03-04.親愛と栄光の争奪戦
「……ねえ。夜どこ行ってるの?」
「えっ!? な、なんの話かな~~!?」
「……別に」
「あ……リリィ……」
「……なに?」
「大丈夫だからね!!」
「……そう」
「本当の本当に大丈夫だから!! わたしが! 絶対!!」
「遅れるよ」
「あ! 待って! リリィ!!」
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最近リリィとメインヒロインちゃんの仲が拗れている。
もちろん原因は私たちだ。
これ以上リリアーナを追い詰めるなんて本意ではないけれど、その問題も今日までだ。
この日のために準備を整えてきた。今日こそ私は大手を振ってリリアーナに真実を打ち明けるのだ。
「張り切っているようだね。ベルベティア」
「殿下こそ」
「ああ。今日は負けないよ」
「わたくしもですわ」
「随分拘るんだね。やはりあの子が心配かい?」
「気付いていらしたのですね」
「もちろんさ。君のことがわからぬ私ではないよ」
本当にどこまで知っているのかしら。たぶん私の思っている以上に殿下は私のことをご存知よね。
「ならばどうか」
「譲らない。聖女と共に魔王を討つのはこの私だ。君にだけは譲れない。わかっておくれ」
「わたくしもですわ、殿下。殿下の御身を危険に晒すわけには参りませんの」
「いつか本当の理由を聞かせてくれるかな?」
あら♪ 信じてくれないだなんて酷いじゃない♪
「もしわたくしに勝てたのなら、その時は全てをお話いたしましょう」
「約束だ。ベルベティア」
「はい。殿下」
きゃーきゃーと黄色い歓声が周囲から上がる。
何か誤解を与えてしまったようね。いつものことだけど。
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本日王立学園で開催されるのは選抜大会だ。
目的は聖女と共に魔王を討つ生徒たちを見出すことだ。
本来ゲームには存在しないイベントだ。そんなことしなくても、ゲームの主人公は勝手にパーティーメンバーを集めてしまうもの。
けれどリリアーナはそうじゃない。だから私が裏から手を回して開催に漕ぎ着けたのだ。
この選抜大会における勝者は、聖女パーティーの一員として国から正式に認められることになる。
国の正式な許可の下、魔王を討つまで聖女と寝食を共にし、切磋琢磨していくことになる。
もちろん聖女であるリリアーナ本人の許可なんて誰一人確認すらしていない。国は聖女を支える役目を負うと同時に、その行動を管理する責任をも持っている。
最初から聖女は人間扱いなんてされていないのだ。もちろんこの国の為政者たちが殊更に悪辣な者たちであるというわけではない。
程度の差こそあれ、元々王侯貴族が平民を所有物のように扱うこと自体は珍しくもない。女神の神託を受けた聖女ともなれば、それは人類全体にとっての共有財産も同然だ。
聖女が役目に準じぬことはありえない。本人の意思は関係ない。リリアーナが戦いたくないと伝えたところで、なんの冗談だと相手にもされないだけだ。
なんならリリアーナ本人すらも逃げようとはしていない。何をすべきなのかはわからずとも、何かはしなきゃいけないと信じ込んでいる。それが当たり前すぎて、逃げるという選択肢が浮かんですらいないのだ。
この神託が何より重い意味を持つ世界において、人々の無意識は神に隷属することを忌避しない。
それに抗えるとしたら、私と私の影響を受けた者たちだけだ。今はまだダーリャとフララだけだ。リリアーナも仲間に加えて洗脳を解くとしよう。
……ダーリャって……いや。考えるまい。
今は試合に集中しよう。何か女神の介入によって不測の事態が起こらないとも限らないし。
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大会に参加するのは、自薦他薦問わず、実力者と認められた生徒たちだ。もちろん一年生には限らない。女神もそこまで細かく指定したわけじゃない。
私の初戦の相手は現生徒会長だった。
「知っていますよ。貴女がこの大会を企画したと」
私も知っているわ。貴女のことを。ずっと憧れていたの。
余裕の笑み浮かべた白髪の美女が正面に立つ。
私はこの人のことを生まれる前から知っていた。
ぶっちゃけ前世の推しキャラだ。この話だけはフララとダーリャにも伝えたことはないけれど。特にフララには言えないわよね。絶対嫉妬するに決まってるし。あの子私のことが大好きだから。
彼女は所謂、攻略できない人気キャラだ。ファンディスクが出ればヒロインに昇格するかもしれない系のキャラだ。ゲーム本編では攻略ルートが実装されていないのだ。にも関わらず、多くのプレイヤーから愛される特別なキャラなのだ。
現時点で三年生なので、魔王討伐時点ではとっくに卒業しているのだ。だからゲーム本編で絡ませるのは難しいという都合もあった。
しかし彼女の出番は一年生時のみに限らない。
王立学院を卒業した彼女は、そのまま騎士団へと加わり、僅か一年と少しの間に頭角を現すことになる。
ゲーム本編における三年目には、魔王討伐のために騎士団を率いて前線に現れる彼女と再会し、共闘するイベントもある。
もし魔王討伐が卒業後にまでもつれ込んでいたら、彼女の下で騎士として戦う道もあったのかもしれない。或いは魔王を討伐した上で、誰とも結ばれなかったIFルートとしての実装ならあり得ただろうか。
ぶっちゃけゲーム本編では最強格だ。なんならたぶん魔王より強い。戦えるのが二周目以降のオマケ要素だからだ。
つまりは隠しボスだ。裏ボスってやつだ。
どうせなら彼女に転生してみたかった。そんな気持ちも無いではない。
もちろん、今ではベルベティアで良かったと思っている。ダーリャやフララたちとも出会えたし。
「メル先輩」
「メルヴェール」という名から、そう呼ばれていた。
「実はずっと憧れていました。貴女と戦ってみたいと思っていました」
彼女はフォルトマグナ王国に古くから仕える騎士の家系の生まれだ。これまでは立場の問題でどうしても接触が叶わなかった。王家に仕える騎士に近づくだなんて、コンプライアンス的に問題ありありだからだ。
けれど敢えて言おう。今ここで。
「私は貴女と戦いたくてこの大会を企画しました」
貴女を試金石として利用させて頂きます。
「聞いていた話とは異なりますね」
「彼女を救いたいのも本心です」
そのためには力を示さなければならないのです。
誰もが納得する成果を示さねばならぬのです。
「そうですか。見込み違いにならず何よりです」
「私は貴女を越えてゆきます」
あの子を救い、魔王を倒すために。
「ふふ♪ 良いでしょう。胸を貸してさしあげましょう」
「感謝します!!」
いざ!! 参ります!!!




