04-02.大誤算
魔王復活の方法がわからない。
ゲーム本編で明示されていないのだから、特に条件は無いものと思っていた。
封印の下へ辿り着けさえすれば、どうとでもなるものと思っていた。
「これが……封印……」
あかん……全然破れる気がしない……。
「ベル。それ以上は近づくな」
「はい。お父様」
しかたない。ここに来るまでに相当無茶を言ったのだし。
お父様付きとはいえ、こうして封印の様子を確認させてもらえたのは幸いだった。
魔王の封印されし地は、フォルトマグナ王国の管理する要所の一つだ。当然そこには最高峰の警備が敷かれている。
お父様に付き添って頂けなければ、見学すら叶わなかったことだろう。少々特殊な身分のメルメル以外、同行者の一人も許されなかったくらいだ。本当はダーリャやフララにも見てほしかったのだけど。せめて聖女であるリリィにくらいは許可も降りるものかと思っていたのだけど。
「あと二年もせずにこの封印が破られるのですね」
「そのようだな」
何故だか女神は、封印を解くのが悪役令嬢だとはバラさないのだ。
単に知らないのか、ゲーム的な都合に過ぎないのか。それは誰にもわからない。
魔王復活が必要なことであるとバラすのは、女神にとっても都合が悪いのかもしれない。ある種のマッチポンプになってしまうわけだし。
「これは女神様の御力でしょうか」
「そう伝え聞いている」
厳密には先代聖女が授かった力ってところかしら。女神本人が手を出せるならとっくに滅ぼしているだろうし。
「女神様は破られる日時までご指定に?」
「神託に含まれていたとて、公言される筈もなかろう」
ご尤も。
「行くぞ」
あら。もう時間切れ。
「はい。お父様」
仕方ない。ここは素直に引いておこう。無駄にゴネて次が無くなっても困るし。
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「どうしましょう」
帰宅するなり皆を集めて会議を始めた。
「ダーちゃん、忍び込める?」
「無茶言わないでください」
マジかぁ……。
「ダーリャならチョチョイのちょいかと思ってたわ」
「出来るならとっくにやってます」
それはそう。
「え~♪ お姉ちゃんに出来ないことなんてあるわけないですよ~♪」
「くっつかないでください」
「うふふ♪ お姉ちゃんのイケズですね~♪」
ダーリャに素気なくされたメルメルは、私にターゲットを切り替えた。
「ご主人様~♪」
「後になさい。今は真面目な話をしているのだから」
「は~い♪」
どうせならメルメルも真面目に参加してくれないかしら。
「そうだわ。あなた実家の伝手で警備情報とか抜けない?」
「やめてください!」
ダーリャNGが出た。
「誤算だったわ。まさか魔王の封印があんなにガチガチだったなんて」
警備という意味でも、封印という意味でも。
あれでどうやって解けっていうのよ。魔物が活性化とかしてるくらいだし、もうちょいわかりやすく封印が綻んでいるものかと思っていたのに。
「ベティ、他に何か覚えてないの?」
「もうだいぶ記憶も怪しいのよね~……」
なにせ十年以上前に思い出した前世の記憶だもの。しかもその中のゲームに関する知識だ。希薄にもなるってもんだ。
「いっそ復活に関しては忘れてしまわれては?」
「というと?」
「女神に任せましょう。ベルベル様にその気が無いと悟れば、代役を立ててくれるやもしれません」
「その子が困るじゃない」
「ベルベル様。魔王の封印を解くためには、何十人もの兵を退けねばなりません。よしんば彼らを無傷で排除できたとて、今度は責任問題になるものかと」
あ~……無傷で持ち場を離れたら……そりゃあね。
「結局犠牲者は出るのです」
そりゃわかるけども。
「けどだからって、今更私が封印を解くと名乗り出るわけにもいかないわよ。神託が降りてないとバレるんだもの。女神だってきっと認めないでしょうし」
王国と協力して完全に犠牲者ゼロで収めるなんて、そんな都合の良い方法は存在しないのだ。
「今になって言い出すからです」
そりゃあ、転生した直後にダーリャの言った通りにしていれば……いやいや。
「ないでしょ。リリィの件で王国側の反応は見たでしょ。最悪幽閉されておしまいよ」
皆神託には関わるつもりがないんだもの。彼らにとって神託は絶対だ。絶対に起こるのだ。誰が何をしなくとも。わざわざ実現させるために何か行動を起こすものではないのだ。彼らにとっての神託とは。
「それでも旦那様なら力になってくださいます」
「お父様が悪の侯爵ルートを歩むだけじゃない」
「そうならぬように動くことも出来ましょう」
うん? なんで過去形じゃないの?
「……もしかして今から打ち明けろって言ってる?」
「はい。やはり旦那様のお力は必要不可欠かと」
えぇ~……。
「ダーリャったら本当にどうしたのよ? 最近全然らしくないわよ? いつだって自信満々だったじゃない」
「ダーリャは失敗しました」
「? ダーリャの失敗はいつものことでしょ? あなたいったい何個の壺割ったと思ってるのよ?」
「その話ではありません!!」
「なら無人島サバイバルの?」
「いえ! あれは結果的に成功したものと!」
こらこら。メイド長に聞かれたらタダじゃ済まないわよ。
確かに私の成長には欠かせないものではあったけども。
「愚妹の件です!!」
「……なに? メルメルが見てるから立派なお姉ちゃんになりたいってこと?」
「きゃは♪ お姉ちゃんったら♪」
「違いますぅ~! 愚妹に付け入る隙を与えたことです!」
付け入るも何も、自分で誘い掛けたんでしょうに。
そりゃ本人的には誤算だったんだろうけども。
「読み違いがそんなに悔しかったの?」
「なっ!? 悔しくなんてありません!! ダーリャはただ反省したのです! ダーリャにも失敗はあるのです!!」
……今更?
「ちょっと待って。自分は完璧だとでも思ってたの? 壺割ダーリャの分際で?」
「なんですかその二つ名!? 不名誉です!! 撤回を求めます!!」
失敗の自覚が無いわけではないのよね。
「ちょっと理解できないわ。フララ。翻訳お願い」
「ビビってる」
「ビビってません!!」
なる……ほど……。
納得はいかないけど、まあ話はわかった。
メルメルの加入がそんなに悔しかったのね。
もしかしたら私がメルメルとコソコソしているせいもあるかもしれない。実はダーリャにも黙って個人的護衛として雇っちゃったし。その辺り、空気感を察しているのだろう。
「ダーリャ。メルメルは必要な駒よ」
「きゃふん♪」
こらそこ。クネクネしない。
「ダーリャがいれば十分です!!」
「ダーリャは対魔王戦の切り札よ。貴女の方が重要だからこそ私の側には置いておけないの。わかって頂戴」
「魔王なんか愚妹に任せておけばよいのです!!」
ダーリャったら、本当にどうしてしまったのかしら?
「ベティ。ダーちゃんもデート行きたいって」
「言ってません!!」
なによ。イジケてるの?
「ダーリャ。二人きりでデートしましょう」
「はい!!」
即答だぁ。
めっちゃ笑顔。さっきまでプリプリしてたのがなんだったのかってくらい。私は乗せられたのかしら?




