↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生したので魔王を復活させるために暗躍します  作者: こみやし
03.悪役令嬢の想定外

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/49

03-08.悪役令嬢の反乱


 リリアーナは休学させることにした。



 正直今の段階で学院の授業に参加させても意味がない。彼女は試験を受けて入学したわけでも、貴族のように幼少期から学び続けてきたわけでもない。完全にまっさらな状態だ。


 そもそも文字が読めていのるかすら怪しい。最低限生活に必要な文字くらいはわかるのでしょうけど、それ以上の知識は持ち合わせていないようだ。


 なにせ平民が本を読める機会なんてそうそう無いような社会だ。孤児の教育に力を入れるような文化も無い。一般的な平民の識字率なんていいとこ数パーセントだ。一割にだって満たないだろう。


 聖女の責務についても殆ど理解していないようだ。皆が何を期待しているのかすらわからないまま、あれやこれやと言われて学園に無理やり入学させられたそうだ。


 彼女が愚かなわけじゃない。ただ知る機会が無かっただけだ。それを何故知らないのかなんて責められても、妄信的な者たちを納得させる理路整然とした答えなんて示せる筈もない。



 だからといって、悠長に一から勉強させている時間が無いのも確かだ。魔王の復活までもう二年もない。それまでにリリアーナを一端の聖女に育て上げねばならない。


 それで何故学園なのかと言えば、ぶっちゃけた話、見栄とか権威の問題だ。一応は神託にも含まれているかしら。


 神託は要約すると「シフォン子爵家の娘、それも今年学院に入学する少女が魔王を倒す」というものだった。


 しかしシフォン子爵家にはその娘がいなかった。元々養子を取るつもりではいたけど、これぞと思う子に出会う機会がないまま数年が過ぎていた。


 もちろんこれは私がフローラを引き抜いたしわ寄せだ。


 そうこうしているうちに女神の神託が下った。神託は絶対だ。娘がいませんでは通らない。なのでやむなく年頃のリリアーナを娘として迎え入れた。それがダーリャの調べ上げてくれた情報と照らし合わせて導き出された真実だ。



 リリアーナの処遇を決めたのは子爵だけじゃない。教会も王家も一緒になってリリアーナをたらい回しにしたのだ。入学に備えさせることもせず、興味本位で引っ張り回し、思考停止で神託に従い、学園に放り込んだのだ。


 元々足りなかった入学前の貴重な時間はこうして無駄に浪費されただけだった。現実的に不可能だから神託に抗って入学を遅れさせようだとか、別の教育プログラムを組もうなんていう建設的な議論が行われることもなく。


 せめて入学後に補習を受けさせるとかやりようはあっただろうに。誰もが神託を絶対視して、まさしく触らぬ神に祟りなしの心境で放置したのだ。


 神託が下った以上、放置していてもリリアーナは魔王を倒せたのかもしれない。私もその可能性までは否定しない。けどだからってこんな状態のリリアーナを捨て置くなんてと、言いたくもなる。


 神託に盛り込まれていたのは入学することまでだ。休学しようが退学しようが神託に反したことにはならない。私はそう言ってリリアーナの休学を認めさせた。


 彼らがあっさり私に引き渡したのも、結局は休学を認めたのも、多少は似た考えを抱いていたからなのかもしれない。


 これ以上は言っても仕方がない。誰も神託に関する問題で主体的に動きたいとは思うまい。


 ましてやことは世界の存亡に関わるものだ。聖女の魔王討伐が失敗すれば、聖女の教育に意見を出した自身が罪に問われるかもしれない。最悪人類の敵として排斥されるかもしれない。そうでなくとも魔王が全てを滅ぼすかもしれない。


 仮に聖女を支えても、それで認められるのは女神の絶対性だけだ。教育を施した自分の手柄になるわけでもない。


 女神の神託に頼り切ったこの世界は不健全だ。神託は人々から主体性を奪う毒だ。王すらも女神の前には傅くのだ。いったい誰に抗えるというのだろうか。



 私がやるしかない。最初からわかりきっていたことだ。私は世界にとっての悪を成そう。ただの悪役令嬢で終わるなら私も女神の奴隷である彼らと何も変わらない。女神の思惑をも越えてこそ、私は一人の人間たり得るのだ。


 私たちは単なるゲームの駒(キャラ)ではないのだと、女神にも見せつけてやるとしよう。




----------------------




「ダーリャ。リリィをお願いね」


「はい♪ 特別甘々コースにて承ります♪」


 ダーリャは本当に優しかった。いつもの厳しさはどこへやら。丁寧に丁寧にリリィの勉強を見てくれた。


 お陰でリリィもダーリャには心を開いてくれたようだ。私たちとも少しずつだけど言葉を交わしてくれるようになってきた。


 本当は私も学院をサボって側に居たい。けどダメだ。私が堂々としていなければ、聖女に何かあったのかと勘ぐられてしまうだろう。一度は認められた休学もいつ覆されるかわかったものじゃない。何が足を引っ張る口実になるかもわからない。用心するに越したことはないだろう。



「さあ♪ お嬢様♪ お手を拝借♪」


 すっかりメイド服姿も板についたメルメル先輩が、私のカバンを持って馬車の脇に立ち、手の平を差し出している。



「本当にメイドになる必要はなかったのよ?」


「あはは~♪ 今更ね~♪」


 いやまあ、私もなんだかんだと受け入れちゃったけども。


 だってあの先輩のメイド服だよ? 推しキャラだよ?


 ゲームでもあり得なかった立ち絵姿だ。現実はゲームよりも美しい。この真っ白な髪がまた一段と。



「痛いわ。フララ。無言で抓らないで」


「見すぎ。そんなに好きなの?」


「正直ドストライクよ」


「……やっぱり着替えてくる」


「もう出発の時間よ。諦めなさい」


「いじわる」


 ごめんて。そんなつもりはないんだって。


 だいたいフララのメイド服姿を今更見たってーー痛たたた!? 違うの! 制服似合ってるって言いたかったのぉ!


「ならよし」


 もう。フララったら。



「リリィ~」


「こらこら。あなたも行くのよ、キリエ」


 まったく。なんで屋敷に戻ろうとするのよ、この元メインヒロインちゃんは。



「今朝も会ってくれなかったんです~……」


「まだ拗れてるの? 事情は私たちから説明したじゃない」


 夜な夜な拉致して教育を施していたと。お陰様で敬語キャラに変わっちゃったけど。別にそこまでしろとは言ってないんだけどね。同級生だし。最低限の礼儀さえ持ってくれるなら、対等なクラスメイトとして扱うつもりだったのに。



「ぐすん……」


「仲直りは放課後にね。私も手伝ってあげるから」


「ベルベル様ぁ~……」


 はいはい。良い子良い子。あなたもよくやってるわ。リリィには届いてないかもしれないけどね。アルレティア家に来てからのことはちゃんと見てるから。私が認めるわ。キリエも良い子よ。だから大丈夫。またすぐに仲良くなれるわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。