04-06.ファンディスク
ファンディスク。
それはファン向け追加コンテンツの一種だ。
本編ゲームとは別に、後からファン向けに発売される品を指すことが多い。
実質的な続編であったり、本編には無かったIFルートの実装なんかが目玉になることも多く、場合によっては本編の世界観を壊しかねない、最高にハッピーなエンディングまで存在していたりもする。
そう。『天啓のフォルトマグナ』においては、ベルベティアの生存ルートこそがそれにあたる。
本編ではどのルートでも死ぬ運命のベルベティアだが、ファンディスクであれば話は別だ。主人公様は因縁の悪役令嬢だって口説き落としてしまうことだろう。
「あったのよ。ベルベティアルート」
「それでそれで!?」
「というか、ベルベティア主人公編」
なんですと!?
「メル先に殺されたベルベティアが転生して」
「ちょっと待った! ストップ! メルメルに殺されたですって!?」
「あ、ごめん。本人いる前で言うコッチャなかったね」
「そこも詳しく!!」
「いうて、これは本編でも示唆されてたことで……あ、なんか段々思い出してきた。やっぱ実物居るからかしら?」
「いいから! 早く! 続きを聞かせなさい!!」
「フローラたちに倒されたベルベティアにはまだ息があったのよ。けど逃げ出す前にメル先輩に討たれたの。それで幼少期に転生したベルベティアが、今度はもっと上手くやろうって奮闘するわけ。ほら。流行ってたでしょ。やり直し系の悪役令嬢も。そういうのをゲームにも混ぜ込んだのよ」
なんでさ!? 元百合ゲーよ!?
とは思うけど、今更だ。脱線させるのもアレだから余計なことは言うまいよ。
「それでまあ、最初は幼少期のフローラを抹殺したり色々暗躍するんだけど、結局全部上手く行かずにベルベティアの死亡が確定しちゃうのよ。何度も繰り返す内に、ベルベティアはアプローチを変えることにしたの」
「フローラを味方に加えた? その結果新たに聖女リリアーナが誕生した?」
「なによ。知ってるんじゃない」
「違うわよ! ほらリリィよ! この子よ! 私も同じことしてたの! 偶然よ!!」
「……」
「何その表情!? 私死ぬの!? この先も決まってるの!?」
「……いえ。リリアーナが仲間に加わるパターンは無かったのよね。というか、その子がベルベティアの代わりを務めるのよ」
「なん……ですって……?」
「聖女の重責に耐えきれなくなったリリアーナがベルベティアの代わりに闇堕ちしちゃうの。逆にベルベティアは、取り込んだ筈のフローラに絆されて、光落ちしちゃうの。それがベルベティア編のフローラルートよ」
まんまじゃん!? リリアーナ放っておいたら危なかったじゃない!!
「女神何やってんのよ!?」
「そこは謎のままよ」
雑!? さては作り込んでないわね!?
「聖女の闇堕ちがキッカケで、人々は神託に頼り切った在り方を見直し始めました。で終わりなのよ」
「取って付けたような!?」
「試みは面白かったんだけどね。百合ゲーでやるこっちゃないわよね」
それは最初っからそう!
「ベルベティア様……ボク……」
はっ!? リリィが困惑してる!?
「いいのよ! リリィ! リリィのせいじゃないわ!」
よしよし。大丈夫。大丈夫。リリィは良い子。
後でちゃんと説明してあげるからね。今はごく一部しか理解出来ていないでしょうから。
「なに? ハーレムルートでも目指してるの?」
空気読んで! サツキさん!!
リリィは繊細なんだから!
「ハーレムぅ!?」
こらそこ! キリエは反応しない! 貴女が騒ぐとややこしくなるから!
「あ、空気ヒロインちゃん。いたのね」
「なんてこと言うのよ!?」
そりゃあキリエは本編でも初回ルート固定なせいで他のヒロインたちより印象薄くなりがちだけども!!
「この子も私の家族よ!!」
「ごめんなさい。そうよね。ここはゲームなんかじゃないものね。私たちにとっても」
わかればいいのよ。
「もっともっと話して頂戴。魔王復活についても何か知ってるんでしょ」
「さっきも言った通り、実はベルベティアが婚約者である第一王子を生贄に魔王復活を成し遂げたと語られるのよ。けどリリアーナには特に接点もなくてね。光落ちしたベルベティアは王子を守り抜いて一件落着と油断するんだけど、何故だか魔王は復活しちゃうのよ」
「その理由は語られないの?」
「……言って良いのかしら?」
「大丈夫よ。この子たちに秘密は持たないわ」
「……そうじゃないのよ」
「……もしかして」
「……そう。リリアーナは自身を生贄に捧げてしまうの」
なんてこった……。
「リリィも救えるトゥルーエンドはないの?」
「ないわ。彼女は救えずじまいよ」
そんな……。
「貴女はベルベティアのリベンジを果たすつもりなのね」
「全部偶然よ……」
「いっそ魔王復活は諦めるのも手じゃないかしら?」
……それは……考えたことが無いとまでは言わない……けど……。
「ダメよ。魔王は倒すわ」
「王子か聖女。どちらかが犠牲になるのだとしても?」
「させないわ。私が必ず別の道を見つけ出してみせるわ」
「良いわね、それ。私もあの終わり方にはモヤモヤしてたのよ。貴女の活躍に期待しているわ」
「悪いけどサツキさんのことも巻き込ませてもらうわ」
「ハーレムに?」
「ハーレム言うな」
失敬ね! 私はまだダーリャとしか付き合ってないわよ!
「ベルベル様。ダーリャは反対です」
ダーリャったら。また機嫌悪そうにして。
「ダーリャ……あ……」
……うん? ……え? 何その顔? なんで真っ青なの?
「あぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!」
突然叫びだすサツキさん。
「ダーリャ!! ダリヤ・フォン・イグナイト!?」
知ってるの!?
「血狂いダリヤ!? こ、こんなのまで味方にしたの!?」
こんなのとは何よ。私の恋人に向かって。
「そんな物騒な呼び方しないで頂戴! 私のダーリャは良い子よ! ゲームでどんなキャラだろうと関係ないわ!!」
「け、けど!!」
まだ言うか!?
「聞かせてください」
「ダーリャ!?」
「ベルベル様。ダーリャも気になります」
ダーリャ……なにその笑顔。サツキさんが怯えてるから楽しんでるの?
「ダーちゃんはそんなに良い子じゃなかったね」
フララまで……。
けどいくらダーリャだって……。
「バカみたいな二つ名付けられる程じゃないわ」
何よ血狂いって! 失礼しちゃうわね!
「……ダリヤはベルベティア編のラスボスよ」
あらま。
「そして全ての元凶でもあるわ……」
元凶? 魔王を復活させるのはリリィなのに?
「……ダリヤはベルベティアの母を殺してアルレティア家を壊した張本人なの」
…………え?




