04-15.力の片鱗
快進撃が続いたのは途中までだった。
最初は無双していたメルメルも、次第に苦戦するようになっていった。
実質的な最終ダンジョンは伊達じゃない。出てくる魔物たちの強いのなんのって。
多少の力の差を覆せる程度にはメルメルも戦い慣れていたものの、流石にこれは多勢に無勢だ。無茶をする前に引き返すべきだ。
「連れて行くって約束しました!!」
こんにゃろう。自分でも無茶だってわかっているでしょうに。
「帰るったら帰るのよ! これはどう考えても無理よ! せめてダーリャとフララも連れてこないと!」
「お姉ちゃんを頼るのですか!? 私では力不足だと!?」
そう言ってるじゃない!! ちょっとは落ち着きなさいよ!?
「メルメル! 貴女だけが頼りなのよ! 私一人じゃ帰ることだって出来ないわ! お願いよ! 外に連れ出して!」
「命令は無視して良いと言ってくれました!!」
ちっくしょう!! まさか後悔するとは思わなかったわ!
「だから頼んでるんじゃない!」
「気まぐれな主ですね!」
だから猫じゃないってばぁ!!
「行くったら行くんです!! ご主人様は大人しく私を頼ってください!」
強引に私の手を掴んで走り続けるメルメル。
僅かに放出される魔力量が増えた気がする。この調子で最後まで保つのだろうか……。
何故そこまで意固地になるのだろう。
少し分かり合えたと思ったのに。
……仕方ない。
私も魔力を解き放った。周囲一帯に雷魔術を放出し、未だ息のある魔物たちを探り出す。
「地竜よ!! 回避して!!」
メルメルの冷気を気にも止めず、呑気にうたた寝を続けている強者がいる。あれと戦う必要はない。回り込めば抜けられる。私はそういう意図でメルメルに注意を促した。
「あれですね! ここでお待ちを!!」
「おいこら!!」
なんで突っ込んでくのよ!? 勝手に手まで放して!!
「はぁぁぁぁああああ!!!」
カキンッ!!
「……ぐるぅ?」
岩に擬態してやる気無く寝ていた地竜も、背中に剣を叩きつけられては目を覚ましもする。
しかし彼がメルメルに興味を示すこともなかった。
「グァァァア……zzz」
あくびをしてから再び眠りにつく地竜。
流石にここまで圧倒的なのは初めてだ。
おかしい……メルメルだって本来のカンスト値は超えているのに……。その戦闘力の合計はカンストパーティー一つ分くらいに匹敵する筈なのに。
全く手も足も出ていない。
あの数値は意味がないのかしら? それともこの地竜が特別に強いだけ? 魔王よりも遥かに? そんなことある?
……違う。これが魔王の力なんだ。
聖女にしか破れない力。ステータス差をものともしない理不尽な力。ゲームではトドメの一撃にしか発揮されない理不尽だったけれど、現実となったこの世界では違うのだ。こんな魔王でも何でもない一魔物が、常に全身を包んでおける程の力なのだ。
そんなの勝てるわけがない……。今からリリィをダーリャレベルに育て上げろだなんて……無茶苦茶だ。あのダーリャだってたった二年で上げたわけじゃない。二十年近くかけて鍛え上げた成果だ。それをなんだと……やばっ!?
「メルメル!! 下がりなさい!! 他の魔物たちが寄ってきているわ!! 早く!!」
このままじゃ逃げられなくなる!! この地竜以外にも攻撃の通じない相手がいるかもしれない!!
「くっ!!」
よかった! メルメルが来てくれた!!
「いずれ必ず!!」
「わかったから! リベンジさせてあげるから!!」
もう! 行くわよ!!
私はメルメルの手を握り、電魔術で自身とメルメルの指先の動きを固定する。これで決して手放せない。私が魔術を解除しない限りは。
「あひゃん♪」
おいこら。真面目にやれや。
「行きますよ♪ しっかり捕まっててくださいね♪」
何故だかやる気が湧いてきたようだ。
メルメルは地竜のことなんか最早綺麗さっぱり忘れたように駆け出した。……前方へ。
「なんでよ!? 帰るって言ってるでしょ!?」
「装備は手に入れます! ここからは寄り道無しです!!」
「帰りどうするのよ!? 囲まれてんのよ!?」
「なんとかしますってば!」
「それでよく今まで生きてこれたわね!?」
「えっへん♪」
「褒めてないわよ!?」
もうもうもう! どうしてこうなるのよ~~~!!




