04-07.明かされた真相
「ない……のよね? 流石にそんなこと……」
サツキさんが怯えて身を引きながら問いかけた。
「当然です。何バカなこと言ってるんですか」
ダーリャは毅然とした態度で答えた。
「そ、そうよね……でなきゃ側に置くわけないわよね……」
私にチラチラと視線を向けながら、未だ安心しきれぬ様子で呟くサツキさん。
「暗殺を命じられて忍び込んだのは事実ですが」
は?
「ダーリャは一切危害を加えておりません」
「ちょっとぉ!?」
なに言ってるのこの子ぉ!?
「どういうことよ!? いったい何があったのよ!?」
ちゃんと説明しなさいよ!!
「ダーリャはチクりました。結果イグナイト家は取り潰し。密かにダーリャはアルレティア家へと引き取られました。奥様には大変良くして頂きました」
ダーリャが!? お母様を救ってくれたの!?
「ちなみに私はメルヴェール家に引き取られました♪ お姉ちゃんのお陰です♪ ブイ♪」
メルメルが!? メルヴェール家の養子!?
「バカな名前だと思いませんでしたか? メルヴェイユとメルヴェール。どちらも意味は同じです」
「あ~! お姉ちゃんそんな言い方ないでしょ~! 私気に入ってるのよ~!?」
素晴らしい・フォン・素晴らしい。どんだけ絶賛したいんだって感じの名前ではあるけども。
ぶっちゃけそこはゲームのキャラだから、語感の良さしか気にしてないだけかとばかり……。
いやでも。ここ現実なのよ。だから何かしら理由はある筈なのだ。全ての物事には。
「イグナイト家での生活は酷いものでした。元々暗殺を生業とするような家系でしたから」
なによそれ……。フォルトマグナ王国の暗部的な? けどだとしたら取り潰しにはならないわよね……。それにあくまで暗殺者なら依頼した人物が居た筈なんじゃ……。
いや、今気にするべきはそこじゃない。とっくに決着は付いている筈だ。あのお父様が放っておいた筈はないもの。
「だからダーリャは魔力修行の方法を知っていたのね」
「はい。ベルベル様の治療にもイグナイト家の知識を利用しました」
生かす知識もあったの? 死を扱う者たちだからこそ?
……人体について知り尽くしていたのね。魔力修行なんて一般的なものではないもの。きっとイグナイト家だけの秘術だったのだろう。
どうりでメルメルも強いわけだわ。二人揃って幼い頃は虐待同然の教育を施されていたのね。
メルメルがメルヴェール家に引き取られたことを喜んでいるのも、そういう事情がありそうね。二人ともよほど辛い幼少期を送ってきたのでしょうし。
「何故ダーリャはイグナイトの名を名乗り続けるの?」
「おかしなことを聞きますね。ダーリャは一度も名乗っていませんよ」
……そうだった。ダーリャ自身はいつだって自分をダーリャとしか呼ばなかった。
「ごめんなさい。そんな事情も知らずに」
「いえ。ベルベル様が謝るようなことではありません。黙っていたのはダーリャたちです」
お父様とメイド長も当然知っていたのよね。
「ダーリャには奥様をお救いすることが叶いませんでした」
「それは……」
病だったと聞いている。この国の医療技術ではどうにもならず、あっという間に亡くなったのだと。
「ダーリャは後悔しました。それからはイグナイト家の隠れ家を探し出し、より高度な知識を集めていきました」
それが巡り巡って私の命を救うことに……私が死にかけたのはダーリャが原因だけれども。そこはそれとして。今更咎めるつもりもないし。何より強くなりたいと望んだのは私自身だし。ダーリャはいつだって私の願いを叶えてくれた。真摯に向き合ってくれていた。
「ダーリャの秘密はこんなところでしょうか」
「ご主人様♪ これこそ私がお姉ちゃんを大好きな理由です♪」
「空気を読んでください。愚妹。何故あなたが出しゃばるのですか。今話しているのはダーリャとベルベル様です」
「ごめんなさ~い♪」
まあうん。メルメルの気持ちはよくわかったわ。
「メルヴェール家のチャランポランぷりとダーリャの性格は特に関係無いの?」
「ベルベル様ぁ~! 気になるとこそこですかぁ~!?」
いやだって。
「お姉ちゃんは心配性なんです♪」
「余計なこと言わないでください!!」
ああ。付き合いはあったのね。昔から。
けどいつ様子を見に行っていたのかしら。殆どずっとダーリャは私の側にいてくれたのに。
「とにかく! このダーリャがベルベル様の敵となることは決してありえません!! どのような運命が待っていようともです!!」
ダーリャ……。
「……けど今の話って結局運命通りに進むってことよね」
それは……。
「ダリヤ……ダーリャさんが暗殺を踏みとどまった結果、ベルベティアのお母さんは病に掛かった。イグナイト家に産まれた筈のメル先はメルヴェール家の養子になった。多少ゲームと違う流れでも、結果的に同じ流れになってしまうのよ」
「……サツキさん。いっそこう考えるのはどうかしら。全てはゲームの通り。けれどダリヤも本当は狂人なんかじゃなかった。何か事情があって悪ぶってみせた。ゲーム中で明かされていないだけで、真相は別にあったんじゃないかしら」
「そうね。その可能性は否定できないわね。更なる続編の伏線だったのかも」
「ならきっと最後のルートでは誰も死なせない筈よ。ベルベティアもダーリャもリリィもピース殿下だって。誰一人として死なせず、最高のハッピーエンドに行き着いた筈よ」
「実質的な三部作ならご都合ルートも許されるわよね」
「散々焦らされてきたユーザーならきっと喜ぶわ」
私のやるべきことはきっとそれなのよ。ゲーム本編でもFDでも描かれなかった最後のご都合ルートを掴み取るの。
女神はきっとそんな幸せな世界を求めているのよね。だから私やサツキさんを転生させてまで、運命を変えようとしてくれているのね。
……もしかして。サツキさんの方が年上なのに後から転生してきたのって。
私はベルベティアの人生を繰り返してる? 一度目でダメだったから私が産まれるより前のタイミングでサツキさんが転生してきたの? 足りない知識を補うために?
「お二人とも。日も暮れてきました。そろそろお茶会はお開きにいたしましょう。サツキ様は泊まっていかれますね?」
あら。もうこんな時間。
「ありがとう、ダーリャさん。是非お願いするわ」
サツキさんも話足りなくなったようだ。何かに気づいたのかもしれない。
「はい。こちらこそ。ベルベル様に知恵をお貸しください」
あら♪ ふふ♪ 二人も仲直りしたのね♪
ダーリャも少しスッキリした顔をしているわ♪ 結果的に特大の秘密を明かせたものね♪ ある意味サツキさんのお陰でね♪ ちょっと乱暴な流れだったけど♪
「ダーリャ♪」
私はダーリャに近づいて口づけた。
「「「「「きゃ~♪」」」」」
フララ、リリィ、キリエ、メルメル、サツキさんが黄色い歓声を上げる。
「知れて良かったわ♪ 増々貴女のことが好きになったもの♪」
「ベルベル様……」
あら? 泣いてる? 情緒不安定ね~♪
「行きましょ♪ ダーリャも知恵を貸して頂戴♪」
ダーリャの手を引いて歩き出す。
「まだ片付けが」
「いいから♪ ずっと側に居て♪ ダーリャ♪」
今晩は放さないんだから♪ 絶対に♪




