04-11.箱入りお嬢様の憂鬱
「ならぬ!!」
「お父様!!」
「くどいぞ! ベル!」
もうもうもう!! 頑固すぎよ! お父様!!
「皆に示しが付きません!!」
「求められた役割を履き違えるな!!」
ずっと平行線だ。
私はただ強くなりたいだけなのに。
本気で魔王を倒したいのに。
「聖女を戦わせる裏でふんぞり返っていろと! それが求められし姿だと仰せなのですか! このアルレティア家の娘にそのような愚態を晒せと仰せなのですか!!」
「愚か者が! 思い上がるのも大概にせよ!!」
「何が思い上がりだと仰るのです!! 具体的に申してくださいませ!!」
「話にならん! おい! 連れて行け!! 決して部屋から出すでないぞ!!」
「「ははっ!!」」
「放しなさい!!」
「「ぐあっ!?」」
あ! やばっ!?
「愚か者!!!」
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やらかしたぁ~……。
「ベルベル様。お気になさらず」
で~も~。
「大丈夫です。二人に怪我はありません」
け~ど~。
「力尽くで抑え込もうとした愚か者は彼らの方です。身の程も弁えずベルベル様のお身体に触れようとしたのです。万死に値します」
ぶっそ~。
「彼らはお父様の指示に従っただけよ。不服だからって乱暴に振り払って良いわけではないわ」
「力の差がありすぎるのです。いい加減その事実を直視すべきなのです」
「あら。まるで私にも資格があると言ってくれているみたいね。以前はダーリャも反対していたのに」
「ダーリャも反省しました。ベルベル様の修練は全く以って足りておりませんでした。魔力修行も再開すべきなのです。しかし旦那様は頷いてくださいません」
その理由を聞いているのよ。わかっているでしょ。
……もちろん答えもわかっているんだけどね。
「ダーリャも考えている通りよ。私の運命はどう転がるのかわからない。リリィやダーリャに回った役割が、再び私に戻ってこないとは限らない。代役の代役がこの私でないとは限らない。そもそも……」
……死の運命から本当に逃れられたとは限らない。
「……ダーリャも行きなさい。私は勝手にやっておくわ」
部屋から出られないからって、出来ることが無いわけじゃない。
私はそれをダーリャに示すため、手の平の上で雷を弄んで見せた。
「その魔術には欠点が多すぎます。致命の一撃には至らぬかと」
「今に見てなさい。最強の属性に仕上げてみせるわ」
「お考え直しを。魔物との戦いは大道芸ではないのです」
酷い言い草ね。雷属性の魔術は定番の最強候補なのに。
「魔力消費量に威力が見合っていません。地属性か水属性の魔術を極めた方が効率的かと」
確かに物理的な威力を伴う魔術が強いとされているのはこの世界の常識だけども。
「人体にはこれの方が効くのよ」
「多少の耐性を無視する効果が見込めることは保証します」
ダーリャに巨大な岩石をぶつけてもびくともしないでしょうけど、雷魔術なら多少の痛みを与えることくらいは出来るのだ。
しかしだからといって、雷魔術の威力が優れているというわけではない。ぶっちゃけ破壊力は今ひとつだ。あくまで貫通力が高いだけだ。……ダーリャみたいな格上だと破壊より回復の方が速いから、結果的にダメージには至らないけど。
「私の出力不足は鍛えればどうにでもなるでしょ」
或いは雷魔術を身体に纏って威力を上げるのも定番よね。
いっそ地属性の魔術で鉄の塊でも召喚してみようかしら。或いは素直に水属性との混合でもいいわね。
「旦那様を説得出来ねば魔力修行もままなりませぬ」
たっかい回復薬が湯水のように必要だものね。今から事業を始めてどうにかなるようなものでもなし。
やっぱりお父様の理解は必要不可欠ね。こういう事態に備えて商会でも立ち上げておくべきだったわね。もし次があるなら忘れないようにしなきゃ。次なんて無い方がいいけどね。
「私の鍛錬方針はまた後で話し合いましょう」
だから貴女はもう行きなさい。ダーリャがいないと皆の修行が始まらないでしょ。
「……そろそろ教会を出る頃ですね。行ってまいります」
「ええ。いってらっしゃい」
お願いね、ダーリャ。
ダーリャは飛行魔術を発動し、窓から飛び出していった。
……さて。私もっと。




