04-16.vsダンジョンボス
「聞いてませんよ~!? ご主人様ぁ~~~~!!?」
「だから言ったじゃない!! 引き返すって!!」
「理由を言ってくださいよ~~~!!」
「ギャォォォォォォオオオ!!!!」
「「ひぃ~~~~!!」」
狭い部屋の中を駆け回り、どうにかこうにか飛竜の攻撃をやり過ごす。真っ黒なドラゴンの巨体が壁にぶつかり、大きく部屋全体を揺り動かす。揺れる足場に苦戦しながらも、更に距離を取ろうと掛け続ける。
装備を入手するにはこの部屋の主たる漆黒のドラゴンを倒さねばならない。
このドラゴンこそがダンジョンボスだ。つまりこのダンジョンにおける最強の存在だ。
このボスを倒さない限り、私たちが生きて帰ることすら出来はしない。何故なら入口の扉は既に固く閉ざされているからだ。
どうしてこうなったぁ……。
わかっていたのに……止めたのに……。
メルメルは大型犬だ。ハスキー的なあれだ。なんだかんだと忠誠心は高いのだ。従いたくないとか言いつつも、自分の意思で敬愛する主の役に立ちたいのだ。この子は。
……今更メルメルの分析なんかしたって意味はない。
逃げ回っているだけでも意味はない。
私たちはここから出られない。
ドラゴンを倒す以外に道はない。
「戦うわよ! メルメル!!」
「はい!! ご主人様♪♪」
尻尾振ってるのが見える見える。
やっぱこいつ猫の飼い主じゃなくて、猫が好きなだけのハスキー犬だ。そうに違いない。絶対そうだ。やたら氷が好きなのも、シベリアンなハスキーだと思えば納得だ。
「ソリを作りなさい!! 私を乗せて引きなさい!!」
氷で! そういうのも出来るんでしょ! メルメルなら!
「あいあいさ~♪」
何よ。命令にも従うんじゃない。
一瞬で氷の乗り物を作り上げるメルメル。
命令通り私をソリに乗せた。何故か自分まで乗り込んだ。
おいこら。誰が引くの……って!? えぇ!? 独りでに走り出した!? しかもすっごい操作精度!? やったの初めてじゃないわね!?
「速いじゃない! 最初からやりなさいよ!」
「うるせぇ!!」
えぇ!?
「しっかり捕まってな♪ べいべー♪」
なに!? 急になに!? えっ!? きゃぁーーー!?
ドラゴンが間近に迫ってくる。
ソリを乗り回すメルメルが、何処もかしこも凍りつかせながらドラゴンの股下へと突っ込んでいく。
氷の槍が幾本も発射され、ドラゴンの翼を下からズタズタに引き裂いていく。
「ギィャォォォォォォオオオン!!!!」
ドラゴンの悲鳴を背に受けながら、あっという間に遠ざかったかと思うと、今度は壁を使って器用に反転し、再びドラゴンの下へと突っ込んでいく。
「どりゃりゃりゃりゃりゃぁ~~~~!!!」
人が変わったように……言う程でもない? とにかくガムシャラに魔術を放ち続けるメルメル。
しかし今度は通じていない。全ての攻撃がドラゴンの鱗に弾かれる。攻撃が通じるのは翼膜だけなのだ。このドラゴンも、地竜と同じように身体は魔王の力で守られている。
ダメだ……こんなのいくら攻撃したって……。
「だりゃりゃりゃりゃりゃぁ~~~~!!!」
ダメよ! そんなことしても魔力使い切るだけよ!?
「だぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
バキンッ!!
「ギャッ!?」
ヒビ!? まさか!?
「貫けぇ~~~~~~!!!!!」
ソリごと巨大な氷槍と化し、突如出現したジャンプ台で飛び上がり、ドラゴンの胸元に突っ込む私たち。
「ギィャァァァァァァ!!!!」
刺さった!? 魔王の守りを力尽くで貫いた!?
「ご主人!!」
「ええ!!」
私もガムシャラに魔術を放つ。ドラゴンの胸に突き刺さった氷槍を伝い、全力の雷を流し込む。
「ギャァァァァァァァァ!!!!」
効いてる!!!
もっと!! もっともっと!!! もっとだぁーー!!!
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プスプスと、小さな音を立てながら倒れ込むドラゴン。香ばしい香りだ。中からしっかり熱が通っているようだ。
いつの間にか、私をお姫様抱っこしてドラゴンから離れていたメルメル。
魔術を流し込むのに必死過ぎて気が付かなかった。ドラゴンはいつの間にか息絶えていたようだ。
「やりましたね♪ ご主人様♪」
遠慮なく頬ずりしてきた。
私も特に抵抗はせず受け入れる。
「よくやってくれたわ。メルメル」
「ご主人様もです♪」
全部あなたのお陰よ。魔王の力を強引に打ち破れるのだと知れたのは大きいわ。
グゥ~~~~~。
「「……」」
今のはメルメルよね? 私じゃなかったわよね?
「お腹空いたわね」
もう長いこと走り回り続けていたし。
「ちょうど良い焼け具合のお肉がありますよ♪」
食べるの? ドラゴンステーキ。
「切り分けますね♪」
逞しい子ね~。
そういえばさっきの……。
今後この子に運転させるのはやめておくべきかしら……。




