によによによによ♪」
「……いつ帰ってきたのよ」
「あは♪ どうぞそのまま♪ ごゆっくり~♪」
質問に答えなさいよ。鼻血拭きなさいよ。ダーリャったら見るのもいける口なのね。というかそんなんじゃないわよ。空気読みなさいよ。
「おかえりなさいませ♪ ダーリャちゃん♪」
「ちょっと」
「はい♪ ただいまです♪ フララ♪」
「おいこら」
「「如何がなさいました?」」
「なんでよ!? なんで私は様付けなのに二人だけ仲良く呼び合ってるのよ!?」
今朝まで普通だったじゃない! ダーリャ先輩とフローラだったじゃない!
なによ! ダーリャちゃんとフララって!! 私だけ除け者にして!!
「だけ? ベルベルとベティも愛称ですよ?」
「そうだけど! そうじゃなくて!!」
「見ていないところで関係が進展してヤキモキされているのですね♪ 可愛いです♪ ベルベル様♪」
「うっさい!! いいから吐きなさいよ! いったい何があったのよ!!」
「普通に仲良くなっただけですよ♪ フララは可愛いですから♪ あ♪ もちろんベルベル様が一番です♪」
「フローラもです! ベティ様が大好きです♪」
くっ……!! 誤魔化しおってぇ~!!
嬉しいけど誤魔化されないんだからね!! 嬉しいけど!!!




