04-04.二度目のデート
「なんだか手慣れていますね」
どうして不貞腐れているのかしら。
「王都を出歩くのは二回目ですよね?」
「ええ。知っての通りよ」
外出許可なんて早々降りないもの。
「不可解です」
「リリィのお陰よ♪」
言えない。前回は殆どメルメルとデートしてただなんて。口にすればダーリャの機嫌を損ねるのは間違いない。
実際に色々教えてくれたのはメルメルなのよね。ついでに私の初デートの相手もあの子だ。なにせこちとら前世でも恋人なんていたことなかったし。
何故だかあの子、街歩きに慣れていたのよね。実はお忍びで何度も出歩いていたのだろう。
それから一応リリィに教わったのも嘘じゃない。よし。問題ないわね。
「むっすー」
あらあら♪ まあまあ♪
わざとらしく膨れちゃって♪ 可愛いわね♪ もう♪
「ダーリャ♪ しっかり握っていなさい♪」
ダーリャの手を引いて駆け出した。
人混みを掻き分けて大通りを突き進む。
特に目的地があるわけじゃない。全力で身体を動かしくなっただけだ。無性に燥ぎたくなっただけだ。
私が子どものように燥いでいると、最初は面食らっていたダーリャも、段々と調子を取り戻していった。
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「似合うわダーリャ♪ これも買いましょう♪」
「でしたらお次はこれです♪」
「きゃ~~~~♪ ダメよダーリャ♪ 過激すぎるわ♪」
「着るのはベルベル様です♪」
「メイド長に処されるわよ」
「急に素に戻らないでください!?」
「いえねぇ。だってこれ。……ねぇ」
「いいじゃないですか♪ こっそり着ちゃいましょう♪ 寝室で使う分にはバレませんって♪」
「そう……? ダーリャのタンスに隠しておいてくれる?」
「もちろんです♪」
も~♪ ダーリャったら~♪
「申し訳ございません、お嬢様方。お二人にこれをお売りすると私の首が飛びます。物理的に」
「「あ~~!」」
服屋の女性店主に取り上げられてしまった。
「ほらほら。お子様はあちらよ」
少々過激な売り場から締め出されてしまった。
「店主! 素晴らしいセンスです! 侯爵邸お抱えになりませんか!? このダーリャが推薦いたします!」
「だから首が飛ぶってば。結構よ、お嬢さん。私は自由に作りたいの。気に入ったのならまた買いに来て頂戴。もう少し大きくなったらね」
え? もしかしてこれ全部作ったの? 凄いのね。職人技ね。それにこっちではあまり一般的なセンスでもないわね。
「店主様、実は他の世界の記憶を持って産まれてきたとか言わないかしら?」
「あら。そう言うってことは貴女もなのね」
「えぇ!?」
「聞いておいて驚くの?」
そりゃ驚くわよ!?
偶然入った服屋の店主が異世界人だなんて普通思わないでしょ!?
「どうりで興味を持ってくれるわけね」
そういえばこの店、他に客も店員もいないわね。
殆ど路地裏みたいな立地のせいかとも思ったけど、単純にこの店長の作る服のセンスは馴染まないのかしら。
「そうだわ、お嬢様。良かったら私からも一つ贈らせてもらえないかしら? どこかでそれを着て宣伝してもらいたいのよ。あなた程の美少女なら素晴らしい広告になるわ」
この人、服のことにしか興味がないのかしら? 他にもっと話すべきこともあるでしょうに。
「喜んでお引き受けするわ♪ 私も貴女の作る服を気に入ったもの♪ とはいえ立場上、この手の服を着て公の場に出るのは難しいのよね。何か方法を考えないとだわ」
私これでも王太子殿下の婚約者なのよ。
「こんな時こそお嬢様ネットワークを活用されてみては?」
「そうね。今度秘密のお茶会でも開いて着てみようかしら」
先に根回しをしておきましょう。皆が着るようになれば、私が着ても多少は言い訳が立つでしょうし。
「ねえ、店主様。出張サービスはやっているかしら?」
「やるわ。やらせてください」
「いいわ♪ 計画を詰めましょう♪」
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服屋の店主サツキさんとの打ち合わせを済ませ、路地裏の服屋を後にした。
「帰ったら準備をお願いね♪ ダーリャ♪」
「はい♪ 全ては計画通りに♪」
これでまた夏季休暇中の楽しみが出来たわね♪
「ですが良かったのですか? 結局異世界の話はしませんでしたね」
そうね。楽しんでばかりもいられないのよね。魔王の封印についても考えないとだわ。戦闘経験も積まないとだし。
「先ずはサツキさんの悩みを解決してあげましょう。こういうのをサブクエストっていうのよ♪ 思わぬところでヒントを貰えたりもするの♪」
「ゲームでもあった出来事なのですか?」
「いいえ。彼女の存在もイレギュラーよ」
「女神は何を考えているのでしょう」
「さてね。関係が有るのか無いのか。女神にとっては私の存在だってイレギュラーなのかもしれないわね」
もしかしたらダーリャも。
「ダーリャ。貴女は何故私の下に来てくれたの?」
「ダーリャは優秀すぎたのです♪」
惚けて……ないわね、これは。
たぶん本当に関係があるのだろう。妹と名字が違うこととも。
「貴女がいてくれて良かったわ。ううん。全て貴女が居てくれていたお陰よ、ダーリャ。感謝してる。本当に。本当よ。大好きよ。愛しているわ。ダーリャ」
「……」
「ダーリャ?」
「……ズルいです」
「?」
「帰りますよ。ベルベル様。もう直日も暮れます」
「あら。日帰りでいいの?」
「……」
立ち止まっちゃった。
俯いて何かを考えている。
と思ったら、すぐに顔を上げた。
「行きますよ! ベルベル様!!」
ダーリャは私の手を握って駆け出した。




