03-05.白銀の剣姫
寒っ!?
うわ~♪ なにこれぇ~♪ きれ~♪ すっご~い♪
全部氷ついちゃったぁ~!
言ってる場合かぁ~~~~~!!!
「やばっ!?」
「ふっ!」
ひぃっ!?
は、速っ!? てか近っ!? いつの間に!?
「悠長ですね」
きゃっ!?
何!? なんで吹っ飛んだ!? 蹴り!? やば!? ブレーキ効かない!? 足元凍って!?
「ハァっ!!」
殺られる!? ……!!
迫りくるメル先輩と私の間に、炎の壁が立ち塞がる。
「ほう。その歳で無詠唱を」
なっ!? 破られた!? そんな一瞬で!?
炎の壁はあっさりと切り捨てられてしまった。メル先輩の振るう剣には何か特別な力でもあるのか、或いは単に吹き散らされただけなのか。
まるで紙でも裂くように、容易く私の魔術は破られた。
「くっ!!」
「勝負ありましたね」
剣を腰だめに構えた先輩が間近まで迫ってくる。既に間合いに入られた。今更土壁を召喚したところで意味はない。
「いいえ!!」
私は雷を放った。ガムシャラに、指向性も持たせぬまま、先輩の身の安全も無視して解き放った。
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「負けたわ……」
「ベティ……あれはダメだよ……油断しすぎだよ……」
「いえ! 違うのよ! 本当に先輩強かったんだから!!」
切り札の雷撃魔術まで通じないなんて……。
「ちゃんと効いてたよ。痩せ我慢してただけだよ。最後の一撃、もっと気を張ってればベティが勝ってたんだよ」
「……フララは勝てるの?」
「余裕。安心して。代わりに優勝するから」
心強い……。
コンコン。
専用控室に誰かがやってきた。
おかしい。この部屋には誰も来ない筈なのに。
「失礼しま~す♪」
返事をする前に扉が開き、そろ~りそろりと白い頭が入ってきた。
「あ♪ いたいた♪ お姉ちゃんの言ってたとおりね♪」
メル先輩? どうしてここが?
それにお姉ちゃんって……?
「さっきぶりね♪ ベルベルちゃん♪ 改めまして♪ メルヴェイユ・フォン・メルヴェールです♪」
うん。知ってる。……ベルベルちゃん?
「さっきのなに♪ 凄いじゃない♪ 見たことも聞いたこともない魔術だったわ♪」
私の手を取って、ブンブン振りながら、興奮した様子で問いかけてきた。
「とぉ~っても痛かったわ♪ けどまだ実戦向きではないわね♪ もっと集中させないとダメよ♪ あれって剣に引き寄せられるでしょ♪ 相手の武器や防具を的にすればもっと効率的に流し込めると思うの♪」
すっごい楽しそう。めっちゃ笑顔。
おかしいな。メル先輩ってもっとクールで、ふとした時に見せる小さな微笑みが多くのプレイヤーの心を鷲掴みにしたキャラなのに。私の思ってるメル先輩とだいぶ違う。
「……う~ん?」
何故だかメル先輩の顔を覗き込んで首を傾げるフララ。
「……ダー……ちゃん?」
え?
「あら♪ うふふ♪ バレてしまっては仕方がないわね♪」
いや……まさか……。
「お姉ちゃんには絶対言うなって言われてたけど♪ 私からバラしたわけじゃないんだし♪」
おねえ……ちゃん……。
「ダリヤ・フォン・イグナイトは私の姉よ♪ わけあって家名は違うけどね♪ どうかしら? 驚いた? うふふ♪」
……?
……。
…………。
………………。
「ベティ? どうしたの?」
「固まっちゃったわね♪」
「驚いたもんね。ダーちゃんに妹がいたなんて」
「言っちゃったことは内緒にしておいてね♪ お姉ちゃんに怒られちゃう♪」
「どうせ気付くよ~」
「やっぱり? お姉ちゃん目聡いもんね~♪」
「ダーちゃんはなんでアルレティア家に仕えてたの?」
「流石にそこまでは言えないわ♪ 私の口は軽いけど、大好きなお姉ちゃんを裏切れないもの♪」
「メルメル」
「あら♪ 可愛いあだ名ね♪」
「ダーちゃんの妹ならフララのお姉ちゃんだよね。メル姉の方がいいかな?」
「それにしましょう♪ 私妹欲しかったの♪ あなたは理想の妹像そのものだわ♪」
「わわ!? 力持ち♪」
「でっしょ~♪」
「わわ!? あはは♪ 目回っちゃう♪」
……はっ!?
何!? 何事!? なんでメル先輩がフララを抱えて回ってるの!?
「「あ、起きた」」
「ダーリャ! ダーリャ! 出てきなさいダーリャ!!」
「マズっ!?」
慌てて踵を返すメル先輩。フララは置いていきなさい。
「おっと。危ないですよ、メルヴェール嬢。急いで部屋から出るものではありません」
ダーリャが部屋の入口に立ち塞がり、逃げ出そうとしていたメル先輩を押し返して扉を締めた。
「ごめんなさい!!」
「何を謝ることがあるのでしょう。私はアルレティア家にお仕えするメイドです。メルヴェール家のご令嬢が頭を下げるような間柄とも思えませんが」
「あわわわ!?」
ダーリャの静かな怒りに後ずさるメルメル先輩。
「ダーちゃん。メル姉を虐めないであげて」
「ダメですよ、フララ。メルヴェール嬢をそのように呼ぶのは恐れ多いことです。なにせあのメルヴェール家の御息女様なのですから。我々とは縁遠いお立場なのです」
強引に押し通すつもりね……。
「メル先輩。ここはお引き取りを。ダーリャも。いつまでも道を塞いでないで通して差し上げて。由緒ある騎士公爵家の先輩を不戦敗にさせてしまっては、王家に申し訳が立たないわ」
「失礼いたしました」
素直に脇に避けるダーリャ。
「ありがとう! ベルベルちゃん!!」
貸し一つよ。メルメル先輩。
……ダーリャを呼んだの私だけど。
「し、失礼しました~♪」
メル先輩はそそくさと退室していった。




